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第八十四話 人はそれを走馬灯と呼ぶのか? 秋護の場合②
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「こんにちは。君もさぼり?ここはお互い様だし、ここだけの話ってことでいいかな?」
先程の視線が嘘だったかのような、穏やかな口調に、混乱した秋護は声も出さずに首を上下に降るだけだった。
しかし、人生それほどイージーモードではなかったようだったのだ。
「なんて、言うと思ったか?お前、存在薄すぎなんだよ。ちっ、この俺がお前のようなゴミクズに……。おい、お前名前と学年、クラスを言え」
副会長の急変に秋護は度肝を抜かれた。
口をあんぐりと開けて、呆ける秋護に、副会長は容赦のないチョップを入れた。
脳天がかち割れて、脳が飛び散ったと秋護は錯覚した。
あまりの痛みに意識が遠くなり、続いて鈍い痛みが襲ってきた。鈍い痛みは次第にじんじんと、熱を持っていった。頭を押さえると、少し瘤になっていた。
この意味不明な状況に、目を白黒させていると、生徒会長が秋護を背にかばって副会長を非難した。
「主様!!やり過ぎです!!記憶を消すならもう少しやりようがあるでしょうが!!」
庇ってくれたはずの生徒会長は、恐ろしいことを言い放った。
(記憶を消す?はっ?何言ってるのこの人?それに、主様?どういうこと?)
混乱した秋護を他所に、今度は生徒会長が容赦のない踵落としを食らっているのが目に入って、秋護は死を覚悟した。
「この駄獣が!ここでは、名字で呼べと言っただろうが。貴様の頭は空っぽのスカスカなのか?ちっ、本当に使えない駄獣だ」
「ひっ、酷いです!!いつもいつも無理難題を言いつけって、幻獣使いの荒いドSめ!!」
「は?」
「ひっ!!!」
二人は、意味のわからないやり取りを始めたため、これがチャンスとばかりに逃げ出そうとしたが副会長はそれを許してはくれなかった。
地面をはって逃げようとした先に、副会長の足が目に入った。
そして、恐る恐る見上げると、笑顔なのに般若のような面影があるそんな器用な表情をした副会長が秋護を見下ろしていた。
「おい、いい度胸だな」
地を這うような恐ろしい声に秋護は声を震わせた。
「いっ、命だけは……」
「取らねぇよ。で、名前と学年、クラスは?」
「はい。朝比奈秋護、2年5組です!!!」
「分かった。朝比奈。今日からお前は俺の犬だ。絶対に逆らうことは許さない。俺が命令すれば、喜んでそれを実行しろ。俺の質問には、はいか、イエスで答えろ。いいな?」
「はい……。副会長様……」
恐怖に引きつった秋護の返事を聞いて、気分を良くしたのか副会長は、ニヤリと黒い笑みを浮かべた。
そんな副会長に、生徒会長が涙目で質問をした。
「あの~。どうして、記憶を消さずに手駒にするんですか?」
(えっ、手駒?)
「あぁ。俺も、今の副会長キャラが面倒になってきててな。発散できる丁度いい下僕が欲しかったところでな」
(えっ?下僕?ストレスの捌け口的な存在なの?)
「なるほど!!流石ゲスですね!!!」
(うん。考え方がゲスいね)
「そうかそうか、後で躾が必要みてぇだな」
「ひっ!!そっ、そんなことを言っていると言いつけますよ!!」
「あ゛?」
「ひぃぃぃ!!」
こうして、秋護はよくわからないまま、性格最悪な副会長の下僕となった。
それから、毎日の様に生徒会室に呼び出され、仕事を無理やり手伝わされ気がつけば生徒会書記として名を連ねる事となった。
またある日、生徒会室には副会長の本性を知る、秋護と生徒会長と副会長本人の三人だけのとき、いつもはゲスいドS野郎の副会長が珍しく落ち込んでいたのだ。
あまりそれに触れると面倒なことになりそうだと、敢えて触れずに雑用をもくもくをこなしていた秋護に、長机に突っ伏していた副会長が、地を這う声で話しかけてきた。
「おい、下僕。どうして何も聞かない」
「……」
「下僕、3秒以内に――」
「副会長、どうしたんですか!!」
最後まで言わせるか!!と、言わんばかりに食い気味に返答した秋護に、副会長は眉を顰めたが、それでもいいやといったように、話し始めた。
「聞いてくれるか後輩」
副会長が、秋護を後輩と呼ぶときは大抵ろくな事がなかった。
嫌な予感がしても、聞かないわけにはいかず、プリントをホッチキスで止める作業をしながら耳を傾けた。
「妹が……」
(はぁ、また妹さんのことか)
副会長は、極度のシスコンを患っていた。
それはもう、ドン引きするほどのだ。
「妹が……、最近一緒に寝てくれなくなったんだ!!寂しい!!寝るときに、あの愛らしい寝顔を見られないことも!!朝起きたときに、一番にその可愛い顔を見られないことも!!!あああ、どうしてだ!!!」
(それだよ。俺が妹さんでも、これはうざい!!っていうか最近までよく妹さん我慢してたな……)
「一緒に寝たい!!独り寝は寂しい!!ギュッと抱っこして寝たいよ!!」
(そんなに抱っこしたいなら、抱き枕でも抱いてればいいじゃないですか。はぁ、もう帰りたい)
「気が狂いそうだ!!」
(俺のほうが気が狂いそうだよ!!)
そこまで心のなかでツッコミを入れていた秋護は、生徒会長が話に入ってこないことを訝しんで、向かいの机に座っている生徒会長をみると、能面のような顔をしていた。
そのことから、既にこの会話を何十回とした後だと察した。
そして、当分この気の狂いそうな話が続くことを理解して、秋護も能面のような顔になったのだった。
そう、このイカレタ副会長こそ椿弥生その人だった。
先程の視線が嘘だったかのような、穏やかな口調に、混乱した秋護は声も出さずに首を上下に降るだけだった。
しかし、人生それほどイージーモードではなかったようだったのだ。
「なんて、言うと思ったか?お前、存在薄すぎなんだよ。ちっ、この俺がお前のようなゴミクズに……。おい、お前名前と学年、クラスを言え」
副会長の急変に秋護は度肝を抜かれた。
口をあんぐりと開けて、呆ける秋護に、副会長は容赦のないチョップを入れた。
脳天がかち割れて、脳が飛び散ったと秋護は錯覚した。
あまりの痛みに意識が遠くなり、続いて鈍い痛みが襲ってきた。鈍い痛みは次第にじんじんと、熱を持っていった。頭を押さえると、少し瘤になっていた。
この意味不明な状況に、目を白黒させていると、生徒会長が秋護を背にかばって副会長を非難した。
「主様!!やり過ぎです!!記憶を消すならもう少しやりようがあるでしょうが!!」
庇ってくれたはずの生徒会長は、恐ろしいことを言い放った。
(記憶を消す?はっ?何言ってるのこの人?それに、主様?どういうこと?)
混乱した秋護を他所に、今度は生徒会長が容赦のない踵落としを食らっているのが目に入って、秋護は死を覚悟した。
「この駄獣が!ここでは、名字で呼べと言っただろうが。貴様の頭は空っぽのスカスカなのか?ちっ、本当に使えない駄獣だ」
「ひっ、酷いです!!いつもいつも無理難題を言いつけって、幻獣使いの荒いドSめ!!」
「は?」
「ひっ!!!」
二人は、意味のわからないやり取りを始めたため、これがチャンスとばかりに逃げ出そうとしたが副会長はそれを許してはくれなかった。
地面をはって逃げようとした先に、副会長の足が目に入った。
そして、恐る恐る見上げると、笑顔なのに般若のような面影があるそんな器用な表情をした副会長が秋護を見下ろしていた。
「おい、いい度胸だな」
地を這うような恐ろしい声に秋護は声を震わせた。
「いっ、命だけは……」
「取らねぇよ。で、名前と学年、クラスは?」
「はい。朝比奈秋護、2年5組です!!!」
「分かった。朝比奈。今日からお前は俺の犬だ。絶対に逆らうことは許さない。俺が命令すれば、喜んでそれを実行しろ。俺の質問には、はいか、イエスで答えろ。いいな?」
「はい……。副会長様……」
恐怖に引きつった秋護の返事を聞いて、気分を良くしたのか副会長は、ニヤリと黒い笑みを浮かべた。
そんな副会長に、生徒会長が涙目で質問をした。
「あの~。どうして、記憶を消さずに手駒にするんですか?」
(えっ、手駒?)
「あぁ。俺も、今の副会長キャラが面倒になってきててな。発散できる丁度いい下僕が欲しかったところでな」
(えっ?下僕?ストレスの捌け口的な存在なの?)
「なるほど!!流石ゲスですね!!!」
(うん。考え方がゲスいね)
「そうかそうか、後で躾が必要みてぇだな」
「ひっ!!そっ、そんなことを言っていると言いつけますよ!!」
「あ゛?」
「ひぃぃぃ!!」
こうして、秋護はよくわからないまま、性格最悪な副会長の下僕となった。
それから、毎日の様に生徒会室に呼び出され、仕事を無理やり手伝わされ気がつけば生徒会書記として名を連ねる事となった。
またある日、生徒会室には副会長の本性を知る、秋護と生徒会長と副会長本人の三人だけのとき、いつもはゲスいドS野郎の副会長が珍しく落ち込んでいたのだ。
あまりそれに触れると面倒なことになりそうだと、敢えて触れずに雑用をもくもくをこなしていた秋護に、長机に突っ伏していた副会長が、地を這う声で話しかけてきた。
「おい、下僕。どうして何も聞かない」
「……」
「下僕、3秒以内に――」
「副会長、どうしたんですか!!」
最後まで言わせるか!!と、言わんばかりに食い気味に返答した秋護に、副会長は眉を顰めたが、それでもいいやといったように、話し始めた。
「聞いてくれるか後輩」
副会長が、秋護を後輩と呼ぶときは大抵ろくな事がなかった。
嫌な予感がしても、聞かないわけにはいかず、プリントをホッチキスで止める作業をしながら耳を傾けた。
「妹が……」
(はぁ、また妹さんのことか)
副会長は、極度のシスコンを患っていた。
それはもう、ドン引きするほどのだ。
「妹が……、最近一緒に寝てくれなくなったんだ!!寂しい!!寝るときに、あの愛らしい寝顔を見られないことも!!朝起きたときに、一番にその可愛い顔を見られないことも!!!あああ、どうしてだ!!!」
(それだよ。俺が妹さんでも、これはうざい!!っていうか最近までよく妹さん我慢してたな……)
「一緒に寝たい!!独り寝は寂しい!!ギュッと抱っこして寝たいよ!!」
(そんなに抱っこしたいなら、抱き枕でも抱いてればいいじゃないですか。はぁ、もう帰りたい)
「気が狂いそうだ!!」
(俺のほうが気が狂いそうだよ!!)
そこまで心のなかでツッコミを入れていた秋護は、生徒会長が話に入ってこないことを訝しんで、向かいの机に座っている生徒会長をみると、能面のような顔をしていた。
そのことから、既にこの会話を何十回とした後だと察した。
そして、当分この気の狂いそうな話が続くことを理解して、秋護も能面のような顔になったのだった。
そう、このイカレタ副会長こそ椿弥生その人だった。
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