13 / 21
本編
遅いんだよ、バカ
しおりを挟む母の彼氏の中に変わった男がいた。
その男は母の不在時に部屋に来ては一緒に遊んでくれたが、母がいる時は俺をいないものとして全く視界に入れなかった。
それなのに2人っきりの時は甘い言葉をかけてくる、男の2面性が恐ろしかったのを覚えている。
ある日いつものように押し入れに押し込められ、気づいたら眠っていた。
眩しさに目を覚ますと、押し入れの隙間から男がじっとこちらを見ていた。悲鳴をあげた俺の腕を男が掴む。反対の手で前髪を掻き分けられ額がさらされる、目が合ったその男はニヤァっと笑いこう言った。
「お母さんがお前を好きにしていいって」
服の中を這いずり回る男の手を必死に避け、狭い押し入れ中で全力で抵抗する。
言うことを聞かない俺に焦れた男が頬を叩き、その衝撃で押し入れの壁に強く頭をぶつけた。激昂した男に首を絞められ、だんだん視界が白んでいく。
そして意識を失い目覚めた時俺はこの世界にいた。
俺はきっとあの時死んだのだろう、なんて無価値な人生だ。
母は男の愛を得るために俺を売ったのか、
男は最初から体目当てで俺に優しくしたのか。
誰かに見て欲しかった、寂しさを埋めて欲しかった、愛して欲しかった。
でもそれは、俺なんかが手に入れられるようなものじゃなかったんだ。
目を醒ますと、石畳の上に寝かされていた。両手は手枷で固定され背中側でまとめられている、硬い床に寝かされていた体が痛む。
怪我がないところを見ると、睡眠系の魔法で寝かされ運ばれたのだろう。
石壁に囲まれた建物には窓がない、薄暗く湿っており埃っぽい。少し離れたところで柄の悪い粗野な男たちが、小さなテーブルを囲み酒を飲みながら騒いでいる。
「異世界人ってすごい能力があるんだろう」
「売ったらとんでもない高値がつくんじゃないか」
「お前も亡命するのに異世界人を土産にするなんて、とんだ騎士様だな」
「まぁこいつはなんのスキルも使えないがな」
「相手に言わなければバレないさ、この見た目と魔力で騙し通せる」
奴隷の多くは貧しい家庭から口減しで売られるか、犯罪を犯してその地位に落とされる。
が、人身売買が横行しているこの国では、誘拐された人間が奴隷として売られることも多い。
(もう俺の人生って本当にいいことないわ。)
(生まれた時から終わってたのに転移しても終わってるなんて)
「お、起きたな」
「にしても見窄らしいな、異世界人ってのはいいもん食ってんじゃねぇのか」
「ハハッ、コイツは王に見捨てられてるからな。」
「もったいねぇ、……この顔だぞ」
「ッう」
前髪を掴んで頭を持ち上げられる、頭皮が痛んで髪が抜ける。
「女みてぇな顔だ、美少年が大好きな変態にも高く売れるぞ」
(どいつもコイツも……)
男を睨みつけて吐き捨てる。
「………………死ねよ、変態」
「……いい度胸してんじゃねぇか」
手を離され床に落とされる、額が石畳に打ち付けられた。
「遊んでやるよ」
男の手がシャツの裾にかかり、音を立てて破られる。
(ふざけんな、ふざけんなよ!俺が何したってんだよ!)
冷たい床が肌にふれ鳥肌がたつ。
(転移までしてこんな最後か!俺だって!俺だって!)
男の手が横腹を弄り、胸に触れる。たくさんの手が体を這い回る。
(本当は俺だけを見て欲しかった!一緒にいて欲しかった!お腹いっぱいになって安心して眠りたかった!)
ズボンに手がかかる。
(愛して欲しかった!)
(お前が望んでいいと、俺に思い出させたのに!)
「絶対守るって言っただろ!ジェードのばかやろーッ!!!!」
叫んだ瞬間、とんでもない轟音と共に石壁が吹っ飛ぶ。
砂煙の向こう、闇の中で緑の宝石がきらりと光った。
「ユウ、待たせてごめんね」
「……遅いんだよ、ばか」
15
あなたにおすすめの小説
魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺
ウミガメ
BL
魔女の呪いで余命が"1年"になってしまった俺。
その代わりに『触れた男を例外なく全員"好き"にさせてしまう』チート能力を得た。
呪いを解くためには男からの"真実の愛"を手に入れなければならない……!?
果たして失った生命を取り戻すことはできるのか……!
男たちとのラブでムフフな冒険が今始まる(?)
~~~~
主人公総攻めのBLです。
一部に性的な表現を含むことがあります。要素を含む場合「★」をつけておりますが、苦手な方はご注意ください。
※この小説は他サイトとの重複掲載をしております。ご了承ください。
恐怖症な王子は異世界から来た時雨に癒やされる
琴葉悠
BL
十六夜時雨は諸事情から橋の上から転落し、川に落ちた。
落ちた川から上がると見知らぬ場所にいて、そこで異世界に来た事を知らされる。
異世界人は良き知らせをもたらす事から王族が庇護する役割を担っており、時雨は庇護されることに。
そこで、検査すると、時雨はDomというダイナミクスの性の一つを持っていて──
【完結】下級悪魔は魔王様の役に立ちたかった
ゆう
BL
俺ウェスは幼少期に魔王様に拾われた下級悪魔だ。
生まれてすぐ人との戦いに巻き込まれ、死を待つばかりだった自分を魔王様ーーディニス様が助けてくれた。
本当なら魔王様と話すことも叶わなかった卑しい俺を、ディニス様はとても可愛がってくれた。
だがそんなディニス様も俺が成長するにつれて距離を取り冷たくなっていく。自分の醜悪な見た目が原因か、あるいは知能の低さゆえか…
どうにかしてディニス様の愛情を取り戻そうとするが上手くいかず、周りの魔族たちからも蔑まれる日々。
大好きなディニス様に冷たくされることが耐えきれず、せめて最後にもう一度微笑みかけてほしい…そう思った俺は彼のために勇者一行に挑むが…
【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。
キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。
しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。
迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。
手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。
これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。
──運命なんて、信じていなかった。
けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。
全8話。
【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!
N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い
拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。
Special thanks
illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560)
※独自設定です。
※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる