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第十五話
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その後、ぐちゃぐちゃになった服を目の前にしたシユニナは、この後どうしたらいいのかと頭を抱えることとなった。
そんなシユニナにミハエルは言うのだ。
「大丈夫。全て俺に任せなさい」
そう言ったミハエルは、シユニナを仮眠室の奥にある簡易シャワー室まで連れて行き、その身を綺麗にした。
ただ、腰が抜けてしまったシユニナを綺麗にするだけだと言いつつ、全身をミハエルに愛撫されてため、体が綺麗になることろにはシユニナの意識は遠のいてしまっていた。
気を失ったシユニナの体を拭いたミハエルは、急いでシユニナの服と下着を買いに向かう。
そして、可愛らしい下着とワンピースを購入したミハエルは、未だに眠ったままのシユニナの枕元に服を置いて執務室に戻る。
そして、何か書類を書いてから執務室を出たのだ。
向かった先は、団長室だった。
騎士団長は、剣の腕もあり、カリスマ性も抜群だったが、書類仕事が全くできない男だった。
そのため、本来騎士団長が負うべき書類仕事もミハエルが担当していたのだ。
騎士団長は、ミハエルがいつになくご機嫌そうな様子だったので、嫌な予感を覚えつつ要件を聞かないわけにはいかなかった。
「どうした……?」
「ええ。団長には、沢山借りがありましたよね?」
「おっ、おうぅ……」
「その借りを少し返してもらおうとか思いまして」
そう言ったミハエルは、先ほど書いた書類をにこやかな笑顔で差し出していた。
嫌な汗をかきながら騎士団長は、その内容に目を通した。
「新人のシユの引き抜き? まぁ、これはいいとして……。この後の、数名の騎士たちへの特別訓練って言うのは……」
「そのままです。明日、下記の者たちを訓練場に招集してください。時間厳守。欠席も許しません。いいですね?」
物凄い迫力でそう念を押された騎士団長は、名簿の騎士たちの無事を祈りつつ、自分の身を護るために、部下をミハエルに捧げたのだった。
団長室を後にしたミハエルが執務室の奥にある仮眠室に入ると、シユニナはまだ眠ったままだった。
このまま寝かせておきたいところではあるが、このままにしておくことが出来なかったミハエルは、数式を思い浮かべながら購入してきた衣類を手に取った。
意識のないシユニナに下着を履かせながら、円周率を繰り返し頭に思い浮かべていると、用意した下着にシユニナの豊満な胸が収まり切れない事実に気が付く。
大きいかもしれないと思って買ってきたワンピースも、ウエストはぶかぶかなのに対して、胸の部分がきつく、前を締めることが出来なかったのだ。
何とかシユニナに形ばかりではあるが服を着せたミハエルは、自分の上着でシユニナを包んだ後、横抱きにして騎士団を後にした。
馬車に乗ったミハエルは、アガート伯爵と夫人、そしてシュミットになんと説明すればいいのかと思わなくもなかったが、別におかしなことをした訳ではないと開き直ることにしたのだ。
アガート伯爵邸についてミハエルは、驚くアガート伯爵夫人にシユニナを先に寝かせた後に説明すると言って、まっすぐにシユニナの私室に向かった。
ゆっくりとベッドにシユニナを寝かせたミハエルは、専属侍女のカレンにシユニナの身支度を任せてから、アガート伯爵夫人の元へ向かった。
「愛の力で、シユニナを女性の姿に戻しました」
「え?」
ミハエルの言ったことは、嘘のようだが本当のことだった。
お互いの体にある剣と鞘の力で男性化を解いたのだから。
元々あまり深く考えないアガート伯爵夫人は、目を丸くはさせていたがすぐにその言葉を受け入れていた。
「う~ん。よく分からないけれど、分かったわ。ふふっ。シユニナが元に戻ったのなら今度こそ結婚式の準備をしなくちゃね」
「はい。実は、俺の方で進めていたので、いつでも大丈夫です」
「まあぁ! それなら、旦那様に相談したうえでお日にちを決めないと」
「それでは、明日また来ます」
「そう? 良ければ泊っていってもいいのよ?」
「いえ、やらなければいけないことがあるので今日は失礼します。それでは、明日の昼過ぎにまた来ます」
そう言ったミハエルは、すぐさまシュニッツッァ侯爵邸に戻って行った。
そして、翌日。
朝も早い時間に騎士団の訓練場に現れたミハエルは、既にそろっていた騎士たちに言ったのだ。
「今からお前たちに特別訓練を課す」
そう言ったミハエルは、騎士たちに練習用の刃を潰している剣を持たせて言うのだ。
「運が良すぎるお前たちに俺が特別に訓練を付けてやろう。時間が惜しい、実戦形式で行く。どこからでもいい、全員まとめてかかってこい」
そう言ったミハエルは、物凄い殺気を周囲に放つ。
誰もかかってくる者がいないことが分かると、近い場所にいる者から何の躊躇もなく蹴散らし始めたのだ。
それを見ていた者は、このままでは逃げ出そうとしたが無駄だった。
意識が飛ばない程度に剣を叩きつけられ、飛ばされ、地面に這いつくばる。
そんなことを繰り返していると、全員の頭がそのうち冴えていき、ただミハエルに少しでもいいから土を付けてやりたいという気持ちだけが湧いてくる。
最初は逃げ腰だった騎士たちは、気が付けば真剣にミハエルの特別訓練にのめり込んでいたのだ。
体中は痛いが、それでも自分が少しでも強さを身に着けたような実感が湧く。そんな訓練だった。
昼前には、全員が清々しい気持ちで訓練を終えていた。
騎士たちの頭の中には、もっと強くなりたいという考えしか残っていなかった。
昨日見たはずの白いたわわな果実のことを完全に忘れ去った、強くなることの素晴らしさに目覚めた騎士たちだったが、それと同時に性欲もきれいさっぱり失っていたのだ。
その事実に気が付いた騎士たちの嘆きの声が数週間続くこととなるとは、この時知る者はいなかった。
昨日、シユニナの肌を見た者たちの記憶と性欲を(数週間の間)綺麗に消したミハエルは、清々した気持ちで身支度を整える。
騎士団長には、昨日のうちに半休の申請をしていたので、そのままアガート伯爵邸に向かった。
そんなシユニナにミハエルは言うのだ。
「大丈夫。全て俺に任せなさい」
そう言ったミハエルは、シユニナを仮眠室の奥にある簡易シャワー室まで連れて行き、その身を綺麗にした。
ただ、腰が抜けてしまったシユニナを綺麗にするだけだと言いつつ、全身をミハエルに愛撫されてため、体が綺麗になることろにはシユニナの意識は遠のいてしまっていた。
気を失ったシユニナの体を拭いたミハエルは、急いでシユニナの服と下着を買いに向かう。
そして、可愛らしい下着とワンピースを購入したミハエルは、未だに眠ったままのシユニナの枕元に服を置いて執務室に戻る。
そして、何か書類を書いてから執務室を出たのだ。
向かった先は、団長室だった。
騎士団長は、剣の腕もあり、カリスマ性も抜群だったが、書類仕事が全くできない男だった。
そのため、本来騎士団長が負うべき書類仕事もミハエルが担当していたのだ。
騎士団長は、ミハエルがいつになくご機嫌そうな様子だったので、嫌な予感を覚えつつ要件を聞かないわけにはいかなかった。
「どうした……?」
「ええ。団長には、沢山借りがありましたよね?」
「おっ、おうぅ……」
「その借りを少し返してもらおうとか思いまして」
そう言ったミハエルは、先ほど書いた書類をにこやかな笑顔で差し出していた。
嫌な汗をかきながら騎士団長は、その内容に目を通した。
「新人のシユの引き抜き? まぁ、これはいいとして……。この後の、数名の騎士たちへの特別訓練って言うのは……」
「そのままです。明日、下記の者たちを訓練場に招集してください。時間厳守。欠席も許しません。いいですね?」
物凄い迫力でそう念を押された騎士団長は、名簿の騎士たちの無事を祈りつつ、自分の身を護るために、部下をミハエルに捧げたのだった。
団長室を後にしたミハエルが執務室の奥にある仮眠室に入ると、シユニナはまだ眠ったままだった。
このまま寝かせておきたいところではあるが、このままにしておくことが出来なかったミハエルは、数式を思い浮かべながら購入してきた衣類を手に取った。
意識のないシユニナに下着を履かせながら、円周率を繰り返し頭に思い浮かべていると、用意した下着にシユニナの豊満な胸が収まり切れない事実に気が付く。
大きいかもしれないと思って買ってきたワンピースも、ウエストはぶかぶかなのに対して、胸の部分がきつく、前を締めることが出来なかったのだ。
何とかシユニナに形ばかりではあるが服を着せたミハエルは、自分の上着でシユニナを包んだ後、横抱きにして騎士団を後にした。
馬車に乗ったミハエルは、アガート伯爵と夫人、そしてシュミットになんと説明すればいいのかと思わなくもなかったが、別におかしなことをした訳ではないと開き直ることにしたのだ。
アガート伯爵邸についてミハエルは、驚くアガート伯爵夫人にシユニナを先に寝かせた後に説明すると言って、まっすぐにシユニナの私室に向かった。
ゆっくりとベッドにシユニナを寝かせたミハエルは、専属侍女のカレンにシユニナの身支度を任せてから、アガート伯爵夫人の元へ向かった。
「愛の力で、シユニナを女性の姿に戻しました」
「え?」
ミハエルの言ったことは、嘘のようだが本当のことだった。
お互いの体にある剣と鞘の力で男性化を解いたのだから。
元々あまり深く考えないアガート伯爵夫人は、目を丸くはさせていたがすぐにその言葉を受け入れていた。
「う~ん。よく分からないけれど、分かったわ。ふふっ。シユニナが元に戻ったのなら今度こそ結婚式の準備をしなくちゃね」
「はい。実は、俺の方で進めていたので、いつでも大丈夫です」
「まあぁ! それなら、旦那様に相談したうえでお日にちを決めないと」
「それでは、明日また来ます」
「そう? 良ければ泊っていってもいいのよ?」
「いえ、やらなければいけないことがあるので今日は失礼します。それでは、明日の昼過ぎにまた来ます」
そう言ったミハエルは、すぐさまシュニッツッァ侯爵邸に戻って行った。
そして、翌日。
朝も早い時間に騎士団の訓練場に現れたミハエルは、既にそろっていた騎士たちに言ったのだ。
「今からお前たちに特別訓練を課す」
そう言ったミハエルは、騎士たちに練習用の刃を潰している剣を持たせて言うのだ。
「運が良すぎるお前たちに俺が特別に訓練を付けてやろう。時間が惜しい、実戦形式で行く。どこからでもいい、全員まとめてかかってこい」
そう言ったミハエルは、物凄い殺気を周囲に放つ。
誰もかかってくる者がいないことが分かると、近い場所にいる者から何の躊躇もなく蹴散らし始めたのだ。
それを見ていた者は、このままでは逃げ出そうとしたが無駄だった。
意識が飛ばない程度に剣を叩きつけられ、飛ばされ、地面に這いつくばる。
そんなことを繰り返していると、全員の頭がそのうち冴えていき、ただミハエルに少しでもいいから土を付けてやりたいという気持ちだけが湧いてくる。
最初は逃げ腰だった騎士たちは、気が付けば真剣にミハエルの特別訓練にのめり込んでいたのだ。
体中は痛いが、それでも自分が少しでも強さを身に着けたような実感が湧く。そんな訓練だった。
昼前には、全員が清々しい気持ちで訓練を終えていた。
騎士たちの頭の中には、もっと強くなりたいという考えしか残っていなかった。
昨日見たはずの白いたわわな果実のことを完全に忘れ去った、強くなることの素晴らしさに目覚めた騎士たちだったが、それと同時に性欲もきれいさっぱり失っていたのだ。
その事実に気が付いた騎士たちの嘆きの声が数週間続くこととなるとは、この時知る者はいなかった。
昨日、シユニナの肌を見た者たちの記憶と性欲を(数週間の間)綺麗に消したミハエルは、清々した気持ちで身支度を整える。
騎士団長には、昨日のうちに半休の申請をしていたので、そのままアガート伯爵邸に向かった。
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