子犬だと思っていた幼馴染が実は狼さんだった件

バナナマヨネーズ

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第十五話 ダンジョンボス

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 次の日、アズサは自分を背後から抱きしめているウルシュカームよりも先に目を覚ましていた。
 起きようにも、ウルシュカームにがっちりと背後から抱きしめられている状況では起き上がることが出来なかったアズサは、ふと昨日の夜とウルシュカームの寝間着が変わっていることに気が付き首を傾げていた。
 気のせいかとは思いつつも、頭を悩ませていると、ウルシュカームが目覚める気配がした。
 ウルシュカームは、腕の中のアズサの後頭部にキスをして、体を擦り付けるようにしてから眠そうな声で言ったのだ。
 
「アズ、おはよう……。今日も可愛くて大好き。ちゅっ」

「はいはい。それよりも、起き上がれないから腕退けろ」

 アズサがそう言うと、何故か更に強く抱きしめられていた。
 
「おい?そろそろ支度してダンジョンに行くぞ?」

「やだ。アズからキスして。じゃないと起きられない」

「お前なぁ……。はぁ、もう子供じゃないんだから……。仕方ない。ちゅっ」

 そう言って、甘えてくるウルシュカームの手にキスをしていた。
 ウルシュカームは、不満そうな声を上げていた。
 
「えー。手じゃなくて他の場所がよかった……」

「文句言うなよ。お前が抱き着いてるから、身動き取れないんだよ!それよりも早く起きろってば!!」

 アズサがそう言うとウルシュカームはゆっくりと腕を退けて起き上がっていた。
 
 
 先に身支度を整えたウルシュカームが朝食の準備をしていると、装備を整えたアズサがウルシュカームに言ったのだ。
 
「悪い、支度に手間取った。手伝う」

 そう言ったアズサの姿を見たウルシュカームは、眉を寄せて言っていた。
 
「いくら試験のためとは言えよかったの?」

 そう言って、アズサの全身を見て心配そうな表情をしていたのだ。それを見たアズサは、その場でくるっと回って見せた。
 
「別にいい。周りに変な目で見られるは嫌だけど、姿にこだわって実力が発揮できないよりはいい。俺は、お前とパートナーになるためなら、誰にどんな目で見られてもどうってことない」

 そうなのだ。自分の容姿を隠していたアズサが顔を晒した理由は、試験に万全の状態で挑みたいという思いがあったからなのだ。
 長い前髪と伊達メガネでは視界が悪く、戦闘になったときに十分な動きが出来ないと判断したため、前髪を上げて、眼鏡も外したのだ。
 そして、動きにくいシャツとズボンもやめて、自分が一番動きやすい着物と袴姿となっていたのだ。
 空色の着物と紺色の袴に、胸当てと手甲、足元は編み上げのブーツを身に着けたアズサは、準備万端と気合を見せるかのようにウルシュカームに微笑んだのだ。
 
「ほら、さっさと朝飯食って、ダンジョンに行こう」

「うん」

 ウルシュカームは、自分との将来のためにそこまでしてくれるアズサのことが嬉しくて、更に好きという気持ちが大きくなっていくのが分かって笑顔になっていた。
 
 
 
 その後、準備を整えたアズサとウルシュカームは、ダンジョンの入り口に来ていた。
 入り口は特に閉鎖などはされておらず、簡単に中に入ることが出来た。
 
 中は薄暗く、ウルシュカームの魔術で灯りを確保しつつ慎重にダンジョン内を進んだ。
 特に罠や仕掛けもなく、魔物も低級の弱いものばかりだった。
 
 アズサは、事前にウルシュカームに身体強化と知覚感覚強化のバフを掛けてもらっていたので、魔物の気配を感じたそばから、切って捨てるを繰り返していた。
 
 弱いラット型とラビット型の魔物を軽く薙ぎ払いながら、アズサはあまりの手応えのなさに首を傾げていた。
 
「なぁ?これ、学園が用意したダンジョンだよな?一階層がここまで弱い魔物しかいないとなると、先が長そうなんだが……」

「うん。でも、気を抜かずに進もう」


 一階層から下に降る階段はそれからすぐに見つかった。
 二階層に降りても、出てくる魔物は変わらず弱いものばかりだった。
 
 二階層も大して苦戦することなく、三階層に降りる階段が見つかった。
 
 しかし、三階層に降りた途端周囲の空気ががらりと変わっていた。
 お互いに目で合図を送りながら、ここがボスのいる階層なのだと確信していた。
 
 しかし、上の階層との違いに違和感を覚えつつも、ボスは強敵で間違いないと感じたアズサとウルシュカームは、慎重に歩みを進めた。
 特に魔物と遭遇することもなく、ボスがいるであろう部屋の前に着いていた。
 
「この奥にボスがいるのか……。このダンジョンにいる魔物の感じだと、獣系のボスかな?」

「その可能性はあるけど、先入観は感覚を鈍らせるから、一つの可能性としてだけ考えよう」

「そうだな。分かった。気を引き締める。悪い、バフ頼む」

「うん。支援は任せて」

 そう言って、ウルシュカームは、アズサに身体強化、知覚感覚強化、体力向上効果、弱体耐性効果、ガード魔法を全力で掛けていた。
 そして、自分には弱体耐性とガード魔法を掛けた後にアズサに合図を送った。
 アズサはそれに頷いた後に、目の前の扉を開けた。
 
 扉を開けると、部屋の両側の壁に設置された松明に次々と明かりが灯った。
 そして、部屋の奥まで明かりが灯ると、奥の方に大きな力の気配を感じたアズサは、部屋の奥に視線を向けた。
 
 そこには、この部屋の主であろう、ボスの姿があった。
 
 小さな山を思わせる巨躯の魔物が姿を現したのだ。
 頭は牛のようだったが、筋肉の盛り上がったその体は人の体のようだった。しかし、人間にはない蛇のような尻尾が生えていたのだ。
 
「キメラか……」

 アズサの呟いた通り、ダンジョンのボスはキメラと呼ばれる魔物の複合種だった。
 
 
 グオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーー!!!
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