37 / 97
本編
第六章 欠陥姫と毒花(1)
しおりを挟む
ジークフリートは、急ぎ足でミリアリアの元に向かっていた。
事件から数日たったが、ミリアリアの意識はまだ戻っていなかった。
ミリアリアを診た女医の話では、精神的なショックが大きく目を覚まさない可能性があるとジークフリートに言ったのだ。
そして、あの時あの場所であったことを知るために、ジークフリートは、一人の少女を地下牢に閉じ込めていたのだ。
ジークフリートが部屋に着いた時、ミリアリアを襲ったと思われる兵士は、全員が縄で縛られていたのだ。
そして、その他に部屋にいたのは既に事切れていたセイラとどこかで見た覚えのあるメイド服の少女だったのだ。
少女は、腹を剣で刺されているようで、重症だったがその命は、辛うじて助かったのだ。
医者に治療をさせる際、重症にも拘らず暴れるなどして手を焼かされたことと、素性が分からなかったため治療後は牢に放り込んだという経緯があったのだ。
テンス大公たちの後始末を付けるためになかなか時間が取れず、少女の元に事情を聴きに来るのが遅くなったが、ようやく今日、事情聴取に訪れることが出来たのだった。
改めて少女の顔を見たジークフリートは、なんとなく見覚えがあったが、それがいつのことだったのか思い出せないでいた。
牢に閉じ込められている少女は、肩まである灰色の髪を掻きながら榛色の瞳でジークフリートを睨みつけて言ったのだ。
「はぁ。いい加減解放してくれない? 俺は、お姫様を助けただけなの。見たでしょう?兵士たちが縄で縛られてるの。あれは、俺がやったの。なぁ、お姫様に会わせてくれよ。お姫様はどうしてるんだ? 元気なのか……いや、元気なわけないよな。セイラがあんな風に死んで……ショックだよな……」
最後の方は独り言のようにそう呟いた少女の言葉を聞き逃さなかったジークフリートは、牢の中で胡坐をかく少女を観察したのだ。
心からミリアリアを案じているように見えたのだ。
そして、セイラの死を目の当たりにしたミリアリアを思って暗い顔をしていたのだ。
それでも、少女が何者なのか聞いても答えないことから、ここから出す訳にはいかなかったのだ。
「なぁ、お姫様に会わせてくれよ」
「駄目だ。ミリアリアに会いたいなのら、まずはお前の素性を話せ」
「やだ。俺のことはお姫様以外には言いたくない。なぁ、お姫様にシューニャが会いたがってるって伝えてくれよ。そしたら、お姫様も会いたがってくれるから」
シューニャという名を出せばミリアリアが笑顔になると聞いた言葉を聞いたジークフリートは、暗い顔をしてから鼻で笑ったのだ。
「不審者の名など、ミリアリアの耳に入れる訳がないだろう」
ジークフリートにそう言われた少女は一瞬ムッとした顔をした後に、面白がるように言ったのだ。
「俺は、不審者じゃねーし。ふーん。そう? お姫様は俺の名前を出せば笑顔になると思うけどなぁ。だって俺は、お姫様のおしゃべり友達だからなぁ。俺が入れたお茶を一緒に飲んで他愛のない話にはなをさか―――」
そこまで話した少女……シューニャに詰め寄るようにジークフリートは、鬼気迫る表情で言ったのだ。
「お前は、ミリアリアと会話をしたことがあるのか?」
思いのほかジークフリートが必死な表情でそう問いかけたことで、シューニャは、不味いと表情を歪めたのだった。
ミリアリアを自分のものだとでも言うように独占して、シューニャに会わせようとしないジークフリートにマウントを取りたいがためにしゃべり過ぎたと後悔したがもう遅かった。
シューニャは、鼻の頭を掻きながら誤魔化すように言ったのだ。
「へ? そんなこと言ったっけ? それよりも、お姫様にあーわーせーろー」
「誤魔化すな! 確かに聞いた。何を話した? ミリアリアは、俺のこと何か言っていたか?」
あまりにも必死な様子で、もともとここを訪れた目的も忘れた様子のジークフリートは、ミリアリアのことならどんな些細なことでも知りたいと必死になっていたのだ。
結局、その日は話は平行線をたどっただけで何の解決にもならなかったのだった。
事件から数日たったが、ミリアリアの意識はまだ戻っていなかった。
ミリアリアを診た女医の話では、精神的なショックが大きく目を覚まさない可能性があるとジークフリートに言ったのだ。
そして、あの時あの場所であったことを知るために、ジークフリートは、一人の少女を地下牢に閉じ込めていたのだ。
ジークフリートが部屋に着いた時、ミリアリアを襲ったと思われる兵士は、全員が縄で縛られていたのだ。
そして、その他に部屋にいたのは既に事切れていたセイラとどこかで見た覚えのあるメイド服の少女だったのだ。
少女は、腹を剣で刺されているようで、重症だったがその命は、辛うじて助かったのだ。
医者に治療をさせる際、重症にも拘らず暴れるなどして手を焼かされたことと、素性が分からなかったため治療後は牢に放り込んだという経緯があったのだ。
テンス大公たちの後始末を付けるためになかなか時間が取れず、少女の元に事情を聴きに来るのが遅くなったが、ようやく今日、事情聴取に訪れることが出来たのだった。
改めて少女の顔を見たジークフリートは、なんとなく見覚えがあったが、それがいつのことだったのか思い出せないでいた。
牢に閉じ込められている少女は、肩まである灰色の髪を掻きながら榛色の瞳でジークフリートを睨みつけて言ったのだ。
「はぁ。いい加減解放してくれない? 俺は、お姫様を助けただけなの。見たでしょう?兵士たちが縄で縛られてるの。あれは、俺がやったの。なぁ、お姫様に会わせてくれよ。お姫様はどうしてるんだ? 元気なのか……いや、元気なわけないよな。セイラがあんな風に死んで……ショックだよな……」
最後の方は独り言のようにそう呟いた少女の言葉を聞き逃さなかったジークフリートは、牢の中で胡坐をかく少女を観察したのだ。
心からミリアリアを案じているように見えたのだ。
そして、セイラの死を目の当たりにしたミリアリアを思って暗い顔をしていたのだ。
それでも、少女が何者なのか聞いても答えないことから、ここから出す訳にはいかなかったのだ。
「なぁ、お姫様に会わせてくれよ」
「駄目だ。ミリアリアに会いたいなのら、まずはお前の素性を話せ」
「やだ。俺のことはお姫様以外には言いたくない。なぁ、お姫様にシューニャが会いたがってるって伝えてくれよ。そしたら、お姫様も会いたがってくれるから」
シューニャという名を出せばミリアリアが笑顔になると聞いた言葉を聞いたジークフリートは、暗い顔をしてから鼻で笑ったのだ。
「不審者の名など、ミリアリアの耳に入れる訳がないだろう」
ジークフリートにそう言われた少女は一瞬ムッとした顔をした後に、面白がるように言ったのだ。
「俺は、不審者じゃねーし。ふーん。そう? お姫様は俺の名前を出せば笑顔になると思うけどなぁ。だって俺は、お姫様のおしゃべり友達だからなぁ。俺が入れたお茶を一緒に飲んで他愛のない話にはなをさか―――」
そこまで話した少女……シューニャに詰め寄るようにジークフリートは、鬼気迫る表情で言ったのだ。
「お前は、ミリアリアと会話をしたことがあるのか?」
思いのほかジークフリートが必死な表情でそう問いかけたことで、シューニャは、不味いと表情を歪めたのだった。
ミリアリアを自分のものだとでも言うように独占して、シューニャに会わせようとしないジークフリートにマウントを取りたいがためにしゃべり過ぎたと後悔したがもう遅かった。
シューニャは、鼻の頭を掻きながら誤魔化すように言ったのだ。
「へ? そんなこと言ったっけ? それよりも、お姫様にあーわーせーろー」
「誤魔化すな! 確かに聞いた。何を話した? ミリアリアは、俺のこと何か言っていたか?」
あまりにも必死な様子で、もともとここを訪れた目的も忘れた様子のジークフリートは、ミリアリアのことならどんな些細なことでも知りたいと必死になっていたのだ。
結局、その日は話は平行線をたどっただけで何の解決にもならなかったのだった。
61
あなたにおすすめの小説
[完結]私を巻き込まないで下さい
シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。
魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。
でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。
その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。
ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。
え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。
平凡で普通の生活がしたいの。
私を巻き込まないで下さい!
恋愛要素は、中盤以降から出てきます
9月28日 本編完結
10月4日 番外編完結
長い間、お付き合い頂きありがとうございました。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた
向原 行人
恋愛
精霊の加護を受け、普通の人には見る事も感じる事も出来ない精霊と、会話が出来る少女リディア。
聖女として各地の精霊石に精霊の力を込め、国を災いから守っているのに、突然第四王女によって追放されてしまう。
暫くは精霊の力も残っているけれど、時間が経って精霊石から力が無くなれば魔物が出て来るし、魔導具も動かなくなるけど……本当に大丈夫!?
一先ず、この国に居るとマズそうだから、元聖女っていうのは隠して、別の国で趣味を活かして生活していこうかな。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
今宵、薔薇の園で
天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。
しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。
彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。
キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。
そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。
彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。
見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます
珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。
そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。
そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。
ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる