25 / 97
本編
第四章 皇帝の初恋(5)
うっとりと目を閉じたミリアリアを強く抱きしめたジークフリートは、甘く囁くように言ったのだ。
「ミリアリア、お前にひどい仕打ちをした者たちは俺が始末するから安心しろ」
その言葉が耳に入ったミリアリアは、聴き間違いかと思いジークフリートから少し体を離して首を傾げたのだった。
(あれ? 今、聞き間違いかな? しまつ? えっ?)
小さく首を傾げていたミリアリアを見たジークフリートは、優しい微笑みを浮かべていたがその口から発せられる言葉は物騒なものだった。
「そうだ、ミリアリアの希望はあるか? もし希望する拷問があれば取り入れるぞ」
そう言って、ジークフリートは、惚れ惚れするような笑顔でとんでもないことを言ったのだ。
ジークフリートの言葉の意味を最初は理解できていなかったミリアリアだったが、遅れてその内容を理解したのだ。
(えっ? ええええーーー! 今、リートさま拷問って……。なんで? どうして?)
展開に全くついていけていないミリアリアは、何度も頭を横に振って、ジークフリートにそんなことは望んでいないと伝えようとした。
しかし、言葉で伝えることのできないミリアリアには、それがとても難しいことだったのだ。
涙目で首を振って、そんな恐ろしいことはしないで欲しいと懇願したがジークフリートには伝わっていなかった。
「どうしたんだ。ミリアリア、何がそんなに悲しいんだ。すまない。言ってくれないと分からない……。どうして欲しいんだ?」
何気なく言ったジークフリートの「言ってくれないと分からない」という言葉が、声を失っているミリアリアの胸に鋭いナイフのように深く突き刺さったのだ。
(ああ……。どうして私は声を失ってしまったんだろう。リートさまに何も伝えることが出来ない……)
そう思ったとたん、ミリアリアの瞳から涙がはらはらと零れ落ちていた。
それを見たジークフリートは、焦りに焦っていた。
「ミリアリア、お願いだ。泣かないでくれ。どうしたらいいんだ……」
そう言って、拭っても拭っても零れ落ちるミリアリアの涙に動揺しつつも、その細い体を抱きしめて慰めようと必死になっていた。
ミリアリアに何度も「泣くな、頼む」と言って、優しく背中を撫でて落ち着かせようとしていたジークフリートは、そのうち腕の中のミリアリアが意識を失っていることに気が付いたのだ。
そして、ミリアリアをベッドに横にさせてから優しく頭を一撫でした後に、厳しい表情で部屋を出たのだった。
ジークフリートが向かった先は、王宮の地下の最深部だった。
そこには、ごく一部の人間しか知らない王宮の闇が広がっていたのだった。
最深部に着いたジークフリートは、そこにいた人物に冷え切った声で状況を聞いていた。
「どうだ。何か吐いたか?」
ジークフリートにそう声を掛けられた人物は、首を振ってから低くしわがれた声で簡潔に答えていた。
「何も」
「そうか。なら、今度は俺が尋ねよう」
そう言って、ジークフリートは、部屋の奥にいる人物に声を掛けたのだ。
「何故ミリアリアを襲った?」
そう問われた人物は、俯けていた顔を上げてから、懇願するようにジークフリートの靴に頬擦りをした後に口付けて言ったのだ。
「ジークフリート様ぁ。わたくしは、何もしていません。信じてください。わたくしは、身も心もジークフリートに捧げます。だから、こんな場所から早く出してくださいませ」
そう言って、ジークフリートに無様な姿を晒していたのは、両手を後ろ手に縛られ、涙と鼻水で顔を汚したミドガルズ王国の王女だった。
「ミリアリア、お前にひどい仕打ちをした者たちは俺が始末するから安心しろ」
その言葉が耳に入ったミリアリアは、聴き間違いかと思いジークフリートから少し体を離して首を傾げたのだった。
(あれ? 今、聞き間違いかな? しまつ? えっ?)
小さく首を傾げていたミリアリアを見たジークフリートは、優しい微笑みを浮かべていたがその口から発せられる言葉は物騒なものだった。
「そうだ、ミリアリアの希望はあるか? もし希望する拷問があれば取り入れるぞ」
そう言って、ジークフリートは、惚れ惚れするような笑顔でとんでもないことを言ったのだ。
ジークフリートの言葉の意味を最初は理解できていなかったミリアリアだったが、遅れてその内容を理解したのだ。
(えっ? ええええーーー! 今、リートさま拷問って……。なんで? どうして?)
展開に全くついていけていないミリアリアは、何度も頭を横に振って、ジークフリートにそんなことは望んでいないと伝えようとした。
しかし、言葉で伝えることのできないミリアリアには、それがとても難しいことだったのだ。
涙目で首を振って、そんな恐ろしいことはしないで欲しいと懇願したがジークフリートには伝わっていなかった。
「どうしたんだ。ミリアリア、何がそんなに悲しいんだ。すまない。言ってくれないと分からない……。どうして欲しいんだ?」
何気なく言ったジークフリートの「言ってくれないと分からない」という言葉が、声を失っているミリアリアの胸に鋭いナイフのように深く突き刺さったのだ。
(ああ……。どうして私は声を失ってしまったんだろう。リートさまに何も伝えることが出来ない……)
そう思ったとたん、ミリアリアの瞳から涙がはらはらと零れ落ちていた。
それを見たジークフリートは、焦りに焦っていた。
「ミリアリア、お願いだ。泣かないでくれ。どうしたらいいんだ……」
そう言って、拭っても拭っても零れ落ちるミリアリアの涙に動揺しつつも、その細い体を抱きしめて慰めようと必死になっていた。
ミリアリアに何度も「泣くな、頼む」と言って、優しく背中を撫でて落ち着かせようとしていたジークフリートは、そのうち腕の中のミリアリアが意識を失っていることに気が付いたのだ。
そして、ミリアリアをベッドに横にさせてから優しく頭を一撫でした後に、厳しい表情で部屋を出たのだった。
ジークフリートが向かった先は、王宮の地下の最深部だった。
そこには、ごく一部の人間しか知らない王宮の闇が広がっていたのだった。
最深部に着いたジークフリートは、そこにいた人物に冷え切った声で状況を聞いていた。
「どうだ。何か吐いたか?」
ジークフリートにそう声を掛けられた人物は、首を振ってから低くしわがれた声で簡潔に答えていた。
「何も」
「そうか。なら、今度は俺が尋ねよう」
そう言って、ジークフリートは、部屋の奥にいる人物に声を掛けたのだ。
「何故ミリアリアを襲った?」
そう問われた人物は、俯けていた顔を上げてから、懇願するようにジークフリートの靴に頬擦りをした後に口付けて言ったのだ。
「ジークフリート様ぁ。わたくしは、何もしていません。信じてください。わたくしは、身も心もジークフリートに捧げます。だから、こんな場所から早く出してくださいませ」
そう言って、ジークフリートに無様な姿を晒していたのは、両手を後ろ手に縛られ、涙と鼻水で顔を汚したミドガルズ王国の王女だった。
あなたにおすすめの小説
【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
赤貧令嬢の借金返済契約
夏菜しの
恋愛
大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。
いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。
クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。
王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。
彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。
それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。
赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~
白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」
枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。
土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。
「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」
あなた誰!?
やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!
虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。