錬金術師の恋

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
40 / 71
第二部

第40話 勘違い

しおりを挟む
 騎士達を引きずった姿で、二人が登場した。二人に引きずられた騎士達は、「勘弁してよ」「いい加減にして欲しい」「巻き込まないで欲しい」と悲壮な表情で何やらぶつぶつ言っていた。

「第二王子、俺達のこと分かっていて掻きまわすのはやめていただきたい」
「いったいなんのことかな?」
「この、腹黒」
「アル!一人だけずるいよ」
「いや~、面白いことは全力で!が私の信条なので」
「アルの腹黒王子」

 何やら、三人は揉めているようだけどなんで揉めているか分からないわ。そこで、テーブルの上のクッキーに気が付いた。このクッキーはまだ、試作中の特別製のクッキーで、二人には出したことがないものだった。これは、二人にプレゼントしようと思い、アル様に試食をお願いしていたものなのよ。

「二人とも、ごめんなさい。わたし、アル様にだけ特別(製のクッキー)を上げてしまって。でも、どうしてもアル様に最初に私の(作った)特別(製のクッキー)を上げたかったの。二人には、黙っていてごめんなさい。でも、(プレゼントのことは)秘密にしようってアル様が……。でも知られてしまったからには、話すわ」

 そう言ったろころ、鬼のような形相で二人はアル様に掴みかかった。

「おまっ!小春を食ったのかよ!!俺たちに隠れてこそこそと!!」
「だから、小春さんは僕達に彼女とか言ったの?アル、どうして?僕達の気持知っていたでしょう?」
「ちょっ、まっ、二人とも落ち着いて、私が食べたのは、ハルちゃんの」
「ここで、小春の艶話でもする気か!くそが!」
「ひどいよ!アルの裏切り者!」

 まずいわ、食べ物の恨みはここまで恐ろしいものだったなんて……。もう、プレゼントとか言ってられない。二人にもクッキーを食べてもらって、落ち着いてもらわないと!

「二人とも、落ち着いて!そんなに食べたいなら食べていいから!!」

 私が二人にそう言ったとたん、ゆっくりと二人は私のことを見た。えっ?なんか怖いんですけど?

「ハルちゃん。今は不味い。迂闊なことは獣を解き放つだけだよ!」

 は?けもの?アル様は一体どんなペットを飼っているというの?
 そんなことを考えていると、駆君とタイガ君にサンドイッチの具にされてしまった。

「けほ、苦しいし、暑いよ。これじゃ食べられないよ?」
「ごめんなさい。でも、今はこうしていたいんです。」

 そう言って、後ろから覆いかぶさるように抱きついていたタイガ君が謝った。そして、正面から抱きついていた駆君は、何も言わず顔を近づけてきた。
 近っ!近い近いから!
 駆君の接近に焦っていると、タイガ君の抱きつく腕に更に力が入ったと思った瞬間だった。

 二人は私の首を噛んだのだ。私は、左右から首を噛まれたことがショックで涙がこぼれた。
 だって、私に噛みつくくらい食べ物に飢えていたなんてショックでしかない。今まで、お腹一杯になるように、ご飯を作っていたけど、あの量じゃ足りなかったんだね。きっと、私に気を使って、お腹が空いていても我慢していたんだね。
 そんなことを考えている間も、二人は私の首を噛み続けた。このまま、噛み切られて死んでしまうなんて、食べ物の恨みは怖すぎるわ。
 いち早くフリーズを解除したアル様が慌てた様子で、二人を私から引き剥がした。

「二人ともストップ。勘違いだから!ハルちゃん泣いてるから!」

 私は、二人に噛まれたショックから立ち直れずに腰を抜かしたまま、ふらふらとへたり込んだまま動けなかった。
 ただ、騎士達に動きを止められている駆君とタイガ君を見つめることしかできなかった。
 二人は、そんな私を見てはっとした表情になって声を掛けてきた。

「悪い。カッとなった」
「ごめんなさい。僕、なんてひどいことをしてしまったんだ」

 二人の沈んだ表情を見ていたら、少しずつ頭が働いてきた。

「謝ることなんてないから。悪いのは私だから。二人に黙って、アル様と……」

 そこまで言って、また涙が出てしまい言葉に詰まってしまった。

「そうか、第二王子と……」
「小春さん……」

 二人は、辛そうな顔をしてそうつぶやいた。そんなに、クッキーを試食出来なかったことが辛いだなんて、二人に隠れてお菓子作りをするのはもうやめよう。これからは二人にも相談しながらお菓子を作ろう!だって、二人は食べるのが大好きなんだものね。
 悲壮感漂う私達。これ以上何も言えずに見つめあっていた。

「ストーーーップ!!勘違いだから!!私が、食べたのは、小春さんじゃなくて、クッキーだから!!二人にプレゼントするためのクッキーの試食を頼まれていたんだ!!テーブルに置いてあるだろう!!!」

 アル様は、いまさら何を言っているんだろう?

「「クッキー?」」

 二人はそう言った後、テーブルに視線を動かした後に、また私を上から下、下から上と見まわした後に何故か顔を真っ赤にさせた。

「ごめん!小春。俺が悪かった!」
「小春さん!ごめんなさい!!」

 二人に、もう一度謝られた。どうしたんだろう?試作だったと分かって安心してくれたってことかな?

「いいの。そうだよね。食べ物の恨みって怖いって話忘れていたわ。もう、二人に黙って他の人に試食をお願いしたりしないわ。これからは、二人に最初に食べてもらうから安心して」
「「…………」」

 あら?二人だけじゃなく、その場にいた全員が何だか微妙な表情をしていた。更には、アル様や騎士達は、駆君とタイガ君を哀れむような何とも言えない顔で見ていた。
 駆君と、タイガ君は微妙に光が消えた暗い目で「わかった」とだけ言ってくれたけど、何か返答を間違ったかしら?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

対人恐怖症のメンダーと辺境の騎士 ~この恋は、世界のほころびを繕う~

Moonshine
恋愛
辺境の地・ディトマスの第6要塞の制服管理課で、一人の働く女の子がいた。 彼女の名前はドルマ。仕事はこの要塞で働く騎士達の制服の繕い物だ。 ドルマは対人恐怖症で誰とも話をしない。だがドルマが繕った制服を纏うと、ほんの少しだけ戦闘の時に運が良くなると騎士達の間で評判なのだ。 辺境の防衛責任者として、毎年多くの犠牲者に胸を痛めていた辺境伯の息子・マティアスは、第6要塞にはその年一人も犠牲者が出ていない事に着目して、覆面調査を始める。 小さな手仕事が紡ぐ、静かな恋物語。

巻き込まれて死亡?!神様、責任とってくださいね?

紅子
恋愛
新作のゲームの為に創った魔法陣に魅入られた神様の眷族のせいで、死んじゃった私。別の世界で残りの生を消化しないと、永遠を流離うって、酷くありませんか?剣と魔法の世界で生き残るなんて出来る気がしません。私、一見、平和そのものなあの世界の住人ですよ?原因を作った眷族をつけてくれる?それなら、なんとか・・・・?はぁ、永遠を流離うくらいなら、眷族と一緒になんとか生き残れるように頑張ります! 毎日00:00に更新します。 完結済み R15は、念のため。 自己満足の世界につき、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...