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本編
第二章 欠陥姫と騎士(3)
リートと名乗った騎士は、貴族らしい品のいいシャツにズボンと言った格好だった。
銀の髪に紫の瞳のリートは、目を引くような美貌の持ち主だった。それに加え背も高く、程よく筋肉の付いた体格から騎士としての腕も立ちそうに見えた。そのことも含めて観察した結果、騎士としてそれなりの地位にいるようにセイラには感じられた。
ただし、仕事をサボるような男では、騎士としての質は疑えたが。
ただ、不思議なことにミリアリアを見つめる瞳は、とても優しいものに感じられたのだった。
そんなことを考えていると、リートが気まずそうに頬をかきながら口を開いたのだ。
「そうか。それで、その子の名前は?」
「は?」
まさかそんなことを聞かれるとは思っていなかったセイラは、思わず低い声が出てしまっていた。
セイラがリートをじろりと疑いのまなざしで見ていると、多少イライラとした口調でリートがもう一度同じ質問を繰り返したのだ。
「だから、その子の名前を聞いている」
「騎士様が娘の名前を知ってどうするのですか」
リートに名を名乗ることが危険に感じたセイラが取り付く島もなくそう言うと、一瞬だが、リートの紫の瞳に冷たい光が宿ったのだ。ただ、それは一瞬のことだった。
しかし、不幸なことにそれをばっちり見てしまったセイラは、背筋が凍り、いやな汗が背中を滑り落ちるのが分かったのだ。セイラはその一瞬の瞳の動きだけでリートがただ者ではないことを肌で感じていた。
下手に男に刃向うのは悪手のように直感したセイラは、嘘も交えつつも男の質問に答えていたのだった。
「こ、この子の名前は、ミリーと言います」
「そうか。ミリー……、ミリーちゃんだな。歳は? 12、3くらいか?」
「いいえ……今年で十六歳になりました」
セイラの言葉を聞いたリートは、驚いた顔をした後にミリアリアを見てから、セイラに鋭い視線を向けていた。
「おい、ミリーちゃんにちゃんと食事をさせているのか? こんなに小さく細いのでは、心配になる。今度俺が、美味い肉を持ってきてやるから、ミリーちゃんに食べさせてやってくれ」
その言葉に、セイラは驚いた表情をしたが、言った本人であるはずのリートも何故か驚いた表情をしていた。
しかし、リートは直ぐに元の表情に戻っていた。
セイラは、リートに何を言っても無駄なのだろうとなんとなくわかってしまったため、ため息を飲み込んでお礼の言葉を口にしたがその表情は引きつったものだった。
そんな二人の内心のやり取りに全く気が付いていないミリアリアは、リートにまた会えることを嬉しいと思ったが、何故嬉しいと思ったのか自分でも理解できていなかった。
ただ、真っ暗な世界で感じる、強い光のような存在に思えたリートにまた会えるということが嬉しかったのだと、深く考えることはしなかったのだった。
それから、数日後のことだった。リートは本当に上質な肉を手土産にミリアリアを訪ねてきたのだ。
いつもの木にもたれて日向ぼっこをしているミリアリアを見つけたリートは、手を振ってミリアリアに笑いかけたが、目の見えないミリアリアは、そんなリートに気が付くことが出来なかった。
しかし、そんな事情を知らないリートは、無視されたと思い込み、眉を上げて表情をイラついたものにしていた。
「来たぞ」
たった一言、思わず出てしまった低い声でリートはミリアリアに声をかけていた。
リートの声を聴いたミリアリアは、聞こえてきた声がリートのものだと分かると、嬉しそうにぱっと顔を上げていた。リートは、嬉しそうな表情をするミリアリアを見て、現金にもいらだった表情を一瞬にして緩めたのだった。
銀の髪に紫の瞳のリートは、目を引くような美貌の持ち主だった。それに加え背も高く、程よく筋肉の付いた体格から騎士としての腕も立ちそうに見えた。そのことも含めて観察した結果、騎士としてそれなりの地位にいるようにセイラには感じられた。
ただし、仕事をサボるような男では、騎士としての質は疑えたが。
ただ、不思議なことにミリアリアを見つめる瞳は、とても優しいものに感じられたのだった。
そんなことを考えていると、リートが気まずそうに頬をかきながら口を開いたのだ。
「そうか。それで、その子の名前は?」
「は?」
まさかそんなことを聞かれるとは思っていなかったセイラは、思わず低い声が出てしまっていた。
セイラがリートをじろりと疑いのまなざしで見ていると、多少イライラとした口調でリートがもう一度同じ質問を繰り返したのだ。
「だから、その子の名前を聞いている」
「騎士様が娘の名前を知ってどうするのですか」
リートに名を名乗ることが危険に感じたセイラが取り付く島もなくそう言うと、一瞬だが、リートの紫の瞳に冷たい光が宿ったのだ。ただ、それは一瞬のことだった。
しかし、不幸なことにそれをばっちり見てしまったセイラは、背筋が凍り、いやな汗が背中を滑り落ちるのが分かったのだ。セイラはその一瞬の瞳の動きだけでリートがただ者ではないことを肌で感じていた。
下手に男に刃向うのは悪手のように直感したセイラは、嘘も交えつつも男の質問に答えていたのだった。
「こ、この子の名前は、ミリーと言います」
「そうか。ミリー……、ミリーちゃんだな。歳は? 12、3くらいか?」
「いいえ……今年で十六歳になりました」
セイラの言葉を聞いたリートは、驚いた顔をした後にミリアリアを見てから、セイラに鋭い視線を向けていた。
「おい、ミリーちゃんにちゃんと食事をさせているのか? こんなに小さく細いのでは、心配になる。今度俺が、美味い肉を持ってきてやるから、ミリーちゃんに食べさせてやってくれ」
その言葉に、セイラは驚いた表情をしたが、言った本人であるはずのリートも何故か驚いた表情をしていた。
しかし、リートは直ぐに元の表情に戻っていた。
セイラは、リートに何を言っても無駄なのだろうとなんとなくわかってしまったため、ため息を飲み込んでお礼の言葉を口にしたがその表情は引きつったものだった。
そんな二人の内心のやり取りに全く気が付いていないミリアリアは、リートにまた会えることを嬉しいと思ったが、何故嬉しいと思ったのか自分でも理解できていなかった。
ただ、真っ暗な世界で感じる、強い光のような存在に思えたリートにまた会えるということが嬉しかったのだと、深く考えることはしなかったのだった。
それから、数日後のことだった。リートは本当に上質な肉を手土産にミリアリアを訪ねてきたのだ。
いつもの木にもたれて日向ぼっこをしているミリアリアを見つけたリートは、手を振ってミリアリアに笑いかけたが、目の見えないミリアリアは、そんなリートに気が付くことが出来なかった。
しかし、そんな事情を知らないリートは、無視されたと思い込み、眉を上げて表情をイラついたものにしていた。
「来たぞ」
たった一言、思わず出てしまった低い声でリートはミリアリアに声をかけていた。
リートの声を聴いたミリアリアは、聞こえてきた声がリートのものだと分かると、嬉しそうにぱっと顔を上げていた。リートは、嬉しそうな表情をするミリアリアを見て、現金にもいらだった表情を一瞬にして緩めたのだった。
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