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第一話
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シユニナ・アガート伯爵令嬢には、生まれた時から婚約者がいた。
その婚約は、遠い昔に家同士で約束した婚約だった。
何代も前のアガート伯爵とシュニッツッァ侯爵との間で、お互いに年の近い男女が生まれたらお互いの子供を結婚させようと言う約束。
しかし、なかなか年の近い男女が生まれることがないまま永い時が経ってしまう。
そんな中、とうとう年の近い男女が生まれたのだ。
お互いの家は、すぐさま婚約を結んだ。
そして、アガート伯爵の長女として生まれたシユニナは、シュニッツッァ侯爵の長男に生まれた、四つ年上のミハエル・シュニッツッァ侯爵令息と生まれてすぐに婚約を結ぶ。
代々家同士の付き合いがある両家は、婚約する前から親交が深かった。
そのため、シユニナは物心つくころには自然と婚約者のミハエルのことを好きになっていたのだ。
そして、ミハエルも年下のシユニナを可愛がったのだ。
シユニナの兄、シュミット・アガート伯爵令息とミハエルが親友同士になっていたこともあり、常に三人で過ごすのが普通になっていく。
シユニナは、同年代の少女と比べるととても小柄で、婚約者のミハエルと、シユニナを溺愛する兄のシュミットは、シユニナをとても大切にしていた。
輝く金色の髪、美しいエメラルドの瞳。整った顔立ちの美少女に育ったシユニナは、自分を大切にしてくれる婚約者のミハエルを心の底から慕っていた。
大好きな婚約者のミハエルの後ろをついて回るシユニナが十四歳の時だった。
十八歳になり、麗しく成長したミハエルの本当の気持ちを知った時、シユニナは決意する。
成長したミハエルは、持って生まれた美しい銀の髪とルビーのような赤い瞳、背が高く均整の取れた体躯。
美しい顔は、無表情なことが多かったが時折見せる微かな笑顔に、令嬢たちは黄色い悲鳴を上げていた。
シユニナにとっては、自慢の婚約者だった。
自分にだけ優しくて、格好良くて、強い。
大大大好きな婚約者だったのだ。あの言葉を聞くまでは……。
それは、兄のシュミットが学友を屋敷に招いた日のことだった。
その年、王立学園を卒業するシュミットとミハエルは、卒業試験の勉強のため、数人の学友と試験勉強の追い込みをしていた。
勉強に疲れたシュミットたちは、気分転換にと庭で軽く剣の手合わせをしていた。
シュミットと学友が手合わせをしている中、それを見守っていた学友がミハエルに言ったのだ。
「そう言えば、ミハエルの婚約者はシュミットの妹だったっけ?」
「おっ。そこんとこ詳しく。シュミットの妹かぁ~。お前も大変だな。シュミットのシスコンは有名だしな」
「そうそう。世界一可愛い妹な! んで、実際のところどうなのさ? 婚約者として。まぁ、お前の顔面が引くくらいお綺麗だから、ちょっとやそっと可愛いくらいじゃなぁ」
「それな! 俺が女だったら、絶対にミハエルに惚れてる自信あるぜ!」
「ぶはっ!! 無理無理、こいつの顔面が良すぎて、隣にいるの苦痛になるぜ?」
「ああぁ~。確かにな。おっと、それで、ミハエルはその可愛い婚約者のことどう思ってんだ?」
学友たちにからかわれながらもそう聞かれたミハエルは、表情一つ動かさずに淡々とした口調で言った。
「別に何とも思っていない。家同士で決めた婚約だ。シュミットの妹だし、大切にはしたい。だが俺は、正直女の子が苦手だ。男同士でこうして遊んでいる方が何倍も楽しい」
淡々とそう語られたミハエルの言葉に、一瞬その場が静かになった。
しかし、その言葉を聞いた学友たちは一斉に雄たけびを上げていた。
「うおーー! はっず!! でも、よく言った! 男同士の気軽な付き合いって最高だよな!!」
「あはは! 俺もミハエルやシュミットたちといる時が楽しいぜ!!」
その場は大いに盛り上がる。
男同士の友情に沸いたその場から近い場所で偶然この会話を聞いていたシユニナは、自分が今まで勘違いしていたことを知ってしまう。
(恥ずかしい……。私、ミーシャに好かれてるって……。そう思っていた……。だけど、それは親友のお兄様の妹だから大事にされていただけ……。ううぅ……)
シユニナは、美しいミハエルの姿を脳裏に浮かべて溜息を吐く。
(はぁ……。そうよね、ミーシャよりも全然背は低いし、もう十四歳になるのに胸もぺちゃんこで……。全然ミーシャに釣り合っていないわ……。でも、諦めたくない……。だけど、性別はどうしようもないわ……。女の子が苦手……。でも私のことはお兄様の妹として大切にしてくれる……。っ! それって、女の子として見られていないってこと?)
そこまで考えたシユニナは、大きなショックを受ける。
しかし、シユニナがそのまま落ち込んで過ごすことはなかった。
「お父様、お母様、お兄様! 予てよりお誘いのあった隣国に留学します! もう手続きも終えています。私は自分を鍛え直して、人として成長してみせます。帰国はいつになるか分かりませんが、自分に自信が付いたら戻ります!」
衝撃の真実を知ってから数日後、シユニナは家族に爆弾発言を残して隣国に留学するのだった。
その婚約は、遠い昔に家同士で約束した婚約だった。
何代も前のアガート伯爵とシュニッツッァ侯爵との間で、お互いに年の近い男女が生まれたらお互いの子供を結婚させようと言う約束。
しかし、なかなか年の近い男女が生まれることがないまま永い時が経ってしまう。
そんな中、とうとう年の近い男女が生まれたのだ。
お互いの家は、すぐさま婚約を結んだ。
そして、アガート伯爵の長女として生まれたシユニナは、シュニッツッァ侯爵の長男に生まれた、四つ年上のミハエル・シュニッツッァ侯爵令息と生まれてすぐに婚約を結ぶ。
代々家同士の付き合いがある両家は、婚約する前から親交が深かった。
そのため、シユニナは物心つくころには自然と婚約者のミハエルのことを好きになっていたのだ。
そして、ミハエルも年下のシユニナを可愛がったのだ。
シユニナの兄、シュミット・アガート伯爵令息とミハエルが親友同士になっていたこともあり、常に三人で過ごすのが普通になっていく。
シユニナは、同年代の少女と比べるととても小柄で、婚約者のミハエルと、シユニナを溺愛する兄のシュミットは、シユニナをとても大切にしていた。
輝く金色の髪、美しいエメラルドの瞳。整った顔立ちの美少女に育ったシユニナは、自分を大切にしてくれる婚約者のミハエルを心の底から慕っていた。
大好きな婚約者のミハエルの後ろをついて回るシユニナが十四歳の時だった。
十八歳になり、麗しく成長したミハエルの本当の気持ちを知った時、シユニナは決意する。
成長したミハエルは、持って生まれた美しい銀の髪とルビーのような赤い瞳、背が高く均整の取れた体躯。
美しい顔は、無表情なことが多かったが時折見せる微かな笑顔に、令嬢たちは黄色い悲鳴を上げていた。
シユニナにとっては、自慢の婚約者だった。
自分にだけ優しくて、格好良くて、強い。
大大大好きな婚約者だったのだ。あの言葉を聞くまでは……。
それは、兄のシュミットが学友を屋敷に招いた日のことだった。
その年、王立学園を卒業するシュミットとミハエルは、卒業試験の勉強のため、数人の学友と試験勉強の追い込みをしていた。
勉強に疲れたシュミットたちは、気分転換にと庭で軽く剣の手合わせをしていた。
シュミットと学友が手合わせをしている中、それを見守っていた学友がミハエルに言ったのだ。
「そう言えば、ミハエルの婚約者はシュミットの妹だったっけ?」
「おっ。そこんとこ詳しく。シュミットの妹かぁ~。お前も大変だな。シュミットのシスコンは有名だしな」
「そうそう。世界一可愛い妹な! んで、実際のところどうなのさ? 婚約者として。まぁ、お前の顔面が引くくらいお綺麗だから、ちょっとやそっと可愛いくらいじゃなぁ」
「それな! 俺が女だったら、絶対にミハエルに惚れてる自信あるぜ!」
「ぶはっ!! 無理無理、こいつの顔面が良すぎて、隣にいるの苦痛になるぜ?」
「ああぁ~。確かにな。おっと、それで、ミハエルはその可愛い婚約者のことどう思ってんだ?」
学友たちにからかわれながらもそう聞かれたミハエルは、表情一つ動かさずに淡々とした口調で言った。
「別に何とも思っていない。家同士で決めた婚約だ。シュミットの妹だし、大切にはしたい。だが俺は、正直女の子が苦手だ。男同士でこうして遊んでいる方が何倍も楽しい」
淡々とそう語られたミハエルの言葉に、一瞬その場が静かになった。
しかし、その言葉を聞いた学友たちは一斉に雄たけびを上げていた。
「うおーー! はっず!! でも、よく言った! 男同士の気軽な付き合いって最高だよな!!」
「あはは! 俺もミハエルやシュミットたちといる時が楽しいぜ!!」
その場は大いに盛り上がる。
男同士の友情に沸いたその場から近い場所で偶然この会話を聞いていたシユニナは、自分が今まで勘違いしていたことを知ってしまう。
(恥ずかしい……。私、ミーシャに好かれてるって……。そう思っていた……。だけど、それは親友のお兄様の妹だから大事にされていただけ……。ううぅ……)
シユニナは、美しいミハエルの姿を脳裏に浮かべて溜息を吐く。
(はぁ……。そうよね、ミーシャよりも全然背は低いし、もう十四歳になるのに胸もぺちゃんこで……。全然ミーシャに釣り合っていないわ……。でも、諦めたくない……。だけど、性別はどうしようもないわ……。女の子が苦手……。でも私のことはお兄様の妹として大切にしてくれる……。っ! それって、女の子として見られていないってこと?)
そこまで考えたシユニナは、大きなショックを受ける。
しかし、シユニナがそのまま落ち込んで過ごすことはなかった。
「お父様、お母様、お兄様! 予てよりお誘いのあった隣国に留学します! もう手続きも終えています。私は自分を鍛え直して、人として成長してみせます。帰国はいつになるか分かりませんが、自分に自信が付いたら戻ります!」
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