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第十六話
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昼過ぎに迎えに来たミハエルがシユニナを連れて行った先は、有名なブティックだった。
出迎えたブティックの女主人にシユニナの下着一式の手配を任せたミハエルは、出されたカタログに目を通して、シユニナに似合いそうなものを選んで、用意させた。
可愛らしいワンピースに袖を通したシユニナに満足したミハエルは、そのまま数件のブティックをはしごして、片っ端からシユニナの服を購入していく。
シユニナとしては、体に合う服が一着もなかったためとても有難がったがこんなに大量に購入されると、どうしていいのかと困惑してしまう。
「シユンは、何も気にしなくていい。ああ、他に気に入った物があれば言ってくれそれも買って行こう」
「ちっ……違うの!! こんなに沢山、困るわ! 私だって、ちょっとだけど騎士団で働いていたんだから、自分のお給金があるし!」
「俺が好きでやってるんだ。だから、俺のために受け取ってくれ」
「でも……」
それでも困った表情のシユニナに、ミハエルは楽しそうに耳ことに唇を寄せて囁くのだ。
「俺がプレゼントした服や下着を脱がす楽しみを奪わないで欲しいって言ったら?」
「んにゃぁ!」
「ははっ! 可愛いい俺のシユン」
そう言ったミハエルは、人目も気にせずに、ぎゅっとシユニナを抱きしめるのだ。
嬉しいような恥ずかしいような。
そんな複雑な気持ちのシユニナだったが、昨日思ったことは口にすると決めたからこそ、心の内を吐き出していた。
「嬉しいけれど……、エッチなことは恥ずかしいです……」
シユニナの言葉が嬉しかったミハエルは、ニコリと甘い笑みを浮かべた。
「ふふ。俺は、恥ずかしがるシユンも好きだから」
「もうっ!」
イチャイチャと戯れる二人は、勘違いで離れてしまっていた時間を埋めるようにその身を寄せ合い、気持ちを素直に伝え合うのだ。
それから、順調に婚約期間を過ごしていたシユニナは、ふと考えてしまった。
あの日、女の姿に戻った日。
エッチなことしたのは、あの日だけだということに気が付いたのだ。
あの日、ミハエルは初夜まで大切にしたいと言っていたが、結婚までには初体験を済ませてしまうのでないかと思っていたのとは裏腹に、とても清い交際が続いていたのだ。
喜ばしいことではあるが、シユニナとしては少しだけ、ほんの少しだけ不満だった。
ミハエルがどういった処理をしたのかは分からないが、彼からすぐに脱退の手続きがされていることを知らされたシユニナは、日々結婚式に向けての準備とミハエルとのデートを繰り返す毎日だった。
幸せだけど、何か物足りない。
そう思っていたシユニナは、カレンに淹れてもらった紅茶を飲みながらため息を吐いていた。
「はぁぁ……」
「何かお困りごとですか?」
「そう言う訳じゃないんだけど……」
「悩みがあるなら話してください。もしくは、シュニッツッァ侯爵令息様にはちゃんとご相談された方がよろしいのかと……」
二人の間にあったことを知らないはずのカレンだったが、なんとなく二人の中で行き違いがあって、あんなことになったのだろうという仮説が成り立っていたのだ。
だからこそ、今度はすれ違ったりしないようにとそう言ったのだ。
カレンにそう言われたシユニナは、「よし!」と自分に気合を入れる。
「うん。そうね。一人で抱え込んでしまうのは駄目だってちゃんと分かってるわ。だから……。今日、ミハエル様に夜這いをするわ!!」
「はい。それがいいかとぉ……って、はいぃ? よ、夜這いですか?!」
「うん! そうと決まれば、仮眠を取って夜に抜け出すわよ!!」
一度言い出したら何を言っても考えを変えることのないシユニナをよくわかっているカレンは、頭を抱えつつも、最愛の主人の願いを断れるわけもなく、結局協力することとなるのだ。
カイドとカレンの協力。そして、シュニッツッァ侯爵家の執事と侍女長の協力を得て、シユニナは、ミハエルの寝室のベッドに潜り込むことに成功していた。
ベッドに潜り込んだシユニナは、ミハエルの香りのする寝具の中で自分の大胆な行動に胸が弾けてしまいそうなくらいドキドキした。
しかし、中々ミハエルがベッドに横になる気配がしなかった。
寝室の隣に設けられている、書斎で仕事をしているようなのは、なんとなく気配で分かっていたのだが、遅い時間まで仕事をしていてシユニナは、心配になってしまう。
そんなことを考えているうちに、いつの間にかシユニナは、すうすうと寝息を立ててしまっていた。
それからしばらくして、片づけなければならない仕事が一段落したミハエルは、体の疲れを解すように湯に浸かっていた。
濡れた髪をかき上げて、そう言えばとあることを思い出していた。
今日に限って、いつもはうるさく言わない執事や侍女長が早く寝るようにとうるさかったのだ。
確かに、最近デートの時間を作るべく仕事を詰めていたこともあったが、今に始まったことでもなかったのだ。
そんなことを考えながら寝室に向かったミハエルは、寝具が奇妙に盛り上がったベッドに眉間を揉んでいた。
「俺は疲れているようだな……。ベッドに誰かいるような気がするのは……。よし、寝よう」
そう言って、寝具を捲ったミハエルは、本当に自分が働きすぎで疲れがピークに来たのだと考えた。
そうでなければあり得ない光景だったのだ。
愛しいシユニナが、薄いネグリジェ姿でミハエルのベッドで寝ている訳がないのだ。
「シユンが好きすぎる自覚はある。だが、妄想だとしてもこんな姿……。欲求不満がすぎるだろう俺……」
そう言いつつ、夢の中のシユニナに手を伸ばす。
「柔らかい……」
まるで本物ような手触り、柔らかさ。甘い香り。
たわわな胸の果実に触ると、手が沈み込むような柔らかさと弾力についつい手が動いてしまっていた。
夢の中のシユニナは、ミハエルの手の動きに胸の先端を硬くさせて、甘い吐息を溢したのだ。
ミハエルは、夢中で夢の中のシユニナの胸を舐めて吸って、空いている手で自身のペニスを扱いていた。
溜まっていた自覚のあったミハエルは、早々に熱いモノを吐き出していた。
体を弛緩させたミハエルは、夢の中のシユニナの胸に顔を埋めてその柔らかさに幸せを感じた。
ぼんやりとしながらそんなことを思っていると、夢の中のシユニナがミハエルを抱きしめてのだ。
「ふぁぁ……。眠ってしまったわ……。あら?」
やけに鮮明に聞こえるシユニナの声に、ミハエルは、これが夢ではないことにようやく気が付くのだ。
「えっ? シユン?」
「はい」
「ど……どうして?」
「えっと、考えた結果です。私、ミハエル様を襲いに来ました」
「え?」
「夜這いです!」
そう言ったシユニナは、驚くミハエルの唇に自身の唇をくっつけて、たどたどしいながらも舌を合わせて、深いキスをしたのだ。
出迎えたブティックの女主人にシユニナの下着一式の手配を任せたミハエルは、出されたカタログに目を通して、シユニナに似合いそうなものを選んで、用意させた。
可愛らしいワンピースに袖を通したシユニナに満足したミハエルは、そのまま数件のブティックをはしごして、片っ端からシユニナの服を購入していく。
シユニナとしては、体に合う服が一着もなかったためとても有難がったがこんなに大量に購入されると、どうしていいのかと困惑してしまう。
「シユンは、何も気にしなくていい。ああ、他に気に入った物があれば言ってくれそれも買って行こう」
「ちっ……違うの!! こんなに沢山、困るわ! 私だって、ちょっとだけど騎士団で働いていたんだから、自分のお給金があるし!」
「俺が好きでやってるんだ。だから、俺のために受け取ってくれ」
「でも……」
それでも困った表情のシユニナに、ミハエルは楽しそうに耳ことに唇を寄せて囁くのだ。
「俺がプレゼントした服や下着を脱がす楽しみを奪わないで欲しいって言ったら?」
「んにゃぁ!」
「ははっ! 可愛いい俺のシユン」
そう言ったミハエルは、人目も気にせずに、ぎゅっとシユニナを抱きしめるのだ。
嬉しいような恥ずかしいような。
そんな複雑な気持ちのシユニナだったが、昨日思ったことは口にすると決めたからこそ、心の内を吐き出していた。
「嬉しいけれど……、エッチなことは恥ずかしいです……」
シユニナの言葉が嬉しかったミハエルは、ニコリと甘い笑みを浮かべた。
「ふふ。俺は、恥ずかしがるシユンも好きだから」
「もうっ!」
イチャイチャと戯れる二人は、勘違いで離れてしまっていた時間を埋めるようにその身を寄せ合い、気持ちを素直に伝え合うのだ。
それから、順調に婚約期間を過ごしていたシユニナは、ふと考えてしまった。
あの日、女の姿に戻った日。
エッチなことしたのは、あの日だけだということに気が付いたのだ。
あの日、ミハエルは初夜まで大切にしたいと言っていたが、結婚までには初体験を済ませてしまうのでないかと思っていたのとは裏腹に、とても清い交際が続いていたのだ。
喜ばしいことではあるが、シユニナとしては少しだけ、ほんの少しだけ不満だった。
ミハエルがどういった処理をしたのかは分からないが、彼からすぐに脱退の手続きがされていることを知らされたシユニナは、日々結婚式に向けての準備とミハエルとのデートを繰り返す毎日だった。
幸せだけど、何か物足りない。
そう思っていたシユニナは、カレンに淹れてもらった紅茶を飲みながらため息を吐いていた。
「はぁぁ……」
「何かお困りごとですか?」
「そう言う訳じゃないんだけど……」
「悩みがあるなら話してください。もしくは、シュニッツッァ侯爵令息様にはちゃんとご相談された方がよろしいのかと……」
二人の間にあったことを知らないはずのカレンだったが、なんとなく二人の中で行き違いがあって、あんなことになったのだろうという仮説が成り立っていたのだ。
だからこそ、今度はすれ違ったりしないようにとそう言ったのだ。
カレンにそう言われたシユニナは、「よし!」と自分に気合を入れる。
「うん。そうね。一人で抱え込んでしまうのは駄目だってちゃんと分かってるわ。だから……。今日、ミハエル様に夜這いをするわ!!」
「はい。それがいいかとぉ……って、はいぃ? よ、夜這いですか?!」
「うん! そうと決まれば、仮眠を取って夜に抜け出すわよ!!」
一度言い出したら何を言っても考えを変えることのないシユニナをよくわかっているカレンは、頭を抱えつつも、最愛の主人の願いを断れるわけもなく、結局協力することとなるのだ。
カイドとカレンの協力。そして、シュニッツッァ侯爵家の執事と侍女長の協力を得て、シユニナは、ミハエルの寝室のベッドに潜り込むことに成功していた。
ベッドに潜り込んだシユニナは、ミハエルの香りのする寝具の中で自分の大胆な行動に胸が弾けてしまいそうなくらいドキドキした。
しかし、中々ミハエルがベッドに横になる気配がしなかった。
寝室の隣に設けられている、書斎で仕事をしているようなのは、なんとなく気配で分かっていたのだが、遅い時間まで仕事をしていてシユニナは、心配になってしまう。
そんなことを考えているうちに、いつの間にかシユニナは、すうすうと寝息を立ててしまっていた。
それからしばらくして、片づけなければならない仕事が一段落したミハエルは、体の疲れを解すように湯に浸かっていた。
濡れた髪をかき上げて、そう言えばとあることを思い出していた。
今日に限って、いつもはうるさく言わない執事や侍女長が早く寝るようにとうるさかったのだ。
確かに、最近デートの時間を作るべく仕事を詰めていたこともあったが、今に始まったことでもなかったのだ。
そんなことを考えながら寝室に向かったミハエルは、寝具が奇妙に盛り上がったベッドに眉間を揉んでいた。
「俺は疲れているようだな……。ベッドに誰かいるような気がするのは……。よし、寝よう」
そう言って、寝具を捲ったミハエルは、本当に自分が働きすぎで疲れがピークに来たのだと考えた。
そうでなければあり得ない光景だったのだ。
愛しいシユニナが、薄いネグリジェ姿でミハエルのベッドで寝ている訳がないのだ。
「シユンが好きすぎる自覚はある。だが、妄想だとしてもこんな姿……。欲求不満がすぎるだろう俺……」
そう言いつつ、夢の中のシユニナに手を伸ばす。
「柔らかい……」
まるで本物ような手触り、柔らかさ。甘い香り。
たわわな胸の果実に触ると、手が沈み込むような柔らかさと弾力についつい手が動いてしまっていた。
夢の中のシユニナは、ミハエルの手の動きに胸の先端を硬くさせて、甘い吐息を溢したのだ。
ミハエルは、夢中で夢の中のシユニナの胸を舐めて吸って、空いている手で自身のペニスを扱いていた。
溜まっていた自覚のあったミハエルは、早々に熱いモノを吐き出していた。
体を弛緩させたミハエルは、夢の中のシユニナの胸に顔を埋めてその柔らかさに幸せを感じた。
ぼんやりとしながらそんなことを思っていると、夢の中のシユニナがミハエルを抱きしめてのだ。
「ふぁぁ……。眠ってしまったわ……。あら?」
やけに鮮明に聞こえるシユニナの声に、ミハエルは、これが夢ではないことにようやく気が付くのだ。
「えっ? シユン?」
「はい」
「ど……どうして?」
「えっと、考えた結果です。私、ミハエル様を襲いに来ました」
「え?」
「夜這いです!」
そう言ったシユニナは、驚くミハエルの唇に自身の唇をくっつけて、たどたどしいながらも舌を合わせて、深いキスをしたのだ。
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