船長に好かれすぎて困っています。

バナナマヨネーズ

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第十七話 買い物②

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 なんやかんやあったものの、無事に服を買うことが出来た三人は、このまま航海のための物資を購入する為、商店街を回ることにした。

 そこで、食材や魔道技術を使用するのに必要な魔道燃料、医療品といった物を購入し、船に届けてもらうように手配をしていった。

 食料以外のことは、全く分からなかった為、春虎はただ二人についていった。
 二人について回っていると、ここが別の世界だと改めて実感した。
 特に、魔道屋と呼ばれる魔道技師の店は不思議な物で溢れていて、いつもは感情を抑えるように努めている春虎ではあったが、興奮を抑えるのに苦労したほどだった。
 中でも、魔道燃料の元になる魔石の数々の美しさに心を惹かれたのだった。
 魔石を興味津々に眺めている春虎に、魔道屋の主人は楽しげにいろいろと教えてくれたのだった。
 主人によると魔石とは、魔力を持った動植物の死骸が結晶化したもので、さらにその結晶化した物を、研磨師が独自の技術で磨き上げた物が最上級の魔宝石と呼ばれるようになると。また、魔道技術の燃料として使用されるのは、動植物の死骸が結晶化した物の方だということも教えてくれた。

 夕暮れ前には、すべての物資の手配を終えたため、ウィリアムの提案で、三人で夕食を食べて帰ることになった。

 向かったのは、二人の行きつけの店だった。
 店内には、同業者と思われる人たちで溢れていた。
 慣れた様子で、席に着いたウィリアム達に、酒を片手に近づいてきた男がいた。

「よう、狼。今日は、ゴツイ嫁以外に、可愛い娘も連れてるんだな」
「あ゙?」

 からかうように話しかけてきた男に、ウィリアムは春虎が今まで聞いたことのないような低い声を出した。

「おいおい、もう怒ったのかよ?」
「――じゃない」
「は?」
「この子は、娘じゃない」
「は?そっちかよ!」
「ついでに言うが、ユーリは嫁じゃない」
「女房役だろ?」
「嫁じゃないし、娘じゃない。食事の邪魔だ。失せろ」
「この!」
「おい、ジョナサン。いい加減にしておけ。あまり、ウィルを怒らせるな」

 ウィリアムに絡んできた男は、ジョナサンと言い事あるごとにウィリアムに突っかかってきていた。
 ゴールデン・ウルフの副船長のユリウスのことをゴツイ嫁と呼び、いつも喧嘩を売ってきていたのだ。
 実は、ジョナサンはドレイクに心酔をしている船乗りの一人で、ドレイクに気にいられているウィリアムとユリウスのことが気にいらないと、いつも突っかかってきていたのだった。
 さらに、ウィリアムとユリウスはまだ25歳という若さで、私掠船の船長と副船長を務めているということもあり、ジョナサンは自分とあまり歳の変わらない二人の立場に嫉妬の炎を燃やしていた。

 いつもは、二人で行動しているが、今日は珍しくもう一人、見たことのない美少年を連れていたので、娘とからかったのだが、いつものウィリアムと今日は様子が違っていた。
 いつもなら、「嫁じゃないし、うるさいからあっちに行け」と、半笑いで返しているところが、今日にいたっては、半切れの状態だった。

「はっ!提督に気にいられているからって、調子に乗りやがって!!」

 そう言って、ジョナサンは拳を振り上げた。
 しかし、その拳はウィリアムに届くことはなかった。
 しかも、その拳を止めたのは、ウィリアムではなかった。
 ジョナサンが拳を振り上げた瞬間に春虎は、ついいつもの要人警護の癖で、間に入り拳を片手で受け流して、その反動を利用して足払いと同時に、ジョナサンを床に転がしたのだった。
 つい、ジョナサンを転がしてしまった春虎は、やってしまったと顔を青くした。
 転がされたジョナサンは、何故自分が床に寝転がっているのか理解できなかった。
 ウィリアムとユリウスも気が付いた時には、ジョナサンが床に寝転がっていた事に驚き、それをしたのが春虎だとは考えもしなかった。
 その場の凍りついた空気を壊したのは、この空気を発生させた原因の春虎だった。

「ご、ごめんなさい!!お怪我は?痛いところは?」

 春虎の謝罪の言葉で、その場にいた者達は現実に引き戻された。
 ただし、ジョナサンはある意味夢を見ているような気持だった。なぜなら、見たことのない珍しい髪色の美少年が、少し涙目になりながら自分のことを心配しているのだから。

「だっ、だいじょうぶだ……」
「本当ですか?無理はしてませんか?」
「いや、こっちが先に手を出そうとしたんだ。悪いのは俺だ。すまなかった」
「いえ、でも……」

 春虎とジョナサンが、そんなやり取りをしていると、ユリウスが間に入ってきた。

「はいはい。それじゃ、お互いに謝りあったってことで、これでおしまいだ。注文した物も届いたし、飯にしよう。ジョナサンも、これに懲りたらもう、突っかかって来るなよ。それに、ウィルも落ち着け」

 春虎は、ジョナサンの方を向いていたため、鬼のような形相のウィリアムの顔を見ていなかったが、ユリウスの言葉でウィリアムの表情を見てしまったジョナサンは顔を青くしてその場を去って行った。
 慌てて去っていくジョナサンを不思議に思っていると、ユリウスは、ため息ながらに言った。

「はぁ、無自覚のようだけど、手遅れみたいだ……」
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