錬金術師の恋

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
3 / 71
第一部

第3話 職業適性検査

しおりを挟む
 職業適性検査は、専用の用紙に血を一滴垂らすことで、その人の適正にあった職業が用紙に浮かび上がるというものだ。
 
 この世界の文字が読めるのかと、微妙な気持ちでいたときに、ローブの人が召喚される際にこの世界で生きて行く上で必要なものがいろいろ付与されると説明してくれたことを思い出した。
 それなら少しは安心できるかな?
 必要なものとは、つまり言葉や文字のことだろう。
 如何にも言葉が通じなさそうな世界でも、意思疎通は問題なくできていることで私はそう納得したのだ。

 適性検査をするために、私達が召喚された場所から近くにあるという屋敷へ案内された。
 その途中で先ほどの、第一王子の説明にあった力あるものについても、教えてくれた。

 職業適性検査で、聖女、結界術師、勇者、賢者と浮かび上がったものに力を借りたいということらしい。
 聖女や、結界術師はなんとなくわかる。
 勇者や賢者はどんな役割があるのだろう?
 そんなことを考えていると、検査を終えたクラスメイト達が自分の職業についてさまざまな表情をしている。
 ほとんど、嬉しそうな顔だ。他は、困惑?

 そんなことを思っていると、私の番が来た。

 指先に針を指して、血を専用の用紙に一滴垂らす。
 そうすると、その血が用紙にじわじわと拡がった後に文字が浮かび上がってきた。
 ローブの人が言ったように私にも書かれている文字が読めた。

【錬金術師※※※】

 ん?錬金術師の後に文字化け?汚れ?何かのシミが浮かび上がったと思ったらすぐに消えてしまった。
 何だったんだろう?

 クラス全員の検査が終わると、聖女、結界術師、勇者、賢者が浮かんだ5人とそれ以外で別々の部屋に通された。

 案内された部屋でクラスメイトの顔を眺めると東堂駆の姿もあった。
 全員が用意された椅子に座ったところで私たちを案内したローブの人がこれからについて話をしたいと言ってきた。

「あなた達には、これからのことを選択していただきたい」

 そう言って、ローブの人が話し始めた。

「この屋敷に留まり生活をする場合、我々が一生の面倒を見ます。ただし、我々が今後困難な状況のなった時、助けていただくことが条件です。城に上がっていただく場合も同様です。ただし、屋敷に留まる場合と違って、検査結果に基づいた職についていただき、働きに応じて給金が出ます。最後は、どこにも属さずに市井で暮らすこと。この場合、向こう3年の生活費を支給します。ただ、他の二つと違い自由に生活していただけますが一生安泰に暮らせるという保証がありません。どの選択をされても、この世界で暮らすに問題ない知識を得ていただいてからとなるのでご安心ください」

 そう言って、ローブの人がにこりと笑った。
 私にはそう見えたのだ、ローブの人はかぶっているフードの所為で口元しか見えていないのだから、本当に、にこりとしたかは分からない。
 でも、私にはにこりと笑ったように見えたのだ。

 なんとなくどの選択をしても大丈夫な気がしてきた。
 なら、私の選択は一つしかないよね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

婚約破棄された没落寸前の公爵令嬢ですが、なぜか隣国の最強皇帝陛下に溺愛されて、辺境領地で幸せなスローライフを始めることになりました

六角
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、王立アカデミーの卒業パーティーで、長年の婚約者であった王太子から突然の婚約破棄を突きつけられる。 「アリアンナ! 貴様との婚約は、今この時をもって破棄させてもらう!」 彼の腕には、可憐な男爵令嬢が寄り添っていた。 アリアンナにありもしない罪を着せ、嘲笑う元婚約者と取り巻きたち。 時を同じくして、実家の公爵家にも謀反の嫌疑がかけられ、栄華を誇った家は没落寸前の危機に陥ってしまう。 すべてを失い、絶望の淵に立たされたアリアンナ。 そんな彼女の前に、一人の男が静かに歩み寄る。 その人物は、戦場では『鬼神』、政務では『氷帝』と国内外に恐れられる、隣国の若き最強皇帝――ゼオンハルト・フォン・アドラーだった。 誰もがアリアンナの終わりを確信し、固唾をのんで見守る中、絶対君主であるはずの皇帝が、おもむろに彼女の前に跪いた。 「――ようやくお会いできました、私の愛しい人。どうか、この私と結婚していただけませんか?」 「…………え?」 予想外すぎる言葉に、アリアンナは思考が停止する。 なぜ、落ちぶれた私を? そもそも、お会いしたこともないはずでは……? 戸惑うアリアンナを意にも介さず、皇帝陛下の猛烈な求愛が始まる。 冷酷非情な仮面の下に隠された素顔は、アリアンナにだけは蜂蜜のように甘く、とろけるような眼差しを向けてくる独占欲の塊だった。 彼から与えられたのは、豊かな自然に囲まれた美しい辺境の領地。 美味しいものを食べ、可愛いもふもふに癒やされ、温かい領民たちと心を通わせる――。 そんな穏やかな日々の中で、アリアンナは凍てついていた心を少しずつ溶かしていく。 しかし、彼がひた隠す〝重大な秘密〟と、時折見せる切なげな表情の理由とは……? これは、どん底から這い上がる令嬢が、最強皇帝の重すぎるほどの愛に包まれながら、自分だけの居場所を見つけ、幸せなスローライフを築き上げていく、逆転シンデレラストーリー。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!

永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手 ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。 だがしかし フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。 貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

処理中です...