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第五話 side-マティウス-
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最近、ベルナルドゥズの様子がおかしい。
ベルナルドゥズは、一見飄々としたお調子者に見えるが、その実、周囲をよく見ている思いやりのある男だ。
周囲の者は、そんなベルナルドゥズの行動を好意的に見る者とそうでない者が半々といったところだ。
だが、私はベルナルドゥズのそういった私とは違う、そんな生き方を羨ましいと思ってしまうことがあった。
しかし、最近実しやかに囁かれているベルナルドゥズのスキャンダラスな噂話が真実なのではないかと周囲の者たちが私に報告するのだ。
皆、ベルナルドゥズと王家のことを心配しての進言だと知ってはいる。
だが、ベルナルドゥズが新人騎士に熱を上げているなどという噂は到底信じられなかった。
ベルナルドゥズは、兄の俺から見ても鍛えられた体と端正な顔立ちで女性に人気のある男だ。
そんなベルナルドゥズが、男に走るなど考えられない。
しかし、その相手が問題だった。
フェルルカ・アーデンの弟のシュナイゼル・アーデンだというのだ。
二人はとてもよく似た双子の姉弟だったことをよく知っている。
シュナイゼルに会う機会はほとんどなかったが、フェルルカは、よく言っていたのだ。
自分と弟のシュナイゼルはとてもよく似ていると。服を交換したら父や母でも気が付かないかもしれないと。
それほど良く似た二人だ。
あれから四年。
十六歳になったフェルルカは、きっと美しく可憐に成長したことだろう。
そして、その弟のシュナイゼルも美しい成長を遂げたのだろう。
そんなことを思いながら、愛しい少女の成長した姿を思い浮かべようとした瞬間、彼女が血まみれになって倒れている姿が頭を過ってきつく瞼を閉じた。
忘れることのできない、あの日の出来事。
私の所為でフェルルカは……。
そこまで考えた私は、先日、部下から報告された内容を思い出してきつく唇を噛んだ。
シュナイゼルが、王都の侯爵邸ではなく、小さな家を購入しそこでフェルルカと暮らしているという内容をだ。
フェルルカが手の届く距離にいると知ってしまった私は、会いたいと思う気持ちを抑えるのが日増しに難しくなっていることを痛感していた。
だが会うことはできない。
会えば、四年前に勝手に婚約を破棄した私の我儘で、またフェルルカを苦しめるのは目に見えているのだから。
彼女の幸せを思うのなら、手を離した方がいいのだ。
私といると彼女をきっと、また危険な目に合わせてしまう。フェルルカは、私の身に危険が迫れば、またその身を盾にしてでも私を庇おうとするに決まっている。
私が、ベルナルドゥズの様に剣の才があれば……、いや、非凡な私が何を羨んでも仕方ない。
だから、あの時私は、彼女と離れると決めたのだ。
彼女を守るために。離れると。もう二度と会わないと決めたのだ。
ベルナルドゥズは、一見飄々としたお調子者に見えるが、その実、周囲をよく見ている思いやりのある男だ。
周囲の者は、そんなベルナルドゥズの行動を好意的に見る者とそうでない者が半々といったところだ。
だが、私はベルナルドゥズのそういった私とは違う、そんな生き方を羨ましいと思ってしまうことがあった。
しかし、最近実しやかに囁かれているベルナルドゥズのスキャンダラスな噂話が真実なのではないかと周囲の者たちが私に報告するのだ。
皆、ベルナルドゥズと王家のことを心配しての進言だと知ってはいる。
だが、ベルナルドゥズが新人騎士に熱を上げているなどという噂は到底信じられなかった。
ベルナルドゥズは、兄の俺から見ても鍛えられた体と端正な顔立ちで女性に人気のある男だ。
そんなベルナルドゥズが、男に走るなど考えられない。
しかし、その相手が問題だった。
フェルルカ・アーデンの弟のシュナイゼル・アーデンだというのだ。
二人はとてもよく似た双子の姉弟だったことをよく知っている。
シュナイゼルに会う機会はほとんどなかったが、フェルルカは、よく言っていたのだ。
自分と弟のシュナイゼルはとてもよく似ていると。服を交換したら父や母でも気が付かないかもしれないと。
それほど良く似た二人だ。
あれから四年。
十六歳になったフェルルカは、きっと美しく可憐に成長したことだろう。
そして、その弟のシュナイゼルも美しい成長を遂げたのだろう。
そんなことを思いながら、愛しい少女の成長した姿を思い浮かべようとした瞬間、彼女が血まみれになって倒れている姿が頭を過ってきつく瞼を閉じた。
忘れることのできない、あの日の出来事。
私の所為でフェルルカは……。
そこまで考えた私は、先日、部下から報告された内容を思い出してきつく唇を噛んだ。
シュナイゼルが、王都の侯爵邸ではなく、小さな家を購入しそこでフェルルカと暮らしているという内容をだ。
フェルルカが手の届く距離にいると知ってしまった私は、会いたいと思う気持ちを抑えるのが日増しに難しくなっていることを痛感していた。
だが会うことはできない。
会えば、四年前に勝手に婚約を破棄した私の我儘で、またフェルルカを苦しめるのは目に見えているのだから。
彼女の幸せを思うのなら、手を離した方がいいのだ。
私といると彼女をきっと、また危険な目に合わせてしまう。フェルルカは、私の身に危険が迫れば、またその身を盾にしてでも私を庇おうとするに決まっている。
私が、ベルナルドゥズの様に剣の才があれば……、いや、非凡な私が何を羨んでも仕方ない。
だから、あの時私は、彼女と離れると決めたのだ。
彼女を守るために。離れると。もう二度と会わないと決めたのだ。
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