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第九話 困惑の目覚め
「………………生きてる? どうして?」
そう呟いたティアナは、周囲を見回した。
高い天井は染み一つなく、横たわっているベッドは綿菓子のようにふわふわとしていた。
熱くも寒くもない快適な室内は、豪華すぎないがセンスのいい調度品で整えられていた。
「ここは……」
ティアナは独り言のつもりでそう言ったが、その言葉に応える者がいたことに驚く。
「お嬢様。ここは、ゼノサージュ子爵邸ですわ」
そう答えたのは、おっとりとした品のよさそうな女性だった。
「あらあら、お嬢様が起きたことを旦那様にお知らせしないといけませんわね」
そう言った女性は、ティアナが飲めるようにと水の入ったコップをベッドサイドのテーブルに置いてから静かに部屋を出て行ったのだ。
混乱する頭でティアナは最後の記憶を思い出そうとして、振り下ろされる長剣を思い出す。
確かに死んだと、そう思ったはずだった。
ものすごいスピードで振り下ろされる長剣に、ティアナは切られたとそう確信したのだ。
それなのに……。
いや、きっとどこかに治療の後があるはずだと、ベッドから身を起こしたティアナは全身を探る。
着せられていたのは、見たことも無いほど光沢のある布でできた寝間着だった。
サイズの大きいそれを脱ぎ捨ててパンツ姿で全身を見るもいつものカサカサの肌と痩せこけた皮だらけの体があるだけだった。
「おかしい……。わたしはあの時黒騎士に切られたんじゃないの?」
「きゃーーー! お、お嬢様。なんて格好をしているんです!! 旦那様はあちらに!!」
先ほどの女性がそう言いながら戻ってきたことにティアナは慌てて寝間着を着直していた。
「申し訳ござません。私ったら何の説明もせずに……。混乱されたことでしょう」
そう言って、女性はティアナの乱れた髪を整えた。
一通りの身だしなみを整えた後、女性は旦那様と呼んでいた人物に声を掛ける。
「旦那様。もう入っていただいて大丈夫でございますよ」
そう言われて部屋に入ってきたのは、整った顔をした黒髪の青年だった。
「調子はどうかな? 痛いところや違和感は?」
そう言われたティアナは、小さく頭を振って異常は見られないことを伝える。
それを見た青年はホッとしたように胸を撫で下ろす。
青年の態度に首を傾げるティアナに気が付いた青年は、ベッドのすぐ傍まで近づき、片膝を付いた格好で言うのだ。
「俺は、さ…………。いや、ゼノサージュ子爵。君には黒騎士と名乗った方が通りがいいかな? それとこちらの女性はマーサ・アマージ」
黒騎士にそう紹介された女性、マーサは綺麗なカーテーシーをティアナに見せた。
「それで、君のことはなんと呼べばいいのかな?」
黒騎士の少し低く、それでいて優しい声音に困惑しつつも素直に名を名乗る。
「わたしは……ティアナだ……です」
黒騎士は自身のことをゼノサージュ子爵と名乗ったことから、ティアナは付け加えるように気持ちばかりの敬語に直す。
そんなティアナの様子に笑みを浮かべる黒騎士は、優し気な口調で質問を続けた。
「念のための確認だけど、君は群青の魔法使いで間違いないかな?」
「群青の魔法使い? なんだそれは……ですか」
「ああ……。えっとルーマニア小国で一番の魔法使い。俺たち帝国の兵士を数え切れないくらい後方送りにしたのは君で間違いないかな?」
「…………そうだ……です」
「そっか……。うん。よし、決めたよ」
「旦那様……。本当に?」
「ああ」
目の前の黒騎士が何を決めたのかと首を傾げたティアナは、目を見開いてまじまじと黒髪の青年の顔を見つめ直すのだ。そして、心の中で絶叫する。
(この人……く……くくくくっ黒騎士って名乗らなかった? ふえぇ? ふぇえええええええ!!)
そう呟いたティアナは、周囲を見回した。
高い天井は染み一つなく、横たわっているベッドは綿菓子のようにふわふわとしていた。
熱くも寒くもない快適な室内は、豪華すぎないがセンスのいい調度品で整えられていた。
「ここは……」
ティアナは独り言のつもりでそう言ったが、その言葉に応える者がいたことに驚く。
「お嬢様。ここは、ゼノサージュ子爵邸ですわ」
そう答えたのは、おっとりとした品のよさそうな女性だった。
「あらあら、お嬢様が起きたことを旦那様にお知らせしないといけませんわね」
そう言った女性は、ティアナが飲めるようにと水の入ったコップをベッドサイドのテーブルに置いてから静かに部屋を出て行ったのだ。
混乱する頭でティアナは最後の記憶を思い出そうとして、振り下ろされる長剣を思い出す。
確かに死んだと、そう思ったはずだった。
ものすごいスピードで振り下ろされる長剣に、ティアナは切られたとそう確信したのだ。
それなのに……。
いや、きっとどこかに治療の後があるはずだと、ベッドから身を起こしたティアナは全身を探る。
着せられていたのは、見たことも無いほど光沢のある布でできた寝間着だった。
サイズの大きいそれを脱ぎ捨ててパンツ姿で全身を見るもいつものカサカサの肌と痩せこけた皮だらけの体があるだけだった。
「おかしい……。わたしはあの時黒騎士に切られたんじゃないの?」
「きゃーーー! お、お嬢様。なんて格好をしているんです!! 旦那様はあちらに!!」
先ほどの女性がそう言いながら戻ってきたことにティアナは慌てて寝間着を着直していた。
「申し訳ござません。私ったら何の説明もせずに……。混乱されたことでしょう」
そう言って、女性はティアナの乱れた髪を整えた。
一通りの身だしなみを整えた後、女性は旦那様と呼んでいた人物に声を掛ける。
「旦那様。もう入っていただいて大丈夫でございますよ」
そう言われて部屋に入ってきたのは、整った顔をした黒髪の青年だった。
「調子はどうかな? 痛いところや違和感は?」
そう言われたティアナは、小さく頭を振って異常は見られないことを伝える。
それを見た青年はホッとしたように胸を撫で下ろす。
青年の態度に首を傾げるティアナに気が付いた青年は、ベッドのすぐ傍まで近づき、片膝を付いた格好で言うのだ。
「俺は、さ…………。いや、ゼノサージュ子爵。君には黒騎士と名乗った方が通りがいいかな? それとこちらの女性はマーサ・アマージ」
黒騎士にそう紹介された女性、マーサは綺麗なカーテーシーをティアナに見せた。
「それで、君のことはなんと呼べばいいのかな?」
黒騎士の少し低く、それでいて優しい声音に困惑しつつも素直に名を名乗る。
「わたしは……ティアナだ……です」
黒騎士は自身のことをゼノサージュ子爵と名乗ったことから、ティアナは付け加えるように気持ちばかりの敬語に直す。
そんなティアナの様子に笑みを浮かべる黒騎士は、優し気な口調で質問を続けた。
「念のための確認だけど、君は群青の魔法使いで間違いないかな?」
「群青の魔法使い? なんだそれは……ですか」
「ああ……。えっとルーマニア小国で一番の魔法使い。俺たち帝国の兵士を数え切れないくらい後方送りにしたのは君で間違いないかな?」
「…………そうだ……です」
「そっか……。うん。よし、決めたよ」
「旦那様……。本当に?」
「ああ」
目の前の黒騎士が何を決めたのかと首を傾げたティアナは、目を見開いてまじまじと黒髪の青年の顔を見つめ直すのだ。そして、心の中で絶叫する。
(この人……く……くくくくっ黒騎士って名乗らなかった? ふえぇ? ふぇえええええええ!!)
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