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第七話 戦う手段
「君は少し手を抜いて考えるべきだ」
「…………」
男の言っていることが理解できないティアナに構うことなく、男はすっと立ち上がってあっさりと背を向けた。
呆然としながらもティアナは、男の言っていた言葉について考えていた。
手を抜くとは一体どういうことなのかと……。
答えは出ないまま、ただいたずらに時間だけが過ぎていく。
陽が傾きかけた時、ティアナは今度こそ覚悟を決めて自分の足で戦場に戻った。
頭の中はぐちゃぐちゃで、そでも何らかの功績を残さなければならない。
焦りから、ティアナが何も考え突かないまま強大な魔法を放とうとした時だった。
遠くに漆黒に輝く光が見えたのは。
黒馬の背に乗った、英雄と名高い黒騎士が戦場に現れたのだ。
グダグダになりつつあった帝国兵を指示したのか、陣形があっという間に整っていく様は壮観だった。
ただ、陣形は厚い場所と薄い場所と全てが均等に配置されたわけで場なかったようだ。
何故?
ティアナには見えたのだ。
先頭に立った黒騎士が後ろに伸びた兵士たちに指示を出しながらルーマニア王国のバラバラになりつつある隊列を横から分断しながら進さまは圧巻だった。
ティアナは、何かを掴みかけた気がして、繰り出そうとした魔法に少し手を加えた。
威力は絶大だが、着弾する場所と向きをひと工夫する。
巨大な土煙を挙げながらアルマーノ帝国の兵士たちは吹き飛んでいった。
自分のなした事象のあまりにも想像以上の威力にティアナは、表情を青くさせてしまう。
胸がドクドクと脈打ち、今にでも破裂してしまいそうだった。
吹き飛んだ兵士たちは、血だらけの体を引きずり何とかその場から退避するのが見えたティアナは、自分がどうすればよかったのかを考える。
流石の黒騎士は、すぐに隊列を整え一旦兵士を下がらせたのだ。
それを見たティアナは、すぐに同程度の魔法をさらに調整して着弾させていた。
先ほどよりも大きな規模の土煙が上がっていた。
敵軍は混乱の中撤退の姿勢を見せたのだ。
それを見たティアナは、これだと、自分のこれからの指針を心に留めた瞬間だった。
見た目は派手で、それでいて殺傷能力は低い。
浅くても血が出やすい場所に石粒が飛んでいくように魔法の着弾時にホーミングの魔法を付与する。
こうすることで、被害は抑えつつも敵軍の兵を一時でも長く離脱させる。
それがティアナなりの手の抜き方だった。
最初の頃はそれで誤魔化せていたが、上官の目を欺くのもなかなか大変なものだった。
疑われないように、日々手の抜き方を模索していく。
初めて戦場に立ってから一年。
その頃には、自身を守るための様々な魔法を施した群青色のローブの色から、『群青の魔法使い』とアルマーノ帝国の兵士たちに呼ばれるようになっていた。
そして、ルーマニア王国では、表情を変えず何の感情も見せずに大魔法を連発する様を揶揄するようにこう言われるようになったのだ。
『殺戮人形』
敵兵を無表情で血祭りにあげる様子からそう言われるようになったのだ。
ただ、ルーマニア王国の人間は知らなかった。
あれほどの大魔法を浴びせられたアルマーノ帝国の兵士たちが誰一人命を落としていないという事実を。
ティアナがそう呼ばれるようになって程なくして、戦いの勢いは苛烈に増していったのだ。
それまでは、数ヶ月に一度ではあったが、マリカの様子を見に休暇を貰えていたが、戦いが激しくなるにつれてそれも難しくなっていた。
これが最終局面による戦いの激しさなのだと、誰もがそう信じ祈っていた。
この戦争が少しでも早く終わってほしいと。
アルマーノ帝国に早く戦争を終わらせてほしいと、ルーマニア王国の一般兵たちはそう願っていたのだ。
ティアナが戦場に立つようになってから二年程が経ったある日のことだった。
その日、ティアナは母親に送るための手紙を上官に預けた後、書き残しがあったため追加の手紙を持って行った時にとてつもなく残酷な事実を盗み聞いてしまうのだ。
聞いてしまった残酷すぎる事実にティアナは、その場から逃げ出していた。
そしてティアナが向かった先は、黒騎士が戦っているはずの最前線だった。
「…………」
男の言っていることが理解できないティアナに構うことなく、男はすっと立ち上がってあっさりと背を向けた。
呆然としながらもティアナは、男の言っていた言葉について考えていた。
手を抜くとは一体どういうことなのかと……。
答えは出ないまま、ただいたずらに時間だけが過ぎていく。
陽が傾きかけた時、ティアナは今度こそ覚悟を決めて自分の足で戦場に戻った。
頭の中はぐちゃぐちゃで、そでも何らかの功績を残さなければならない。
焦りから、ティアナが何も考え突かないまま強大な魔法を放とうとした時だった。
遠くに漆黒に輝く光が見えたのは。
黒馬の背に乗った、英雄と名高い黒騎士が戦場に現れたのだ。
グダグダになりつつあった帝国兵を指示したのか、陣形があっという間に整っていく様は壮観だった。
ただ、陣形は厚い場所と薄い場所と全てが均等に配置されたわけで場なかったようだ。
何故?
ティアナには見えたのだ。
先頭に立った黒騎士が後ろに伸びた兵士たちに指示を出しながらルーマニア王国のバラバラになりつつある隊列を横から分断しながら進さまは圧巻だった。
ティアナは、何かを掴みかけた気がして、繰り出そうとした魔法に少し手を加えた。
威力は絶大だが、着弾する場所と向きをひと工夫する。
巨大な土煙を挙げながらアルマーノ帝国の兵士たちは吹き飛んでいった。
自分のなした事象のあまりにも想像以上の威力にティアナは、表情を青くさせてしまう。
胸がドクドクと脈打ち、今にでも破裂してしまいそうだった。
吹き飛んだ兵士たちは、血だらけの体を引きずり何とかその場から退避するのが見えたティアナは、自分がどうすればよかったのかを考える。
流石の黒騎士は、すぐに隊列を整え一旦兵士を下がらせたのだ。
それを見たティアナは、すぐに同程度の魔法をさらに調整して着弾させていた。
先ほどよりも大きな規模の土煙が上がっていた。
敵軍は混乱の中撤退の姿勢を見せたのだ。
それを見たティアナは、これだと、自分のこれからの指針を心に留めた瞬間だった。
見た目は派手で、それでいて殺傷能力は低い。
浅くても血が出やすい場所に石粒が飛んでいくように魔法の着弾時にホーミングの魔法を付与する。
こうすることで、被害は抑えつつも敵軍の兵を一時でも長く離脱させる。
それがティアナなりの手の抜き方だった。
最初の頃はそれで誤魔化せていたが、上官の目を欺くのもなかなか大変なものだった。
疑われないように、日々手の抜き方を模索していく。
初めて戦場に立ってから一年。
その頃には、自身を守るための様々な魔法を施した群青色のローブの色から、『群青の魔法使い』とアルマーノ帝国の兵士たちに呼ばれるようになっていた。
そして、ルーマニア王国では、表情を変えず何の感情も見せずに大魔法を連発する様を揶揄するようにこう言われるようになったのだ。
『殺戮人形』
敵兵を無表情で血祭りにあげる様子からそう言われるようになったのだ。
ただ、ルーマニア王国の人間は知らなかった。
あれほどの大魔法を浴びせられたアルマーノ帝国の兵士たちが誰一人命を落としていないという事実を。
ティアナがそう呼ばれるようになって程なくして、戦いの勢いは苛烈に増していったのだ。
それまでは、数ヶ月に一度ではあったが、マリカの様子を見に休暇を貰えていたが、戦いが激しくなるにつれてそれも難しくなっていた。
これが最終局面による戦いの激しさなのだと、誰もがそう信じ祈っていた。
この戦争が少しでも早く終わってほしいと。
アルマーノ帝国に早く戦争を終わらせてほしいと、ルーマニア王国の一般兵たちはそう願っていたのだ。
ティアナが戦場に立つようになってから二年程が経ったある日のことだった。
その日、ティアナは母親に送るための手紙を上官に預けた後、書き残しがあったため追加の手紙を持って行った時にとてつもなく残酷な事実を盗み聞いてしまうのだ。
聞いてしまった残酷すぎる事実にティアナは、その場から逃げ出していた。
そしてティアナが向かった先は、黒騎士が戦っているはずの最前線だった。
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