欠陥姫の嫁入り~花嫁候補と言う名の人質だけど結構楽しく暮らしています~

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
12 / 97
本編

第二章 欠陥姫と騎士(7)

 安心したように自分の胸にもたれるミリアリアを見たリートは、焦ってミリアリアに嫌われるよりもゆっくりと関係を深めていけばいいと考えなおし、いつものようにミリアリアの細い腰に片手を回してから、もう一方の手で頭を撫でて過ごしたのだった。
 
 ミリアリアは、いつものようにリートに頭を撫でてもらいながら、心が温かいもので満たされるのを感じていた。

(リートさまの腕の中はどうしてこんなに温かいんだろう? リートさまともっと一緒にいたいよ……。でも、そんなの無理。今は秘密に気が付かれないでいるけど、いつかばれてしまう。それに……わたしは……所詮人質としてここにいるんだもの。誰かに想いを寄せるなんて許されない。それに皇帝陛下にこのことを知られたら、リートさまに迷惑が掛かってしまう……。でも、リートさまに会いたい気持ちを抑えられない……。リートさまにここにもう来ないでなんて言えないよ。わたし、どうしたらいいの) 

 不安に揺れる瞳を隠すように瞼を閉じると、眠ってしまったのかと勘違いしたリートが、一度強くミリアリアを抱きしめた後にそっとミリアリアの体を抱き上げたのだ。そして、ミリアリアをベッドに運んだ後に帰っていったのだった。
 

 
 
 リートが帰った後、ミリアリアは胸に宿った不安を消し去るように鈴を鳴らした。
 
(ねぇ、今日のリートさまはどうだった?)

 鈴の音を聞いたセイラは、目に毒な光景を思い出し表情を歪めたが、一瞬で表情を元に戻して、何でもないことのように言った。
 
「いつも通りでしたよ。いつものように姫様を膝に乗せて小動物でも可愛がるかのように撫でまわしておりましたね……」

 淡々とそう答えるセイラの発言を聞いたミリアリアは、残念そうに鈴を鳴らした。
 
(そう……。やっぱりわたし、愛玩動物程度の存在なんだ……。でも、愛玩動物とは言え、大切に思ってもらえることは嬉しい……)

「姫様ごめんなさい。でも……」

 傍目に見ていて明らかに二人は惹かれ合っているのがまる分かりであった。しかし、敢えて勘違いをさせたまま訂正をしないセイラは、落ち込む様子のミリアリアに小さく謝罪の言葉を口にしていた。
 
 二人の想いが通じ合ったとして、誰も幸せになんてなれないとセイラは理解していたのだ。それに、人質という立場上、ミリアリアにこれ以上辛い目に遭ってほしくないと思っているセイラには、二人をただ傍観すること以外の選択肢が無かったのだ。
 しかしここにきて状況は変わりつつあった。何故なら、最近仕入れた情報で、皇帝側に動きがあったからなのだ。
 
 他の花嫁候補の姫君たちが、ついに皇帝陛下が花嫁を選ぶかもしれないという話で持ちきりになっていたのを耳にしてしまったからだ。
 皇帝陛下の花嫁としてミリアリアが選ばれる可能性はかなり低かったが、絶対にないとは言い切れなかったのだ。
 もし、皇帝陛下の花嫁候補の立場で他の男と心と言えど気持ちを通わせたことが知られれば、ミリアリアも自分も、そしてメローズ王国も……、ただでは済まされないだろうことは明白だった。
 
 だからこそ、リートとの交流は避けたいところなのだが、リートはそんな事情も知らないので、高頻度でミリアリアの元にやってきてしまうのだ。
 
 
 何度かミリアリアから隠れてリートに来訪は控えて欲しいと言ってみたが、鼻で笑われておしまいだった。
 その時の瞳の宿る冷酷な光を見てしまっているセイラは、それ以上強く拒否をすることが出来なかったのだ。
 
 
 そうしている内に、他の姫君たちの噂話が大きなものとなってきていた。
 花嫁候補はミリアリアを含めて13人いた。
 そのうち、ミドガルズ王国から来た花嫁候補の姫とゴドル王国から来た花嫁候補の姫で派閥が出来ていたのだ。
 それぞれの姫が先頭に立ち、皇帝を射止めようと躍起になっていたのだ。
 しかし、皇帝はそんな姫たちに振り向くことはなかった。
 所詮は人質だと言わんばかりに、花嫁候補の誰一人として会うことが無かったのだ。
 そのはずだったのだ。だが、最近家臣たちの間でとある噂が広がっていたのだ。
 
「最近の皇帝陛下は機嫌がいい」
「誰か気に入った相手でもできたのではないか?」
「そう言えば、一人の花嫁候補の元に足繁く通っているらしいぞ」
「本当か?」
「ああ本当だ。陛下がこっそり会いに行っているのを見たぞ」
「で、それはどの花嫁候補だ?」
「さぁ、それがはっきりしないんだ。それとなく陛下に聞いても花嫁候補に興味なさそうな感じで」
「なら、花嫁候補以外の誰かってことか?」

 そんな噂話で王宮は浮足立っていたのだった。

感想 182

あなたにおすすめの小説

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。