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第九話
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ベルナー様は、公務があると言って驚くわたしを残してそそくさと部屋を出て行ってしまった。。
だけど、部屋を出る時に念を押すように「任務内容を聞いた以上ゼルに拒否権はないからな」と言って出て行ったのだ。
当日までに何度も考え直してほしいと訴えようとしたけど、第三王子という立場上、舞踏会に向けて色々やることがあるそうで、お会いすることが出来ないまま当日を迎えていた。
そして、重い足取りで騎士団に向かうと、とてもにこやかなベルナー様が待ち受けていたのだ。
「やあ、今日もいい日になりそうだね」
そう言って、わたしを拘束した後に馬車に乗ったのだった。
色々と不安が顔に出ているわたしに向かって、ベルナー様はこれから向かう場所について話してくれた。
「これから俺の所持している屋敷に向かう。そこでゼルには着替えをしてもらうからな。着替えが済んだら会場に向かおう」
「え、あの……」
戸惑うわたしにはお構いなしな様子で、ベルナー様は続けて言ったのだ。
「大丈夫。衣装も準備してるから、身一つで来てもらえばいいから」
「いえ……。そういうことではなくてですね……」
わたしの戸惑いなど全く気が付いていないのか、それとも敢えて気が付いていないふりで誤魔化しているのか判断しかねている内に、目的地に着いたようで馬車が止まっていた。
わたしはベルナー様に半分抱えられるように馬車を降ろされて屋敷の中に入っていた。
屋敷の中の一室に通されたわたしは、室内に置かれたものに目を見開くこととなった。
部屋の中には淡いブルーの可愛らしいドレスがあったのだ。
それを見て、全身から冷や汗を掻い焦っているわたしに向かって、ベルナー様は、少し楽しそうな表情で言ったのだ。
「悪いな。ゼルにはこれを着てもらうな。着つけは口の堅い侍女が行うから安心しろ」
「いやいやいや……! 無理です!! ドレスなんて無理ですから!」
わたしが全力で否定して首を横に振っていると、ベルナー様は小さく首を傾げて不思議そうに言ったのだ。
「えー? 可愛いと思うけどなぁ。まぁ、女装なんて他の騎士連中に知られたくないってのは理解する。だが、ゼルのドレス姿は可愛いと思うから絶対に大丈夫だ」
大丈夫な訳あるものですか!!
意味が分からない!
男装したうえで女装するって、意味不明な状況にわたしは心の中でツッコミを入れていた。
本来女であるわたしの女装で周囲に男だと思われたらそれはそれで別のダメージがあるけど……。
無理なものは無理!!
「可愛くなんてないです!! わたしは男なのですよ! 駄目です。騎士としてそんなこと無理です駄目です!!」
「えー。それじゃあ言うけどさ。一度了承したことを後から覆す方が騎士としてどうかと思うけどなぁ」
ぐぬぬ。
ベルナー様め……。
確かに、確かにそうだけど、これは駄目でしょう!!
わたしが口籠っているとベルナー様は、わたしにぐっと顔を近づけたと思ったらわたしの顎を掬って言ったのだ。
「ゼルは可愛いよ。お前が女性だったらさっさと既成事実作って籍入れて逃げられないように孕ませて……」
「ベルナー様……」
ちょっと!!
何怖いこと真顔で言ってんですか!!
「うそうそ。そんな泣きそうな顔でドン引きしないでくれよ。それくらいゼルは可愛いって言いたかったんだよ。お前は、男の中の男だよ。約束は必ず守る騎士の中の騎士だよ」
ベルナー様の真剣な目と口にした言葉に温度差を感じつつも、ベルナー様の言った「男の中の男」「約束は必ず守る騎士の中の騎士」これらの言葉に、わたしは引けない状況なのだと覚悟を決めるしかなかったのだった。
「はぁ。分かりました。ですが、女性にわたしの着付けをしてもらう訳にはいきません。ドレスは一人で着ます」
「えっ? 無理でしょ? 下手な鎧よりも着るの大変だと思うけどな?」
「ぐっ……」
確かにそうだ。だけど、コルセットやパニエを省けば……。
無理だ。それだとドレスが不格好になってしまう。
いや、コルセットもやろうと思えば自分で締められると思うし、パニエもやればできる。
メイクはどうしよう……。
わたしが一人で黙っていると、扉をノックする音が聞こえてきた。
そして気が付いた時にはベルナー様が一人の女性を招き入れていたのだ。
「ゼル。この人が口の堅い信用のおける侍女だ」
ベルナー様がそう女性をわたしに紹介すると、その女性は頭を下げて挨拶をした。
「ベルナルドゥズ殿下の侍女を仰せつかっております口の堅い侍女でございます」
そう言って可愛らしく笑ったのだ。そして、ベルナー様の背を押して部屋から追い出した後に、わたしに片目を瞑って言ったのだ。
「改めまして、私はエレジーと申します。それでは、始めましょうか」
部屋の内カギを閉めながらそう言ったエレジーは、両手をわきわきとさせながらじりじりとわたしに近づいて来たのだ。
わたしは、その時何故か身の危険を感じたけど、それは気のせいではなかったことをすぐに知ることとなったのだった。
だけど、部屋を出る時に念を押すように「任務内容を聞いた以上ゼルに拒否権はないからな」と言って出て行ったのだ。
当日までに何度も考え直してほしいと訴えようとしたけど、第三王子という立場上、舞踏会に向けて色々やることがあるそうで、お会いすることが出来ないまま当日を迎えていた。
そして、重い足取りで騎士団に向かうと、とてもにこやかなベルナー様が待ち受けていたのだ。
「やあ、今日もいい日になりそうだね」
そう言って、わたしを拘束した後に馬車に乗ったのだった。
色々と不安が顔に出ているわたしに向かって、ベルナー様はこれから向かう場所について話してくれた。
「これから俺の所持している屋敷に向かう。そこでゼルには着替えをしてもらうからな。着替えが済んだら会場に向かおう」
「え、あの……」
戸惑うわたしにはお構いなしな様子で、ベルナー様は続けて言ったのだ。
「大丈夫。衣装も準備してるから、身一つで来てもらえばいいから」
「いえ……。そういうことではなくてですね……」
わたしの戸惑いなど全く気が付いていないのか、それとも敢えて気が付いていないふりで誤魔化しているのか判断しかねている内に、目的地に着いたようで馬車が止まっていた。
わたしはベルナー様に半分抱えられるように馬車を降ろされて屋敷の中に入っていた。
屋敷の中の一室に通されたわたしは、室内に置かれたものに目を見開くこととなった。
部屋の中には淡いブルーの可愛らしいドレスがあったのだ。
それを見て、全身から冷や汗を掻い焦っているわたしに向かって、ベルナー様は、少し楽しそうな表情で言ったのだ。
「悪いな。ゼルにはこれを着てもらうな。着つけは口の堅い侍女が行うから安心しろ」
「いやいやいや……! 無理です!! ドレスなんて無理ですから!」
わたしが全力で否定して首を横に振っていると、ベルナー様は小さく首を傾げて不思議そうに言ったのだ。
「えー? 可愛いと思うけどなぁ。まぁ、女装なんて他の騎士連中に知られたくないってのは理解する。だが、ゼルのドレス姿は可愛いと思うから絶対に大丈夫だ」
大丈夫な訳あるものですか!!
意味が分からない!
男装したうえで女装するって、意味不明な状況にわたしは心の中でツッコミを入れていた。
本来女であるわたしの女装で周囲に男だと思われたらそれはそれで別のダメージがあるけど……。
無理なものは無理!!
「可愛くなんてないです!! わたしは男なのですよ! 駄目です。騎士としてそんなこと無理です駄目です!!」
「えー。それじゃあ言うけどさ。一度了承したことを後から覆す方が騎士としてどうかと思うけどなぁ」
ぐぬぬ。
ベルナー様め……。
確かに、確かにそうだけど、これは駄目でしょう!!
わたしが口籠っているとベルナー様は、わたしにぐっと顔を近づけたと思ったらわたしの顎を掬って言ったのだ。
「ゼルは可愛いよ。お前が女性だったらさっさと既成事実作って籍入れて逃げられないように孕ませて……」
「ベルナー様……」
ちょっと!!
何怖いこと真顔で言ってんですか!!
「うそうそ。そんな泣きそうな顔でドン引きしないでくれよ。それくらいゼルは可愛いって言いたかったんだよ。お前は、男の中の男だよ。約束は必ず守る騎士の中の騎士だよ」
ベルナー様の真剣な目と口にした言葉に温度差を感じつつも、ベルナー様の言った「男の中の男」「約束は必ず守る騎士の中の騎士」これらの言葉に、わたしは引けない状況なのだと覚悟を決めるしかなかったのだった。
「はぁ。分かりました。ですが、女性にわたしの着付けをしてもらう訳にはいきません。ドレスは一人で着ます」
「えっ? 無理でしょ? 下手な鎧よりも着るの大変だと思うけどな?」
「ぐっ……」
確かにそうだ。だけど、コルセットやパニエを省けば……。
無理だ。それだとドレスが不格好になってしまう。
いや、コルセットもやろうと思えば自分で締められると思うし、パニエもやればできる。
メイクはどうしよう……。
わたしが一人で黙っていると、扉をノックする音が聞こえてきた。
そして気が付いた時にはベルナー様が一人の女性を招き入れていたのだ。
「ゼル。この人が口の堅い信用のおける侍女だ」
ベルナー様がそう女性をわたしに紹介すると、その女性は頭を下げて挨拶をした。
「ベルナルドゥズ殿下の侍女を仰せつかっております口の堅い侍女でございます」
そう言って可愛らしく笑ったのだ。そして、ベルナー様の背を押して部屋から追い出した後に、わたしに片目を瞑って言ったのだ。
「改めまして、私はエレジーと申します。それでは、始めましょうか」
部屋の内カギを閉めながらそう言ったエレジーは、両手をわきわきとさせながらじりじりとわたしに近づいて来たのだ。
わたしは、その時何故か身の危険を感じたけど、それは気のせいではなかったことをすぐに知ることとなったのだった。
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