9 / 40
第九話
しおりを挟む
ラヴィリオ皇子殿下の話を聞きながら馬車に揺られているうちに、いつの間にか皇城に着いていた。
「着いたよ。さあ、ティアリア行こうか。うん。ちょっと失礼するよ」
そう言ったラヴィリオ皇子殿下が、わたしの手をきゅっと握ったと思ったら、次の瞬間体がふわりと浮いたように感じた。
驚いていると、わたしの頭上からラヴィリオ皇子殿下の声が聞こえてきて、わたしの今の状態がとんでもないことになっていることに気が付いてしまった。
「軽い……。あっ、ごめんね。でも、俺は花嫁殿をドロドロに甘やかして大切にしたいんだ。だから、大人しく抱っこさせてね?」
だ……抱っこ……。
だだだだだだ抱っこぉぉぉぉぉ!!!
確か、抱っことは恋人同士がイチャイチャするときにやるアレよね?
まさか抱っこされるとは思っていなかったわたしは、完全に体がカチコチに固まっていた。
わたしを軽々と抱き上げたラヴィリオ皇子殿下の逞しい腕を背中と、膝裏に感じたわたしは多分ベールで隠れて見えないと思うけど、確実に赤くなっている顔を両手で覆っていた。
そんなわたしの様子を見ていたのだろう、ラヴィリオ皇子殿下はくすりと笑ってまたしても軽い調子で言うのだ。
「ああ、俺のお嫁さんはなんて可愛いんだ。好き。好きだよティアリア」
なんとなくこの言葉は本心な気がした。
だって、ラヴィリオ皇子殿下の胸の鼓動は凄くドキドキと大きな音がしていたのだもの。
好意の現われのようなその音がもっと聞きたくなったわたしは、無意識に彼の胸に顔を埋めていた。
その鼓動を確かめるようにラヴィリオ皇子殿下の胸に手を当てて、優しい鼓動に聴き入る。
そうしていると、鼓動はドンドン速く、大きくなっていったわ。
「くぅ~~。駄目だ俺、ティアリアは無意識。そんな気は全然ないんだから、勘違いしたら駄目だ。耐えろ俺」
わたしの頭上で何かをぶつぶつ呟くラヴィリオ皇子殿下だったけど、すぐにいつもの様子に戻っていた。
「ティアリア。最初に用意した部屋に案内するね。そこで身支度を整えた後に父上に挨拶に行こう」
身支度!
駄目……。すぐに断らないと。ああ、でも皇帝陛下にご挨拶するのに今のわたしの格好は相応しくないことは分かっているけど……。
どうしよう……。
「ティアリア? 大丈夫だ。信頼のおける侍女を付けるから。だから大丈夫。ここは、君に酷いことをする者はいない。俺がそんなこと絶対に許さないから。だから大丈夫」
怖い声になったのは一瞬で、いつもの軽い調子に戻ったラヴィリオ皇子殿下は、そう言ってぎゅっとわたしのことを抱きしめてくれた。
それでも、怖いものは怖かった。
ラヴィリオ皇子殿下に抱っこされたまま案内された部屋は、とても広い部屋だった。
ソファーに優しく降ろされたわたしは、こんな広すぎる部屋に居心地の悪さを感じていた。
そんなわたしに気が付いたラヴィリオ皇子殿下は、楽しそうに言うの。
「大丈夫。そんなに緊張しないで? あっ、お茶とお菓子も用意させるね。ああ、来たね」
ラヴィリオ皇子殿下がそう言うのと同時に扉がノックされた。
「入って」
入室を許された誰かは、音もなく静かな仕草で入室してきて言ったわ。
「失礼いたします。皇子殿下。ローザ・シュニッツァ参りました。これから、王女殿下に誠心誠意お仕えいたします。王女殿下、ローザと申します。何なりとお申し付けください」
丁寧な口調でそう言った女性は深々と頭を下げる気配を感じたわたしはどうしていいのか分からなかった。
未だかつてこんなに丁寧な仕草で挨拶なんてされたことがなかった。
わたしをここまで連れてきてくれた男性。ジーン様も丁寧な感じだったけど、その比ではなかった。
わたしが戸惑っていると、ローザ様が優しく、それでいて有無を言わせない口調で言ったの。
「では、皇子殿下は自室でお待ちくださいませ」
「なっ! 嫌だ! 俺はティアリアと離れたくない!」
「駄目ですよ。皇子殿下。これから、王女殿下には身支度をしていただくのですから、男性は退室願います」
「……。わかった……。だが、これだけは譲れない。ティアリアの衣装は、薄桃色で頼む。それと、フリルが付いていて裾がふんわりとしているものを希望する。それと、絶対にツインテールで頼む!!」
今までの軽い調子が嘘のような真剣な声音で言い放たれた内容にわたしは頭を傾げていた。
ついんてーるってなんのことかしら? 二つの尻尾? でも、ラヴィリオ皇子殿下の感じからとても重要な何かなことは理解できたわ。
うん。この身に何が起きても受け入れよう。
「着いたよ。さあ、ティアリア行こうか。うん。ちょっと失礼するよ」
そう言ったラヴィリオ皇子殿下が、わたしの手をきゅっと握ったと思ったら、次の瞬間体がふわりと浮いたように感じた。
驚いていると、わたしの頭上からラヴィリオ皇子殿下の声が聞こえてきて、わたしの今の状態がとんでもないことになっていることに気が付いてしまった。
「軽い……。あっ、ごめんね。でも、俺は花嫁殿をドロドロに甘やかして大切にしたいんだ。だから、大人しく抱っこさせてね?」
だ……抱っこ……。
だだだだだだ抱っこぉぉぉぉぉ!!!
確か、抱っことは恋人同士がイチャイチャするときにやるアレよね?
まさか抱っこされるとは思っていなかったわたしは、完全に体がカチコチに固まっていた。
わたしを軽々と抱き上げたラヴィリオ皇子殿下の逞しい腕を背中と、膝裏に感じたわたしは多分ベールで隠れて見えないと思うけど、確実に赤くなっている顔を両手で覆っていた。
そんなわたしの様子を見ていたのだろう、ラヴィリオ皇子殿下はくすりと笑ってまたしても軽い調子で言うのだ。
「ああ、俺のお嫁さんはなんて可愛いんだ。好き。好きだよティアリア」
なんとなくこの言葉は本心な気がした。
だって、ラヴィリオ皇子殿下の胸の鼓動は凄くドキドキと大きな音がしていたのだもの。
好意の現われのようなその音がもっと聞きたくなったわたしは、無意識に彼の胸に顔を埋めていた。
その鼓動を確かめるようにラヴィリオ皇子殿下の胸に手を当てて、優しい鼓動に聴き入る。
そうしていると、鼓動はドンドン速く、大きくなっていったわ。
「くぅ~~。駄目だ俺、ティアリアは無意識。そんな気は全然ないんだから、勘違いしたら駄目だ。耐えろ俺」
わたしの頭上で何かをぶつぶつ呟くラヴィリオ皇子殿下だったけど、すぐにいつもの様子に戻っていた。
「ティアリア。最初に用意した部屋に案内するね。そこで身支度を整えた後に父上に挨拶に行こう」
身支度!
駄目……。すぐに断らないと。ああ、でも皇帝陛下にご挨拶するのに今のわたしの格好は相応しくないことは分かっているけど……。
どうしよう……。
「ティアリア? 大丈夫だ。信頼のおける侍女を付けるから。だから大丈夫。ここは、君に酷いことをする者はいない。俺がそんなこと絶対に許さないから。だから大丈夫」
怖い声になったのは一瞬で、いつもの軽い調子に戻ったラヴィリオ皇子殿下は、そう言ってぎゅっとわたしのことを抱きしめてくれた。
それでも、怖いものは怖かった。
ラヴィリオ皇子殿下に抱っこされたまま案内された部屋は、とても広い部屋だった。
ソファーに優しく降ろされたわたしは、こんな広すぎる部屋に居心地の悪さを感じていた。
そんなわたしに気が付いたラヴィリオ皇子殿下は、楽しそうに言うの。
「大丈夫。そんなに緊張しないで? あっ、お茶とお菓子も用意させるね。ああ、来たね」
ラヴィリオ皇子殿下がそう言うのと同時に扉がノックされた。
「入って」
入室を許された誰かは、音もなく静かな仕草で入室してきて言ったわ。
「失礼いたします。皇子殿下。ローザ・シュニッツァ参りました。これから、王女殿下に誠心誠意お仕えいたします。王女殿下、ローザと申します。何なりとお申し付けください」
丁寧な口調でそう言った女性は深々と頭を下げる気配を感じたわたしはどうしていいのか分からなかった。
未だかつてこんなに丁寧な仕草で挨拶なんてされたことがなかった。
わたしをここまで連れてきてくれた男性。ジーン様も丁寧な感じだったけど、その比ではなかった。
わたしが戸惑っていると、ローザ様が優しく、それでいて有無を言わせない口調で言ったの。
「では、皇子殿下は自室でお待ちくださいませ」
「なっ! 嫌だ! 俺はティアリアと離れたくない!」
「駄目ですよ。皇子殿下。これから、王女殿下には身支度をしていただくのですから、男性は退室願います」
「……。わかった……。だが、これだけは譲れない。ティアリアの衣装は、薄桃色で頼む。それと、フリルが付いていて裾がふんわりとしているものを希望する。それと、絶対にツインテールで頼む!!」
今までの軽い調子が嘘のような真剣な声音で言い放たれた内容にわたしは頭を傾げていた。
ついんてーるってなんのことかしら? 二つの尻尾? でも、ラヴィリオ皇子殿下の感じからとても重要な何かなことは理解できたわ。
うん。この身に何が起きても受け入れよう。
10
あなたにおすすめの小説
大嫌いな従兄と結婚するぐらいなら…
みみぢあん
恋愛
子供の頃、両親を亡くしたベレニスは伯父のロンヴィル侯爵に引き取られた。 隣国の宣戦布告で戦争が始まり、伯父の頼みでベレニスは病弱な従妹のかわりに、側妃候補とは名ばかりの人質として、後宮へ入ることになった。 戦争が終わりベレニスが人質生活から解放されたら、伯父は後継者の従兄ジャコブと結婚させると約束する。 だがベレニスはジャコブが大嫌いなうえ、密かに思いを寄せる騎士フェルナンがいた。
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。
その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。
婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。
孤独な結婚生活を送る中。
ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。
始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。
他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。
そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。
だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。
それから一年ほどたった冬の夜。
カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。
そこには彼の想いが書かれてあった。
月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。
カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。
※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。
※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。
稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
【完結】余命半年の元聖女ですが、最期くらい騎士団長に恋をしてもいいですか?
金森しのぶ
恋愛
神の声を聞く奇跡を失い、命の灯が消えかけた元・聖女エルフィア。
余命半年の宣告を受け、静かに神殿を去った彼女が望んだのは、誰にも知られず、人のために最後の時間を使うこと――。
しかし運命は、彼女を再び戦場へと導く。
かつて命を賭して彼女を守った騎士団長、レオン・アルヴァースとの再会。
偽名で身を隠しながら、彼のそばで治療師見習いとして働く日々。
笑顔と優しさ、そして少しずつ重なる想い。
だけど彼女には、もう未来がない。
「これは、人生で最初で最後の恋でした。――でもそれは、永遠になりました。」
静かな余生を願った元聖女と、彼女を愛した騎士団長が紡ぐ、切なくて、温かくて、泣ける恋物語。
余命×再会×片恋から始まる、ほっこりじんわり異世界ラブストーリー。
竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」
ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。
竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。
そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。
それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。
その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた!
『ママ! 早く僕を産んでよ!』
「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」
お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない!
それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――!
これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。
設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる