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第三章 デュセンバーグ王国へ(8)
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長い間ジークリンデの逞しい腕の中で、彼の鼓動の音を聞いていた志乃だったが、流石に恥ずかしくなってきていた。
男性経験など皆無に近い志乃は、このままどうしていいのか分からずにただ心臓の音を高鳴らせるだけだった。
一方、それなりに経験をしてきているジークリンデは、年下に見える志乃にこのまま手を出していいものかと思いあぐねていた。
どう見ても志乃からいろいろと許されているような空気を感じるからだ。
しかし、ここでがっくつのもどうかと思う自分もいて、それでもキスの一つくらいはと思う自分もいて、どう行動したらいいのかと動けずにいたのだ。
それでも、腕の中の志乃の柔らかい体と甘い匂いに体が勝手に動いてしまっていた。
そこで、ふと疑問に思うジークリンデ。
確かに、風呂を勧める前の志乃は、柔らかさとは対極のガリガリに痩せた体ったはずなのだ。
それなのに、手のひらに感じる吸いつくような肌と柔らかさに、内心首を傾げる。
だんだんジークリンデの手が全身を撫でるように触れてくるようになってきていたことに志乃は動揺していた。
背中や腰を固くて大きな手のひらが行き来し、頬や首筋を優しく触れられて、青い瞳でじっと見つめられると、胸がぎゅっと締め付けられた。
それでも、心の準備などできていない志乃は、小さく抵抗していた。
「い……いや……」
そう言って、あまりにも近いジークリンデの胸を押して距離をとっていた。
志乃の抵抗に、ハッとした表情になったジークリンデは、慌ててその身を解放していた。
「すまない……」
「いえ……」
何とも気まずい空気がその場に流れていた。
だが、ジークリンデがあることに気が付くことで、その空気は吹き飛ぶこととなった。
「ん? シノ?」
そう言って、ジークリンデは、志乃の全身を穴が開くほど凝視しだしたのだ。
そして、ある結論を口に出したのだ。
「やはりそうか。うん。シノには、聖属性の魔法の才能があるのかもしれない」
何のことを言われているのか分からなかった志乃は小さく首を傾げる。
その首を傾げる仕草は、とても愛らしいものでジークリンデは、顔がにやけそうになりながらも必死に表情を作って説明したのだ。
「聖属性とは、魔法属性の一つだ。この世界で魔法を使うには、その属性に見合った魔法しか使うことができないんだ。例えば、火の属性しか持たない者は、火以外の魔法を使えないんだ」
またしても魔法という言葉が出たことで志乃は目を丸くすることとなった。
それでも、魔法という未知の領分に興味はあった。
だから、ジークリンデの説明を聞き入るようにして耳を傾けたのだ。
「聖属性は、数ある魔法属性の中でも希少だ。特性は、回復や結界魔法だな。シノは、こっちに来てから、怪我の治りが早く感じたことはなかったか?」
ジークリンデにそう質問された志乃は、たしかに心当たりがあった。
こっちに来てから、たしかに怪我の治りが早かったし、あの劣悪な環境で病気もしなかった。
何より、あれだけ視力が低かったにもかかわらず、今ではメガネなしでいられるようになっていたのだ。
そのことを思い浮かべていた志乃は、素直に肯定して見せた。
志乃が頷いたのを見たジークリンデは、両手を組んで何かを考えるようにしてからにかっと頼もしい笑みを浮かべた。
「うん。大丈夫。シノのことは、俺が守るから。誰にも利用なんてさせない。よし、それじゃ、改めて自己紹介でもしようか?」
守る、利用、そんな少し物騒なことを口走るジークリンデだったが、志乃を安心させるように微笑んだ後に唐突にそんなことを言った。
志乃は、話に付いていけずにぽかんとしていたが、ジークリンデの言葉に驚くこととなった。
「俺は、ジークリンデ・デュセンバーグだ。一応、デュセンバーグ王国の第三王子をしている。今年、十八になった。王子の肩書はあるが、王位継承権はないも同然だ。俺の兄上は王として最高だからな。俺は、剣も魔法もそれなりにできるから、冒険者として国を支えることにしている。ああ、冒険者って言うのは、魔物退治をしたりする仕事だと思ってくれればいい……。ん? シノ、どうした?」
ジークリンデの言葉に志乃は呆然としていた。
「王子様……? 十八? え?」
ジークリンデが第三王子の上、年下だということを知った志乃の驚きは大きかった。
どう見ても自分より年上に見えたのだ。体格はもちろん、その落ち着いた雰囲気や志乃に対する行動が年上に見せていたのだ。
それなのに、自分よりも年下、さらに言うと未成年だという事実に志乃は驚愕を隠すことなどできなかったのだ。
「と……年下……」
「え?」
志乃の頭の中には、未成年に手を出した成人女性が逮捕される映像が頭をよぎっていた。
その成人女性は、まさに自分の姿と重なり……。
「だ、だめーーーーー!! 未成年とはお付き合いできません!! 私、逮捕なんて嫌ですーーーー!!」
男性経験など皆無に近い志乃は、このままどうしていいのか分からずにただ心臓の音を高鳴らせるだけだった。
一方、それなりに経験をしてきているジークリンデは、年下に見える志乃にこのまま手を出していいものかと思いあぐねていた。
どう見ても志乃からいろいろと許されているような空気を感じるからだ。
しかし、ここでがっくつのもどうかと思う自分もいて、それでもキスの一つくらいはと思う自分もいて、どう行動したらいいのかと動けずにいたのだ。
それでも、腕の中の志乃の柔らかい体と甘い匂いに体が勝手に動いてしまっていた。
そこで、ふと疑問に思うジークリンデ。
確かに、風呂を勧める前の志乃は、柔らかさとは対極のガリガリに痩せた体ったはずなのだ。
それなのに、手のひらに感じる吸いつくような肌と柔らかさに、内心首を傾げる。
だんだんジークリンデの手が全身を撫でるように触れてくるようになってきていたことに志乃は動揺していた。
背中や腰を固くて大きな手のひらが行き来し、頬や首筋を優しく触れられて、青い瞳でじっと見つめられると、胸がぎゅっと締め付けられた。
それでも、心の準備などできていない志乃は、小さく抵抗していた。
「い……いや……」
そう言って、あまりにも近いジークリンデの胸を押して距離をとっていた。
志乃の抵抗に、ハッとした表情になったジークリンデは、慌ててその身を解放していた。
「すまない……」
「いえ……」
何とも気まずい空気がその場に流れていた。
だが、ジークリンデがあることに気が付くことで、その空気は吹き飛ぶこととなった。
「ん? シノ?」
そう言って、ジークリンデは、志乃の全身を穴が開くほど凝視しだしたのだ。
そして、ある結論を口に出したのだ。
「やはりそうか。うん。シノには、聖属性の魔法の才能があるのかもしれない」
何のことを言われているのか分からなかった志乃は小さく首を傾げる。
その首を傾げる仕草は、とても愛らしいものでジークリンデは、顔がにやけそうになりながらも必死に表情を作って説明したのだ。
「聖属性とは、魔法属性の一つだ。この世界で魔法を使うには、その属性に見合った魔法しか使うことができないんだ。例えば、火の属性しか持たない者は、火以外の魔法を使えないんだ」
またしても魔法という言葉が出たことで志乃は目を丸くすることとなった。
それでも、魔法という未知の領分に興味はあった。
だから、ジークリンデの説明を聞き入るようにして耳を傾けたのだ。
「聖属性は、数ある魔法属性の中でも希少だ。特性は、回復や結界魔法だな。シノは、こっちに来てから、怪我の治りが早く感じたことはなかったか?」
ジークリンデにそう質問された志乃は、たしかに心当たりがあった。
こっちに来てから、たしかに怪我の治りが早かったし、あの劣悪な環境で病気もしなかった。
何より、あれだけ視力が低かったにもかかわらず、今ではメガネなしでいられるようになっていたのだ。
そのことを思い浮かべていた志乃は、素直に肯定して見せた。
志乃が頷いたのを見たジークリンデは、両手を組んで何かを考えるようにしてからにかっと頼もしい笑みを浮かべた。
「うん。大丈夫。シノのことは、俺が守るから。誰にも利用なんてさせない。よし、それじゃ、改めて自己紹介でもしようか?」
守る、利用、そんな少し物騒なことを口走るジークリンデだったが、志乃を安心させるように微笑んだ後に唐突にそんなことを言った。
志乃は、話に付いていけずにぽかんとしていたが、ジークリンデの言葉に驚くこととなった。
「俺は、ジークリンデ・デュセンバーグだ。一応、デュセンバーグ王国の第三王子をしている。今年、十八になった。王子の肩書はあるが、王位継承権はないも同然だ。俺の兄上は王として最高だからな。俺は、剣も魔法もそれなりにできるから、冒険者として国を支えることにしている。ああ、冒険者って言うのは、魔物退治をしたりする仕事だと思ってくれればいい……。ん? シノ、どうした?」
ジークリンデの言葉に志乃は呆然としていた。
「王子様……? 十八? え?」
ジークリンデが第三王子の上、年下だということを知った志乃の驚きは大きかった。
どう見ても自分より年上に見えたのだ。体格はもちろん、その落ち着いた雰囲気や志乃に対する行動が年上に見せていたのだ。
それなのに、自分よりも年下、さらに言うと未成年だという事実に志乃は驚愕を隠すことなどできなかったのだ。
「と……年下……」
「え?」
志乃の頭の中には、未成年に手を出した成人女性が逮捕される映像が頭をよぎっていた。
その成人女性は、まさに自分の姿と重なり……。
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