欠陥姫の嫁入り~花嫁候補と言う名の人質だけど結構楽しく暮らしています~

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
27 / 97
本編

第四章 皇帝の初恋(7)

しおりを挟む
 ミリアリアの頬の腫れが引いたころ、王宮から花嫁候補たちの処遇が正式に発表された。
 その内容とは、帝国の貴族たちに嫁されるというものだった。
 それぞれの花嫁候補は、ジークフリートに指名された貴族の元に向かったのだった。
 なかでも、今回の騒動を起こしたミドガルズ王国の王女とその取り巻きたちは、低位の貴族の元に嫁されることとなったのだ。
 知る者は少なかったが、騒動を起こしたミドガルズ王国の王女とその取り巻きたちを嫁された貴族たちは、ジークフリートに絶対的な忠誠を誓っている一族だった。
 それは、王家に決して逆らうことのできない妄信的なまでの忠誠心だった。まるで呪いのような忠誠だ。
 隠された真実として、実はその一族の者たちは、代々王家の汚れ仕事を請け負っていたのだ。
 花嫁候補が嫁されることを知った一族の者たちは、何も言われなかったが瞬時に理解したのだ。
 殺さない程度の苦痛と屈辱を与えて飼いならせというジークフリートの意思をだ。
 
 中でも、ミドガルズ王国の王女が向かいうこととなった一族の当主は、喜んで受け入れたのだった。
 ミドガルズ王国の王女を迎え入れるとき、一族の当主は、低くしわがれた声で言ったのだ。
 
「前の妻は壊れてしまって困っていたのだ。新しい妻を迎えられることを心から歓迎しますよ。くくくっ。貴方は思いのほか元気もあり精神力も強いようなので、長い間楽しめそうで嬉しいです。我妻よ。末永くよろしく頼むよ」

 そう言って、ニヤリと笑った姿を見た、全身包帯だらけのミドガルズ王国の王女が、白目を剥いて倒れたが、その奥底から湧き上がる恐怖を知る者は誰もいなかったのだった。
 
 
 そして、ジークフリートの寝室で養生していたミリアリアにもその知らせが届けられたのだ。
 勿論、その知らせを持ってきたのはジークフリートその人だった。
 
 ジークフリートによってベッドから出ることを禁止されていたミリアリアは、一日をベッドの中で過ごしていた。
 そんな中、嬉しそうなジークフリートがミリアリアの元を訪ねてこう言ったのだ。
 
「ミリアリア、聞いてくれ。花嫁候補たちの処遇が正式に決まった。花嫁候補たちは、それぞれ帝国の貴族の元に嫁されることとなった。そして、メローズ王国の王女である君は、俺の元に嫁ぐことが正式に決まった」

 ミリアリアは、まさか自分の身分が知られているとは思ってもいなかったため目をぱちくりとさせた後に、密かに思いを寄せていた相手に嫁ぐことが分かって喜びにその身を震わせたのだった。
 
(えっ? 今わたしのこと、メローズ王国の王女って……。ああ、リートさまにわたしの本当の身分を知られてしまっていたのね。そうよね。ここ数日、誰も何も教えてくれなかったけど、わたしの身分が知られてしまったから小屋ではなく、この広い部屋で過ごすことになったのよね。セイラは詳しくは教えてくれなかったけど、小屋でのこと、結構な騒ぎになっていたみたいだし、調査されるのは仕方がないわね。でも、誰でもない、リートさまの元にお嫁に行けるなんて……。嬉しい)

 ミリアリアがそんなことを考えていると、ジークフリートがミリアリアを強く抱きしめてきたのだ。
 
「順序が逆になってしまったが聞いてくれ。ミリアリア、俺は君が好きだ。俺と結婚してくれ」

 耳元でそう言われたミリアリアは、仕方なくミリアリアを受け入れるのではなく、好きだから結婚したいと言ってくれるジークフリートの言葉が嬉しかった。
 しかし、喜んだのは一瞬だった。
 ミリアリアは、ジークフリートを好きだと気持ちを口に出そうとしたが、空気が漏れただけで声が出ることはなかったことで、自分が欠けた存在だというとを思い出してしまっていた。
 
(だめ……。私は、目も見えないし、話もできない。こんな私が、リートさまの妻になるなんて出来ない。リートさまの爵位は分からないけど、たとえ男爵位だとしても、その妻が目も見えず話もできないだなんてあってはならない……)

 ミリアリアが思い悩んでいることを知らないジークフリートは、嬉しそうにミリアリアに語り掛けたのだ。
 
「結婚式に着るドレスの準備をさっそく始めよう。ミリアリアの淡く美しい金髪と白い肌に合うドレスは、やっぱり白だろうか? いや、俺の色に合わせて銀や紫もいいな」

 嬉しそうにそう語るジークフリートの言葉で、ミリアリアは心が浮き立つのを感じた。
 
(リートさまは、銀と紫の色なのね。嬉しい、リートさまの持っている色を知れただけでもこんなにうれしい。だけど、こんなわたしでは、リートさまに釣り合わない。リートさまを不幸にしてしまう……。言おう。今まで隠してきたわたしの秘密を……。ごめんなさい。このことでセイラに迷惑を掛けてしまうかもしれない。でも、リートさまに伝えないと……。このまま黙っていることなんて出来ない)

 そう決意したミリアリアは、ゆっくりと顔を上げた。そして、両手でジークフリートの胸を押した後に口を開いたのだった。

しおりを挟む
感想 182

あなたにおすすめの小説

[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。 魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。 でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。 その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。 ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。 え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。 平凡で普通の生活がしたいの。 私を巻き込まないで下さい! 恋愛要素は、中盤以降から出てきます 9月28日 本編完結 10月4日 番外編完結 長い間、お付き合い頂きありがとうございました。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人
恋愛
精霊の加護を受け、普通の人には見る事も感じる事も出来ない精霊と、会話が出来る少女リディア。 聖女として各地の精霊石に精霊の力を込め、国を災いから守っているのに、突然第四王女によって追放されてしまう。 暫くは精霊の力も残っているけれど、時間が経って精霊石から力が無くなれば魔物が出て来るし、魔導具も動かなくなるけど……本当に大丈夫!? 一先ず、この国に居るとマズそうだから、元聖女っていうのは隠して、別の国で趣味を活かして生活していこうかな。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

今宵、薔薇の園で

天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。 しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。 彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。 キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。 そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。 彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

処理中です...