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第二話
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シュナイゼルが用意してくれたご飯を食べ終わったわたしは、湯船に浸かりながら今日の出来事を思い返して水面を叩いていた。
お湯をバシャバシャと数度叩いた後に、天井を仰ぎ見て今日の失敗を思い返していた。
わたしは、落ちこぼれと呼ばれる第三王子が統率する第三騎士団に身を置いていた。
そこでは、月に一度、体力テストと模擬戦闘が行われていた。
わたしの中の基準は、呪いにかかる前のシュナイゼルだったことが災いしてしまった。
シュナイゼルが剣の天才とということを忘れていたわたしは、シュナイゼルが簡単に出来ることは、誰でも出来て当たり前だと思い込んでいたのよ。
だから、身体操作と体力増強、身体強化を盛に盛ったわたしは、あっさりと体力テストと模擬戦闘を上位の成績でというか、一番の成績で終えたのよ。
長距離走の時点で前後に誰もいなくて、てっきり遅すぎて周りにいつの間にか置いてけぼりにされてしまったと思い込んでしまった私は、頑張りすぎてしまっていたのだ。
気が付けば断トツの一位になってしまっていたのよね。
そして、模擬戦闘では、シュナイゼルの動きを念頭に置いて体を操作していたら、いつの間にか勝ち進んでしまっていて……。
第三騎士団に所属してから目立たないようにとひっそりと動いていたのに、それを自分で台無しにしてしまったのだ。
入団当初は、同期入団した令息たちに『王太子の元婚約者の弟』とか『令嬢として終わってる貰い手のない可哀相な女の弟』とか陰口を叩かれていたわたしだったけど、全て本当のことなので全部無視して、与えられた仕事を地味に目立たないように遂行していたのよ。
そうしたら、いつの間にかいてもいなくても同じような人間と周囲に認識されたことで陰口をあまり言われなくなっていた。
だけど、本当のシュナイゼルには絶対に聞かせられない陰口にわたしは別の意味で冷や汗が止まらなかった。
もし、シュナイゼルが聞いたら、わたしの陰口を言った人間をボコボコにしていたことだろうから。
シュナイゼルは、わたしのことをとても慕ってくれていて……、なのにわたしが昔しくじってしまったことで、肩身の狭い思いをさせてしまってとても申し訳ないわ。
でも、そんなことよりも今の状況の方が問題なのよ。
どうして第三騎士団の団長である第三王子がこんな入団して一月のひよっこ共を見に来るのよ!!
模擬戦闘が終わって、わたしの所属する第四部隊の隊長から呼び出されたとき、嫌な予感はしたけどいかない訳にもいかなかったのよね。
執務室に入って、第三王子であるベルナルドゥズ・ディアドラ殿下がソファーに座っているのを見た時に本気で逃げ出したかった。
数年ぶりに見た彼はとても素敵な大人の男性へと成長していた。
ダークブラウンの髪は綺麗にセットされていて、綺麗な金色の瞳がよく見えた。
騎士団を率いる団長だけあって、見上げるくらいの高長身に加えて、武人らしく綺麗に筋肉の付いた体つきと、見とれるほどの凛々しいお顔を見た時、不敬ではあるけど別の人のお顔を思い浮かべてしまっていた。
だけど、それを振り払うようにして家臣の礼を取ったわたしに、第三王子殿下は、軽い調子で言ったのだ。
「シュナイゼル・アーデン……だな。ふーん、…………。くくっ。面白いな。気に入ったよ」
気のせいかもしれないけど、似てるって言われた気がして微かに表情が揺らいでしまったわたしだったけど、それよりも第三王子殿下の次の言葉にそれどころでは無くなっていた。
「ゼル、明日から俺の元で働いてもらうぞ」
何を言われたのか理解したくないわたしは、無言で瞳を瞬く事しか出来なかった。
だけど、何が気に入ったのか第三王子殿下は、ソファーから立ち上がってわたしの側まで来たかと思ったら、髪を乱暴に撫でてにかっと笑ったのだ。
乱暴な手付きではあったけど、優しい手のひらに短く切った髪をくすぐられ、指が離れる一瞬耳をかすめた指先にびくりと肩を竦めてしまっていた。
第三王子殿下は、何故か顔を赤くして怒ったような表情で部屋を出て行ってしまったのだ。
その場に残されたわたしは、同じく部屋に残っていた隊長に明日からの行動についての指示を受けてから重い足取りで部屋を後にしたのだった。
お湯に浸かりながら、昔の第三王子殿下を思い浮かべたわたしは、時の流れについて実感していた。
わたしのことを『義姉上』と呼んでいた少年が青年に成長した姿にだ。
当時、わたしが十二歳で第三王子殿下は十六歳だった。年下のわたしをわざわざ『義姉上』と呼んで揶揄っていた少年。
そして、そんな少年の揶揄いに困っていると必ず助けてくれた大好きな……。
そこまで考えたわたしだったけど、それを断ち切るようにしてお湯から上がっていた。
そして、ベッドの上で習慣になっている足のマッサージを行う。
あの事故以来、わたしの足は感覚を失っていた。
医師の見立てでは完治しているということだったけど、わたしはあの日以来歩くことが出来なくなっていた。
わたしを見てくれた医師によると、事故のショックによる後遺症で、いづれ元の様に歩けるようになると。
でも、あれから四年が経った今も、わたしの足は動かないままだった。
だけど、わたしには魔力があったから、動かなくなった足を無理やり動かして日常を送っていた。
マッサージを終えたわたしは、ベッドに入ってから明日からのことをあれこれ考えている内にいつの間にか眠ってしまっていた。
そして翌日、わたしが第三騎士団の本部に向かうと、まさかの展開が待ち受けていただなんて、この時のわたしは思ってもいなかったのよ。
お湯をバシャバシャと数度叩いた後に、天井を仰ぎ見て今日の失敗を思い返していた。
わたしは、落ちこぼれと呼ばれる第三王子が統率する第三騎士団に身を置いていた。
そこでは、月に一度、体力テストと模擬戦闘が行われていた。
わたしの中の基準は、呪いにかかる前のシュナイゼルだったことが災いしてしまった。
シュナイゼルが剣の天才とということを忘れていたわたしは、シュナイゼルが簡単に出来ることは、誰でも出来て当たり前だと思い込んでいたのよ。
だから、身体操作と体力増強、身体強化を盛に盛ったわたしは、あっさりと体力テストと模擬戦闘を上位の成績でというか、一番の成績で終えたのよ。
長距離走の時点で前後に誰もいなくて、てっきり遅すぎて周りにいつの間にか置いてけぼりにされてしまったと思い込んでしまった私は、頑張りすぎてしまっていたのだ。
気が付けば断トツの一位になってしまっていたのよね。
そして、模擬戦闘では、シュナイゼルの動きを念頭に置いて体を操作していたら、いつの間にか勝ち進んでしまっていて……。
第三騎士団に所属してから目立たないようにとひっそりと動いていたのに、それを自分で台無しにしてしまったのだ。
入団当初は、同期入団した令息たちに『王太子の元婚約者の弟』とか『令嬢として終わってる貰い手のない可哀相な女の弟』とか陰口を叩かれていたわたしだったけど、全て本当のことなので全部無視して、与えられた仕事を地味に目立たないように遂行していたのよ。
そうしたら、いつの間にかいてもいなくても同じような人間と周囲に認識されたことで陰口をあまり言われなくなっていた。
だけど、本当のシュナイゼルには絶対に聞かせられない陰口にわたしは別の意味で冷や汗が止まらなかった。
もし、シュナイゼルが聞いたら、わたしの陰口を言った人間をボコボコにしていたことだろうから。
シュナイゼルは、わたしのことをとても慕ってくれていて……、なのにわたしが昔しくじってしまったことで、肩身の狭い思いをさせてしまってとても申し訳ないわ。
でも、そんなことよりも今の状況の方が問題なのよ。
どうして第三騎士団の団長である第三王子がこんな入団して一月のひよっこ共を見に来るのよ!!
模擬戦闘が終わって、わたしの所属する第四部隊の隊長から呼び出されたとき、嫌な予感はしたけどいかない訳にもいかなかったのよね。
執務室に入って、第三王子であるベルナルドゥズ・ディアドラ殿下がソファーに座っているのを見た時に本気で逃げ出したかった。
数年ぶりに見た彼はとても素敵な大人の男性へと成長していた。
ダークブラウンの髪は綺麗にセットされていて、綺麗な金色の瞳がよく見えた。
騎士団を率いる団長だけあって、見上げるくらいの高長身に加えて、武人らしく綺麗に筋肉の付いた体つきと、見とれるほどの凛々しいお顔を見た時、不敬ではあるけど別の人のお顔を思い浮かべてしまっていた。
だけど、それを振り払うようにして家臣の礼を取ったわたしに、第三王子殿下は、軽い調子で言ったのだ。
「シュナイゼル・アーデン……だな。ふーん、…………。くくっ。面白いな。気に入ったよ」
気のせいかもしれないけど、似てるって言われた気がして微かに表情が揺らいでしまったわたしだったけど、それよりも第三王子殿下の次の言葉にそれどころでは無くなっていた。
「ゼル、明日から俺の元で働いてもらうぞ」
何を言われたのか理解したくないわたしは、無言で瞳を瞬く事しか出来なかった。
だけど、何が気に入ったのか第三王子殿下は、ソファーから立ち上がってわたしの側まで来たかと思ったら、髪を乱暴に撫でてにかっと笑ったのだ。
乱暴な手付きではあったけど、優しい手のひらに短く切った髪をくすぐられ、指が離れる一瞬耳をかすめた指先にびくりと肩を竦めてしまっていた。
第三王子殿下は、何故か顔を赤くして怒ったような表情で部屋を出て行ってしまったのだ。
その場に残されたわたしは、同じく部屋に残っていた隊長に明日からの行動についての指示を受けてから重い足取りで部屋を後にしたのだった。
お湯に浸かりながら、昔の第三王子殿下を思い浮かべたわたしは、時の流れについて実感していた。
わたしのことを『義姉上』と呼んでいた少年が青年に成長した姿にだ。
当時、わたしが十二歳で第三王子殿下は十六歳だった。年下のわたしをわざわざ『義姉上』と呼んで揶揄っていた少年。
そして、そんな少年の揶揄いに困っていると必ず助けてくれた大好きな……。
そこまで考えたわたしだったけど、それを断ち切るようにしてお湯から上がっていた。
そして、ベッドの上で習慣になっている足のマッサージを行う。
あの事故以来、わたしの足は感覚を失っていた。
医師の見立てでは完治しているということだったけど、わたしはあの日以来歩くことが出来なくなっていた。
わたしを見てくれた医師によると、事故のショックによる後遺症で、いづれ元の様に歩けるようになると。
でも、あれから四年が経った今も、わたしの足は動かないままだった。
だけど、わたしには魔力があったから、動かなくなった足を無理やり動かして日常を送っていた。
マッサージを終えたわたしは、ベッドに入ってから明日からのことをあれこれ考えている内にいつの間にか眠ってしまっていた。
そして翌日、わたしが第三騎士団の本部に向かうと、まさかの展開が待ち受けていただなんて、この時のわたしは思ってもいなかったのよ。
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