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本編
第七章 真実と隠された心の叫び(2)
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「陛下……。王女殿下ですが、お心を失っております……。ああ、どうしてこんなことに……」
そう言って、ミリアリアを診断した医師はその場に泣き崩れてしまったのだ。
しかし、医師の診断結果が信じられないジークフリートは、ミリアリアの肩を揺らして必死に声をかけ続けたのだ。
「ミリアリア? お願いだ、いつもみたいに俺に笑いかけてくれ……。頼むよ……。ミリアリア、ミリアリア、ミリアリア!!!」
最後には、ミリアリアをきつく抱きしめてその名前を壊れたように呼び続けたのだ。
余りに悲痛なジークフリートの様子を見ていられなくなったシューニャや侍女、騎士たちは、泣き崩れる医師を連れて、その場を後にしたのだった。
半日ほどして、ジークフリートは、ミリアリアの部屋を出てきたが、その顔はとてもひどいものだった。
顔色は土気色になり、目の下の隈も酷かったが、それよりも紫の瞳から生気が失われていることに誰しもが衝撃を受けていたのだ。
よろよろとした足取りで歩くジークフリートは、セドルを呼びつけていた。
そして、ジークフリートを心配するセドルに、先ほどまでの生気を失った目が嘘のような、復讐に燃える暗い瞳で低く命じたのだ。
「帝国騎士団団長に至急伝えろ。メローズ王国を落とす準備をせよと」
「は?」
ジークフリートの言葉の意味が理解できないというように、セドルが疑問の声を上げると、ジークフリートは、暗い瞳でセドルを睨みつけて言ったのだ。
「メローズ王国を落とすといったのだ」
「急に何故ですか? まさか……王女殿下の状態に何か関係が?」
「分からない。だか、そうに決まっている!!」
そう言って、セドルの襟首を掴んで怒鳴りつけたジークフリートだったが、理由もなく他国を攻めることに反対のセドルは、言葉を続けていた。
「へ、陛下……。証拠もなく……そんなことを…すれば」
「分かってる! それでも、それでもだ!!」
感情的にそう叫ぶジークフリートは、セドルを壁に叩きつけるように離してから、硬く握った拳を壁に叩きつけたのだった。
それをただ見ていたシューニャだったが、あることに気が付いた様子でジークフリートに言ったのだ。
「メローズ王国と言えば、皇帝さん。あの時、花を渡されてって、あの場にいた侍女から聞いたんだけど。なぁ、その花はどうしたんだ?」
急に脈絡もなく、そんなことを聞かれたジークフリートだったが、すぐに返事をしていた。
「研究室に持って行って、処分を命じた。それが何だというのだ」
「毒は? その花に毒はなかったのか?」
「調べさせたが、そういった成分は検出されなかった。だが、何か企みがあるよう思えたので花は処分するように命じた」
ジークフリートの言葉を聞いたシューニャは、何かを考えるようにしてから、ジークフリートに聞いたのだ。
「なぁ、そのあとそのままお姫様のところに来たのか? 服は? 服は着替えたか?」
「服? いや、そんな……ま…まさか……」
そう言って、ミリアリアを診断した医師はその場に泣き崩れてしまったのだ。
しかし、医師の診断結果が信じられないジークフリートは、ミリアリアの肩を揺らして必死に声をかけ続けたのだ。
「ミリアリア? お願いだ、いつもみたいに俺に笑いかけてくれ……。頼むよ……。ミリアリア、ミリアリア、ミリアリア!!!」
最後には、ミリアリアをきつく抱きしめてその名前を壊れたように呼び続けたのだ。
余りに悲痛なジークフリートの様子を見ていられなくなったシューニャや侍女、騎士たちは、泣き崩れる医師を連れて、その場を後にしたのだった。
半日ほどして、ジークフリートは、ミリアリアの部屋を出てきたが、その顔はとてもひどいものだった。
顔色は土気色になり、目の下の隈も酷かったが、それよりも紫の瞳から生気が失われていることに誰しもが衝撃を受けていたのだ。
よろよろとした足取りで歩くジークフリートは、セドルを呼びつけていた。
そして、ジークフリートを心配するセドルに、先ほどまでの生気を失った目が嘘のような、復讐に燃える暗い瞳で低く命じたのだ。
「帝国騎士団団長に至急伝えろ。メローズ王国を落とす準備をせよと」
「は?」
ジークフリートの言葉の意味が理解できないというように、セドルが疑問の声を上げると、ジークフリートは、暗い瞳でセドルを睨みつけて言ったのだ。
「メローズ王国を落とすといったのだ」
「急に何故ですか? まさか……王女殿下の状態に何か関係が?」
「分からない。だか、そうに決まっている!!」
そう言って、セドルの襟首を掴んで怒鳴りつけたジークフリートだったが、理由もなく他国を攻めることに反対のセドルは、言葉を続けていた。
「へ、陛下……。証拠もなく……そんなことを…すれば」
「分かってる! それでも、それでもだ!!」
感情的にそう叫ぶジークフリートは、セドルを壁に叩きつけるように離してから、硬く握った拳を壁に叩きつけたのだった。
それをただ見ていたシューニャだったが、あることに気が付いた様子でジークフリートに言ったのだ。
「メローズ王国と言えば、皇帝さん。あの時、花を渡されてって、あの場にいた侍女から聞いたんだけど。なぁ、その花はどうしたんだ?」
急に脈絡もなく、そんなことを聞かれたジークフリートだったが、すぐに返事をしていた。
「研究室に持って行って、処分を命じた。それが何だというのだ」
「毒は? その花に毒はなかったのか?」
「調べさせたが、そういった成分は検出されなかった。だが、何か企みがあるよう思えたので花は処分するように命じた」
ジークフリートの言葉を聞いたシューニャは、何かを考えるようにしてから、ジークフリートに聞いたのだ。
「なぁ、そのあとそのままお姫様のところに来たのか? 服は? 服は着替えたか?」
「服? いや、そんな……ま…まさか……」
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