殺戮人形のわたしが敵国の黒騎士様の最愛になるまでの話

バナナマヨネーズ

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第十四話 帰還

 黒騎士と再び会うことが叶ったのは、黒騎士の屋敷で過ごすようになってから一月後のことだった。
 屋敷の中では自由にしていいとマーサに言われていたティアナだったが、自分の立場を理解しているティアナは、一日中自分が傷つけてしまった人たちに謝罪をしながら過ごしていた。
 どんなにマーサが言っても日がな床に頭を付くような姿勢で「ごめんなさい」と口にして過ごしていた。
 食事もパンとスープのみを希望し、最初の時のような豪勢なものは拒否し続けたのだ。
 自分を罰するため、風呂も遠慮し、水を被って身を清めるティアナを見ていたマーサは、黒騎士の帰りを今か今かと待ち続けていた。
 黒騎士ならティアナの行動を止められると、そう考えてのことだった。
 
 
「ティアナお嬢様。旦那様がお帰りになりましたよ」

 そう言われたティアナは、身を起こしてマーサを見つめた。
 顔色は良くなったが、ガリガリに痩せて、髪や肌艶は悪いままだった。
 
「そう……ですか……」

 そう言ったティアナは、ふらふらと立ち上がり意志のこもった視線でマーサを見つめて言った。
 
「子爵様にお会いしたいです」

「はい。旦那様から、執務室にお連れするように仰せつかっています。ご案内いたします」

 この屋敷に来て以来部屋に籠りがちだったティアナは、案内されるままに黒騎士の元に向かう。
 
 
「旦那様」

「ああ、入ってくれ」

 久しぶりに聞いた黒騎士の声が扉の中から聞こえてくる。
 ティアナは、マーサの後に続いて部屋の中に入ると、身に覚えのある甲冑が目に入る。
 
「くろきし……」

 思わずといった様子でそう呟いたティアナに向かって、甲冑姿の黒騎士がヘルムを外しながら微笑む。
 
「ただいま……。って、報告に合ったとおりだな……。よし、マーサ」

 そう言った黒騎士は、視線でマーサに何かを指示する。
 指示されたマーサは、嬉しそうな表情を浮かべてぺこりと頭を下げた後に部屋を出て行ってしまった。
 それとすれ違う様に一人の青年が入室してきたのだ。
 
「大将! 処理完了っす!! これで戦争は完全に終わりっすよ!!」

「ああ。報告ありがとう」

「いいってことです!! それで、褒章の件で……。って!! この子がティアナっすか? わぁ~、ちっさいっすね!! ああ、母上が言っていた通りの……。いえ、それ以上っすね!!」

「はぁ……。ジムダン……。うるさいぞ。ティアナが驚いてる」

 ジムダンと呼ばれた男はしおしおとしょげた後、ティアナに向かってぺこりと頭を下げる。
 
「申し訳ないっす。俺は、ジムダン・アマージっす。大将の男気に惚れて部下になったっす。今年三十才で絶賛嫁さんを募集中っす!! マーサは、俺の母上っす!!」
 
 そう言って、人懐っこそうな笑みを浮かべたジムダンは、青い髪のガタイのいい青年だった。
 
「ティアナ。よろしくな!」

 そう言ってジムダンは、右手をティアナに向かって差し出した。
 見るからに握手を求められていることは理解できたが、ティアナはその手をじっと見つめるだけで握手に応じることが出来なかった。
 
 そんなティアナに構わず、無防備なティアナの両手を握ったジムダンは、自分のペースで大きく握った手を振る。
 
「よろしく!! って、ちっこい手だな……」

 握った手の小ささに驚いたジムダンは、パッと顔を上げて困惑したティアナの青い瞳を視線が合いパッと顔を赤らめる。
 
「か……わいい……」

 そう呟いたあと、慌てて握っていた手を離したジムダンは後方から聞こえた大きな音にひっくり返ってしまっていた。
 
 ジムダンとティアナが音がした方に視線を向けると、何故か黒騎士の前に置かれていた執務机が真っ二つになっていたのだ。
 それを見たジムダンは、脂汗を流しながらしどろもどろに何かを言い訳するのだ。
 
「ちっ……違いまして……。俺は、妹みたいでって意味で、別に深い意味とか……。でも可愛いと思ったのは本当で……。でも、歳の差もあるし……。そう言うのじゃなくでですね……」

「ジムダン」

「っ!!!」

 黒騎士から名前を呼ばれたジムダンは、その場で小さくなってしまったが、その空気を変えるようにマーサが朗らかに室内に声を掛けたのだ。
 
「旦那様、ティアナお嬢様。さあさあ、準備が出来ましたよ。食堂に移動しましょう」

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