35 / 97
本編
第五章 欠陥姫と暗殺者(6)
「姫様……。き…聞いてください。私は、ずっと姫様を騙していました。私は、姫様に毒を盛っていました……。ごほっ! ある日、陛下が私に命じた……のです……。息子の命が惜しければ、姫様に毒を飲ませろと。私は……、息子の命を……たすけ……ひめ…さま。どく……のませ……ゴホッゴホッ!!」
セイラは、切れ切れにあの日の真実を語ったのだ。
あの日、ミリアリアが初めて姉にあった日の真実をだ。
姉である王女が、ミリアリアに読んでみるように渡したのは、一部の学者しか解読が出来ないような古代文字で書かれた禁書だったのだ。
それをすらすらとミリアリアが読むのを密かに聞いていた学者が国王にそのことを報告したのが始まりだった。
報告を受けた国王は、すぐさま宰相に相談したのだ。
宰相は、冷遇したミリアリアが素直に禁書を解読するとは思えないと考え、情報が漏れることが無いように殺すことを提案したのだ。
それに対し、他の者は、殺すのは惜しいと国王に言ったのだ。
優柔不断で、一人では何も判断を下せない国王は悩みに悩んだ結果、ミリアリアが自国の秘密を簡単に漏らすことのないようにする方法を考え付いたのだ。
その方法は、ミリアリアの視力と声を奪うというものだった。
生かしておけば、いつか禁書の内容を必要とした時、ミリアリアに解読方法を聞けばいいという安易な考えからその計画は実行されたのだ。
そして、乳母としてミリアリアの世話をしていたセイラに息子の命をチラつけせて、ミリアリアに毒入りのケーキを食べさせたのだ。
ケーキにいれた毒は効き目が悪かったのか、高熱が出た後に声がかすれる程度の効果しかなかったのだ。
それを知った国王は、セイラに日々ミリアリアの食事に気が付かれないように毒を盛るように命じたのだ。
効果が出るまで一年ほどかかったが、ミリアリアは国王の計画した通りに視力と声を失っていた。
しかし、ミリアリアは、それを周囲に気が付かせないようすることに成功していたのだ。
セイラからの報告で確かに視力と声を失ったと聞いてはいても、ミリアリアは、目が見えているかのように振舞ったのだから安心することが出来なかったのだ。
それから月日は流れ、テンペランス帝国から花嫁候補という名の人質を差し出すように命じられたのだ。
その頃には、ミリアリアが目も見えず、声も出せないと確信することが出来ていたので、ミリアリアのことはただ煩わしいだけの存在としか思えなくなっていたのだ。
だからこそ、可愛い娘を差し出すことなんて考えられない国王は、ミリアリアを人質としてテンペランス帝国に向かわせることに決めたのだった。
ミリアリアの秘密を知るのはごく一部の人間だけだったので、公に反対する者はいなかった。
しかし、ミリアリアの秘密を知る一部の者は、不安を感じたのだ。だから万が一を考えてミリアリア一人ではなく、セイラを共に付けることにしたのだ。
国王たちは知らなかった。
セイラがミリアリアにこのころ既に毒を盛らなくなっていたことをだ。
セイラは、薄々感じていたのだ。息子がもう生きていないことを。
休暇中、息子に会いに行っても、学校だ、用事だと、一度も会うことが出来ていなかったのだ。
そして、長年傍に居るミリアリアに、次第に愛情を感じるようになっていったのだ。
自分だけを頼り、信頼を寄せてくれる美しい存在をいつしか守りたいと思うようになっていったのだ。
それと同時に、自分が犯してしまった罪を後悔する日々が始まったのだ。
そんな中、テンペランス帝国に来てから、小さな小屋での二人っきりの生活は、ミリアリアだけではなくセイラにとっても楽しいものだったのだ。
ミリアリアが幸せそうに暮らす姿、初めての恋に戸惑う姿、気になる相手の様子を知りたがる可愛い姿。
全てが愛おしかったのだ。
だから、ミリアリアに剣が振り下ろされたとき、何のためらいもなかったのだ。
背中を刺されたときは激痛を感じたが、それと同時に安心もしていた。
これで、罪を償えると。
「ひ…めさま……。ご…め……なさい。どうか、わた…しをゆるさないで……。しあわせ……な…て……」
ミリアリアにそう告げ終わったセイラは、自分のために泣いてくれるミリアリアを見て、どこか嬉しそうな微笑みを浮かべてから瞼を閉じた。
そして、セイラの命は消え去ったのだった。
切れ切れに語られるセイラの懺悔を聞き終わったミリアリアは、声もなく泣く事しか出来なかった。
(死なないで……。死んだらだめ……。お願いだから、わたしを一人にしないで……。ねぇ、わたしに悪いことしたと思うなら、生きて償ってよ!! 逝かないでよ! 死なないで、お願い……。ごめん、セイラ……。ごめんなさい……)
精神的なショックも大きかったミリアリアは、そのまま意識を失っていたのだった。
その頃には、騒ぎを聞きつけた兵士がミリアリアの部屋の前に集まっていたのだ。
そこにジークフリートが駆けつけたのだった。
血だまりに倒れるミリアリアを抱き上げたジークフリートは、ミリアリアの息があることを確かめて安堵の息を吐いた。そしてすぐに女医を呼ぶように兵士に命じたのだった。
セイラは、切れ切れにあの日の真実を語ったのだ。
あの日、ミリアリアが初めて姉にあった日の真実をだ。
姉である王女が、ミリアリアに読んでみるように渡したのは、一部の学者しか解読が出来ないような古代文字で書かれた禁書だったのだ。
それをすらすらとミリアリアが読むのを密かに聞いていた学者が国王にそのことを報告したのが始まりだった。
報告を受けた国王は、すぐさま宰相に相談したのだ。
宰相は、冷遇したミリアリアが素直に禁書を解読するとは思えないと考え、情報が漏れることが無いように殺すことを提案したのだ。
それに対し、他の者は、殺すのは惜しいと国王に言ったのだ。
優柔不断で、一人では何も判断を下せない国王は悩みに悩んだ結果、ミリアリアが自国の秘密を簡単に漏らすことのないようにする方法を考え付いたのだ。
その方法は、ミリアリアの視力と声を奪うというものだった。
生かしておけば、いつか禁書の内容を必要とした時、ミリアリアに解読方法を聞けばいいという安易な考えからその計画は実行されたのだ。
そして、乳母としてミリアリアの世話をしていたセイラに息子の命をチラつけせて、ミリアリアに毒入りのケーキを食べさせたのだ。
ケーキにいれた毒は効き目が悪かったのか、高熱が出た後に声がかすれる程度の効果しかなかったのだ。
それを知った国王は、セイラに日々ミリアリアの食事に気が付かれないように毒を盛るように命じたのだ。
効果が出るまで一年ほどかかったが、ミリアリアは国王の計画した通りに視力と声を失っていた。
しかし、ミリアリアは、それを周囲に気が付かせないようすることに成功していたのだ。
セイラからの報告で確かに視力と声を失ったと聞いてはいても、ミリアリアは、目が見えているかのように振舞ったのだから安心することが出来なかったのだ。
それから月日は流れ、テンペランス帝国から花嫁候補という名の人質を差し出すように命じられたのだ。
その頃には、ミリアリアが目も見えず、声も出せないと確信することが出来ていたので、ミリアリアのことはただ煩わしいだけの存在としか思えなくなっていたのだ。
だからこそ、可愛い娘を差し出すことなんて考えられない国王は、ミリアリアを人質としてテンペランス帝国に向かわせることに決めたのだった。
ミリアリアの秘密を知るのはごく一部の人間だけだったので、公に反対する者はいなかった。
しかし、ミリアリアの秘密を知る一部の者は、不安を感じたのだ。だから万が一を考えてミリアリア一人ではなく、セイラを共に付けることにしたのだ。
国王たちは知らなかった。
セイラがミリアリアにこのころ既に毒を盛らなくなっていたことをだ。
セイラは、薄々感じていたのだ。息子がもう生きていないことを。
休暇中、息子に会いに行っても、学校だ、用事だと、一度も会うことが出来ていなかったのだ。
そして、長年傍に居るミリアリアに、次第に愛情を感じるようになっていったのだ。
自分だけを頼り、信頼を寄せてくれる美しい存在をいつしか守りたいと思うようになっていったのだ。
それと同時に、自分が犯してしまった罪を後悔する日々が始まったのだ。
そんな中、テンペランス帝国に来てから、小さな小屋での二人っきりの生活は、ミリアリアだけではなくセイラにとっても楽しいものだったのだ。
ミリアリアが幸せそうに暮らす姿、初めての恋に戸惑う姿、気になる相手の様子を知りたがる可愛い姿。
全てが愛おしかったのだ。
だから、ミリアリアに剣が振り下ろされたとき、何のためらいもなかったのだ。
背中を刺されたときは激痛を感じたが、それと同時に安心もしていた。
これで、罪を償えると。
「ひ…めさま……。ご…め……なさい。どうか、わた…しをゆるさないで……。しあわせ……な…て……」
ミリアリアにそう告げ終わったセイラは、自分のために泣いてくれるミリアリアを見て、どこか嬉しそうな微笑みを浮かべてから瞼を閉じた。
そして、セイラの命は消え去ったのだった。
切れ切れに語られるセイラの懺悔を聞き終わったミリアリアは、声もなく泣く事しか出来なかった。
(死なないで……。死んだらだめ……。お願いだから、わたしを一人にしないで……。ねぇ、わたしに悪いことしたと思うなら、生きて償ってよ!! 逝かないでよ! 死なないで、お願い……。ごめん、セイラ……。ごめんなさい……)
精神的なショックも大きかったミリアリアは、そのまま意識を失っていたのだった。
その頃には、騒ぎを聞きつけた兵士がミリアリアの部屋の前に集まっていたのだ。
そこにジークフリートが駆けつけたのだった。
血だまりに倒れるミリアリアを抱き上げたジークフリートは、ミリアリアの息があることを確かめて安堵の息を吐いた。そしてすぐに女医を呼ぶように兵士に命じたのだった。
あなたにおすすめの小説
【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
赤貧令嬢の借金返済契約
夏菜しの
恋愛
大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。
いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。
クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。
王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。
彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。
それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。
赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~
白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」
枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。
土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。
「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」
あなた誰!?
やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!
虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。