欠陥姫の嫁入り~花嫁候補と言う名の人質だけど結構楽しく暮らしています~

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
68 / 97
本編

第八章 欠陥姫の嫁入り(7)

しおりを挟む
 その後、ジークフリートからのキスが房事ではなかったと知ったミリアリアが、「房事とはいったい?」と悩むこととなるが、その場にいる誰も意味を教えてくれることはなかった。
 ミリアリアが、房事の意味とハンドサインの意味が同じと知ることとなるが、それはまた別の話。
 
 ミリアリアの考えを聞いたセドルは、冷静な口調で話を簡潔にまとめたのだった。
 
「成程……。つまり、愛の力ということですね」

 その言葉に、ぱちくりと瞬きをしたミリアリアは、恥ずかしそうに頷いて見せたのだ。

 ミリアリアは気付いていなかったが、ロッサで心を失っただけで済んだのには理由があったのだ。
 一年前、テンペランス帝国に季節外れの雪が降った日の、とある出来事が関係していたのだ。
 あの日、ミリアリアはジークフリートの頬にお礼のキスをしたつもりが、ほんの僅かに目標がずれてしまったため、頬ではなくジークフリートの唇の端に唇が触れてしまったことがミリアリアの命を救ったのだった。
 唇同士の接触は僅かなものだったが、ジークフリートのミリアリアを想う愛に溢れた心が、ミリアリアの中の呪毒を緩和していたのだ。
 もしそれが無かったら、不完全な呪毒だと言えど、致命傷になっていたことだろう。
 まさに、ジークフリートのミリアリアを想う愛が奇跡を起こしたと言えたのだ。
 

 
 一応の結論を出した時には既に、陽も暮れようとしていた。
 シューニャは、ミリアリアを気遣って今日はここまでだと手を叩いたのだ。
 
「ほいよ。それじゃ、今日はここまでだな。お姫様も疲れただろう? そろそろ食事の時間だ。用意するから、ちょっと待っててな? おっと、皇帝さんもここで食事するだろ?」

「ああ、用意しろ」

「はいよ」

 そう言って、シューニャは、部屋を出て行ったが、それを見送るミリアリアの様子がおかしいことにジークフリートは気が付いたのだ。
 小さく震えるミリアリアの肩を抱いて、ミリアリアを気遣うように声を掛けたのだ。
 
「ミリアリア? どうしたんだ?」

 ジークフリートの声を聴いたミリアリアは、瞳に涙を浮かべて言ったのだ。
 
「さっき、シューニャが……。皇帝陛下がここで食事をされるって……。わ、わたし……」

 そう言ってガタガタと震えだしてしまったのだ。そして、ジークフリートの服をぎゅっと握った後に、涙の膜が張った瞳で言ったのだ。
 
「わたし、リートさまが好きです。リートさまだけが好きなんです。こんな我儘を言ってごめんなさい。でも、わたし、リートさまと離れたくないです。ずっとお傍に居たいです。片時も離れたくないです。リートさまを愛しています」

 そう言って、美しい涙を零していたのだ。
 それを見たジークフリートは、ミリアリアを膝の上に跨がせるように乗せた後に、その泣き顔をそっと両手で包み込んでから、キスで涙を拭ったのだ。
 
「俺もミリアリアを愛している。俺の方こそ片時も離れたくない。ミリアリアが許してくれるのなら、仕事中だって俺の腕の中にいて欲しいくらいだ」

 そう言って、キスの雨を降らせたのだ。
 最初は目尻に。そして、瞼、額、蟀谷、頬。
 ジークフリートの唇は、ゆっくりとミリアリアの顔を移動して、最後にはその小さく柔らかい唇にたどり着いていた。
 最初は触れるだけの優しいキスを繰り返す。
 ミリアリアの緊張が少し解けたところで、その小さな下唇を自身の唇で食んで見せたのだ。
 それに驚いたミリアリアが唇を小さく震わせていると、それをなだめるようにジークフリートは、下唇をゆっくりと味わうように舐めたのだ。
 まさかそんなことをされるとは思っていなかったミリアリアは、どうしていいのか分からずに、縋るようにジークフリートの上着を握りしめていた。
 それに気が付いたジークフリートは、少し残念そうな表情をしながら、チュッと音を立ててから唇を離していた。
 そして、自分の服をきつく握るミリアリアの小さな手を包み込むように握った後に、ミリアリアの手の甲に口付けを落としていた。
 
「驚かせてごめんな? ゆっくり進めていこうな?」

 何をゆっくり進めていくのかを理解していないミリアリアだったが、艶やかに色づく紫の瞳に抗うことも出来ず、ゆっくりと頷いていた。
 
「は…い」

「うん。ありがとう。それで、ミリアリアは、何を怖がっているのか教えてくれるか?」


しおりを挟む
感想 182

あなたにおすすめの小説

[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。 魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。 でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。 その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。 ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。 え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。 平凡で普通の生活がしたいの。 私を巻き込まないで下さい! 恋愛要素は、中盤以降から出てきます 9月28日 本編完結 10月4日 番外編完結 長い間、お付き合い頂きありがとうございました。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人
恋愛
精霊の加護を受け、普通の人には見る事も感じる事も出来ない精霊と、会話が出来る少女リディア。 聖女として各地の精霊石に精霊の力を込め、国を災いから守っているのに、突然第四王女によって追放されてしまう。 暫くは精霊の力も残っているけれど、時間が経って精霊石から力が無くなれば魔物が出て来るし、魔導具も動かなくなるけど……本当に大丈夫!? 一先ず、この国に居るとマズそうだから、元聖女っていうのは隠して、別の国で趣味を活かして生活していこうかな。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

今宵、薔薇の園で

天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。 しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。 彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。 キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。 そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。 彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

処理中です...