錬金術師の恋

バナナマヨネーズ

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第二部

第71話 解放

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 私のイメージした通りに、要石が光の粒子となり風に消えて行った。
 そして、私たちに語りかけていた影も薄れて行った。

 ―――これで、俺は自由になったんだな。心が軽い。ああ、市、猿、ミツ……。すまなかった。叶うなら、風となり、この世界を見守ってみたい―――

 そう言ったと思ったら、声は小さくなり、聞こえなくなった。影も完全に消えていた。
 私は、信長さんが美味といった【幸福のワイン】を要石のあったところに向かって振りかけた。
 信長さんの新しい旅路が幸福な物であるように祈りながら、持ってきたすべてのワインを周辺にかけまくった。
 全部の瓶を空けた時、遠くから、「これほど素晴らしい酒を振る舞われながらの出立、悪くないな」と聞こえた気がした。
 信長さん、喜んでくれたみたいで良かった。

 そう思って、駆君とタイガ君の方を向くと、二人はあっけにとられた顔をしていた。

「ん?どうしたの?鳩が豆鉄砲でも食らったかのような顔をしているよ?」

 私がそう言うと、二人は苦笑い気味にこう言った。

「まさか、こんな簡単に解決して見せるなんて思わなかったからな」
「そうですね。こんなにあっさりと解決してしまうだなんて、思いもよりませんでしたよ」
「あはは。でも、どんなに怒っていても、いつかは治まるものだよ?信長さんは、それが人より長かっただけだよ」
「そう、だな」
「そうですね。これで、ステイル聖王国は魔の森の恐怖から解放されたんですね。でも、このことは誰にも言えませんね」
「えっ?報告する気なんて最初からなかったけど?」
「「えっ?」」
「だって、ご先祖様の恥ずかしい話しなんて言いたくないもん。だからこれは、私達だけの秘密だよ。だから、私達は今日、ここには来ていないし、魔の森が、もうただの森だってことも旅行中だから知らないからね?」

 つまり私は、しらばっくれようと二人を唆しているわけなのです。だって、本当にこんなこと他の人には言えないから。
 知らぬが仏って言うでしょ?

「くくっ。流石は俺の小春だな。了解した。それで、改めてどこに旅行に行くんだ?」
「ふふふ。小春さんは、やっぱり最高の僕の可愛い人ですね。魔の森の脅威もなくなったことですし、気ままに世界を旅するのでもいいかもしれませんね」
「気ままな旅か。良いわね」
「はは、安定のスルーっぷり。流石小春」
「そうですね。この旅の間に、もっとアピールをしていかないと気づいてすらもらえないかもですね。駆、負けないからね」
「ああ、俺も遠慮はしないからな」

 私が、行き先について想いを巡らせている間に、二人の間で何か話し合いがされていたけど、そんなことはどうでもいいわ。
 今は、この自由な空の下、どこに行くかが最重要案件なんだからね。

「小春!」
「小春さん!」
「どうしたの?」
「「大好きだよ」」
「ん?変な二人。私も二人のこと家族みたいに思ってるよ?」
「はぁ。前途多難」
「うん。でも、伝わるまで頑張るだけだよ」

 うん。三人一緒なら楽しい日々がこれからも続く、そんな気しかしないよ。



 その後、ステイル聖王国は魔の森だったた森を切り開き、街を広げ、一人の錬金術師が考案した料理や生活用品を元に、交易を広げさらなる発展を遂げたのはまた別のお話。

 そして、異世界から召喚された錬金術師を中心とした、少年少女の恋の行方がどうなったのかは、三人のみぞ知る。



『錬金術師の恋』 おわり
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みんなの感想(1件)

ちびたん
2020.08.05 ちびたん
ネタバレ含む
2020.08.05 バナナマヨネーズ

ちびたん様
お読みいただきありがとうございます。
今作のメインヒーローその1は、ある意味初恋をこじらせたげふんげふん。
主人公と二人のヒーローはそれぞれ秘密を抱えていたりします。
伏線をばらまきつつ進行していきますので最後までお付き合いいただけると嬉しいです(*´ω`*)

解除

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