10 / 72
闇食い
#3
しおりを挟む
正確な場所は分からなかったが、方角からして、私が降りたバス停の辺りだ。
突然聞こえた割には、不思議と恐ろしさなどは無かった。むしろ、安堵してしまった。
先ほどから、聞こえるのは 自分の吐息と、足音くらいしかなかったため、「他の『誰か』なのでは?」と少し期待してしまっていた。
鈴の音が聞こえたのは、その一度きりだったが、気になった以上、調べないわけにはいかない…。
私は、今来た道を引き返した。
やはり、何処か可笑しかった。バス停から引き返した場所までは、少なくとも10分は掛かった筈なのに、バス停までは、ほんの数分だった。
もはや、『体感』の話ではない…。急いで、自宅に帰らなければ…。
私は、改めてバス停周辺を見回した。
しかし、何もない…。誰もいない…。車すら通らない…。
私は、急に心細くなり、歩道に腰かけた。周りの家や建物からは、明かりが漏れているが、人の気配など微塵もなかった。下手したら、この世界には、私一人しかいないのではないか…。
一人でいるのは、苦でもないが、比地理しかいないとなると、そう言うわけにもいかない…。
私は、すがる様な思い出、スマホの待ち受けをぼんやりと眺めた。
そこには、私が高校生の頃まで飼っていた、黒猫が写っている。名前は、『ジン』。私が帰宅すると、毎回お出迎えしてくれる、人懐っこい子だった…。
鈴を鳴らして、駆け寄ってくる姿は、今でも、たまに夢に見る…。
それ程、愛着があった…。私も、もしかしたら、そっちに逝くのかもしれない…。
“チリン”
また、鈴の音が聞こえた。近くの方からだ。
そして、この時、ようやっと思い出した。この鈴の音は、ジンの首輪の鈴に、とてもよく似ている…。
「ジン…。」
私は、そう呟き、音のした方に歩きだした。
あの子にもう一度だけ会いたい…。
バス停から、少し行ったと頃には、公園があり、その辺りから、音がした。
私は目を凝らし、一心不乱にその音の主を探した。
そして、見つけた。ベンチの上に香箱座りをしている、黒い猫…。
首輪も間違いない…。
「ジン…。」
私は、駆け寄ろうとした。だが、何故か、足が前に進まなかった。
距離にして、数メート。その距離が、途轍もなく遠かった。
そんな私を見かねて、ジンは、ベンチを飛び降り、私の方へと近づいてきた。
そして、私の前に座った。手を伸ばせば近づく距離だ…。
私も、しゃがみ込み、手を伸ばした。ふかふかの毛並と、触り心地も、間違いなく、ジンそのものだ…。
「ごめんね。ごめんね。」
私は、撫でながら、只管撫で続けた。
突然聞こえた割には、不思議と恐ろしさなどは無かった。むしろ、安堵してしまった。
先ほどから、聞こえるのは 自分の吐息と、足音くらいしかなかったため、「他の『誰か』なのでは?」と少し期待してしまっていた。
鈴の音が聞こえたのは、その一度きりだったが、気になった以上、調べないわけにはいかない…。
私は、今来た道を引き返した。
やはり、何処か可笑しかった。バス停から引き返した場所までは、少なくとも10分は掛かった筈なのに、バス停までは、ほんの数分だった。
もはや、『体感』の話ではない…。急いで、自宅に帰らなければ…。
私は、改めてバス停周辺を見回した。
しかし、何もない…。誰もいない…。車すら通らない…。
私は、急に心細くなり、歩道に腰かけた。周りの家や建物からは、明かりが漏れているが、人の気配など微塵もなかった。下手したら、この世界には、私一人しかいないのではないか…。
一人でいるのは、苦でもないが、比地理しかいないとなると、そう言うわけにもいかない…。
私は、すがる様な思い出、スマホの待ち受けをぼんやりと眺めた。
そこには、私が高校生の頃まで飼っていた、黒猫が写っている。名前は、『ジン』。私が帰宅すると、毎回お出迎えしてくれる、人懐っこい子だった…。
鈴を鳴らして、駆け寄ってくる姿は、今でも、たまに夢に見る…。
それ程、愛着があった…。私も、もしかしたら、そっちに逝くのかもしれない…。
“チリン”
また、鈴の音が聞こえた。近くの方からだ。
そして、この時、ようやっと思い出した。この鈴の音は、ジンの首輪の鈴に、とてもよく似ている…。
「ジン…。」
私は、そう呟き、音のした方に歩きだした。
あの子にもう一度だけ会いたい…。
バス停から、少し行ったと頃には、公園があり、その辺りから、音がした。
私は目を凝らし、一心不乱にその音の主を探した。
そして、見つけた。ベンチの上に香箱座りをしている、黒い猫…。
首輪も間違いない…。
「ジン…。」
私は、駆け寄ろうとした。だが、何故か、足が前に進まなかった。
距離にして、数メート。その距離が、途轍もなく遠かった。
そんな私を見かねて、ジンは、ベンチを飛び降り、私の方へと近づいてきた。
そして、私の前に座った。手を伸ばせば近づく距離だ…。
私も、しゃがみ込み、手を伸ばした。ふかふかの毛並と、触り心地も、間違いなく、ジンそのものだ…。
「ごめんね。ごめんね。」
私は、撫でながら、只管撫で続けた。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
雨が止むとき、人形は眠る
秋初夏生
ホラー
「雨の日に人が突然倒れる」という不可解な事件が、金沢で続発していた。
冥府庁調査課の神崎イサナと黒野アイリは調査の末、ひがし茶屋街に佇む老舗の人形店「蓮月堂」へ辿り着く。
そこでは“誰も作った覚えのない人形が、夜ごと少しずつ増えている”という奇妙な噂が立っていた。
病に伏す人形師・桐生誠士は、異変の真相解明を二人に託し、さらに姿を消した元弟子の人形師“斎宮”を探してほしいと願う。
増え続ける人形、曖昧に濁される証言、消えた記録。静かな雨音の下で、隠された想いが少しずつ輪郭を帯びていく。
これは、失ったものを手放せなかった人間の執念が引き起こす、じわじわと心を侵す怪異の物語。
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。
意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。
隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる