船長に好かれすぎて困っています。

バナナマヨネーズ

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第十六話 買い物①

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 数時間後、ウィリアムとユリウスが待っていた一室に現れた春虎は、憔悴しきった声で戻ったことを伝えた。

「ただいま戻りました……」
「えっと、大丈夫か?凄く疲れた顔をしているが?」
「何も言わないで下さい……」
「そうか……」

 心配をして声を掛けてくるウィリアムには悪いと思いつつも、これ以上心の傷を広げたくないと思い、言葉少なく返した。
 何があったのか心配しつつも、春虎の心情を考え別の話題を振ることにしたユリウスは、いつもよりも優しい声音で話しかけた。

「そうだ、お前を待っている間に話していたんだが、三日で準備を整えて、地図の島に向かうことになったから、明日から忙しくなるぞ」

 ユリウスの言葉を聞いた春虎は、表情を明るくした。その表情を見て安心したユリウスは、無意識に春虎の頭を撫でて、優しい表情をした。
 春虎は、ユリウスの気遣いに気が付き感謝の気持ちを込めて、返事をした。

「はい!」

 そんな、二人の何気ないやり取りを見ていたウィリアムは何故か胸がもやもやとした。

(なんだ?腹でも減ったのか?変だな?なんかもやもやするな……。確か前にもこんなことがあったような?どうしたんだ俺は?)

 そんなことを考えつつ、城を後にした。


 ◆◇◆◇



 次の日、春虎はユリウスに連れられて服屋に来ていた。ただし、ウィリアムも付いて来ていた。ウィリアム曰く、「監督役が必要だろう?」とのことだった。
 ユリウスは、「何に対しての監督だ!」とウィリアムを船に戻そうとしたが、何としても付いていくというウィリアムに負けて一緒に行動することになったのだった。

 服屋に着くと、春虎はサイズの合う安い服を見繕って買い物を終了しようとした。

「副船長、これでいいです」
「これって……」
「何ですか?」
「いや、もうちょっとだな」
「別に、サイズが合っていれば何でもいいですし、別に組み合わせも悪くないと思いますが?」
「ああ、そうなんだが。全部地味すぎじゃないか?」
「?」
「ほら、これとかどうだ?」

 地味目だが、シンプルなシャツとハーフパンツを数組持った春虎は、ユリウスに差し出された色鮮やかな紅い腰布を見比べた。

「組み合わせても問題なさそうですが、別にこれだけで良いです」

 ユリウスは断られてしまった布を元に戻そうとしたが、その布をウィリアムが横から奪って行った。

「ハルトラ、海の男は恰好にも気を使って、常に紳士でいなければならない。なので、もう少しお洒落に気をつかう必要があると俺は思うぞ」

 ウィリアムにそう言われて、彼はいつもお洒落だったなぁ、と春虎は思った。しかし、ユリウスはお洒落というよりは、実用性重視の恰好で、他のクルーに至ってはいつも同じような服装で、お洒落とは言い難い。

「船長……。船で服装に気を使っているのは船長だけだと思います。なので、これだけでボクは十分です」
「だめだ!!」
「どうしたんですか?」
「おい、ウィル?お前変だぞ」
「べっ、別に俺は変じゃない。ということで、これをやる」

 そう言って、春虎に大きめの包みを渡した。そして、春虎が手に持っていた購入予定の服を奪って元の場所に戻し始めた。

「えっ、船長困ります。ボクはそれを買うつもりで―――」
「服は、俺がさっき全部選んでおいた。これからはそれを着ろ。これは、うちの船に入った祝いのプレゼントだ」
「えっ?」
「はぁ?」

 思わぬウィリアムの行動に、春虎とユリウスは戸惑った声を上げた。
 ユリウスは、ウィリアムに近寄りどういうつもりか問い詰めた。

「おい、今まで新人にこんな事したことないだろう?どういうつもりだ?」
「別に、そういう気分だったんだよ」
「いやいや、ないから。おい、もしかして提督が服を贈ったこと本気で気にしてたのかよ……」
「そ、そんなんじゃないし……」
「はぁ、これはもう、手遅れなのか……」
「なにがだよ」
「いや、まだそうと決まった訳じゃないか」
「だから、何がだよ」
「はぁ」

 二人が言い合っている間、どうしていいのか分からず様子を窺っていた春虎は、おずおずと声を掛けた。

「あの……」
「すまない。それは、日ごろ旨いものを作ってくれる事に対しての、感謝の気持ちだ。受け取ってくれ。見ればわかると思うが、ウィルは見た目だけはいいからな、センスは間違いない」
「でも、食事を作るのは仕事ですし」
「いや、仕事だとしても、お前の料理は旨いからな」
「そうそう、ハルトラの飯は旨い!!一生食いたいと俺は本気で思ってるぞ!!」
「そう言うことで、受け取っておけ」

 春虎は、困惑しつつも二人の、特にウィリアムの勢いに押されて受け取ることにした。
 二人に、仲間だと言ってもらえて嬉しい気持ちが大きく、いつもは押さえている感情が溢れそうになり、受け取った包みをギュッと抱きしめて気持ちを落ち着かせた。
 元の世界では、感情を抑えることは何と言うことはなかったが、こっちに来てからは、ふとしたことで、感情が動いてしまうようになって、春虎は戸惑っていた。

(どうしたんだろう、こっちに来てから直ぐに心が動く。でも、船長達と過ごした時間は短いけど、仲間と思ってくれたり、私の作ったご飯を美味しいと言ってくれることが素直に嬉しい)

 ウィリアムは、包みを大切そうに抱きしめた春虎の姿に、心の底から何かが溢れるのを感じていた。
 その感情がなんなのか、この時のウィリアムには分からなかったが、とても温かい気分で悪い気はしなかった。
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