緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

文字の大きさ
15 / 72
燃えた人形

#3

しおりを挟む
 突き当りの窓から、差し込む光は、どうやら太陽の物ではなく、街灯や、月光の、冷たい光だった。
 私は、窓の横にある、階段を降り、一階に向かった。一階には、両親の寝室と、リビングがある。そこに行けば、私以外の、誰かに会える。そう、思ったからだ。
 しかし、私を、待ち受けていたのは、両親でも、人形でもない、小さな、女の子だった。
 女の子は、こちら側に、背を向け、リビングの扉の前に立っていた。
 背格好からして、4~6歳くらいだろう。服装は、黒いTシャツに、ミニスカートをはいている。髪は、両側ゴムで縛り、ツインテールにしている。
 「何…しているの…?」
 女の子に向かって、そう訊ねたが、聞こえていないのか、反応がなかった。
 「ね、ねぇ?」
 私は、もう一度、彼女に、声を掛けた。すると、女の子は、扉の取手を曳いた。“キィー”っと、甲高い嫌な音を立てて、扉は開き、彼女を、その奥へと、誘った。
 私の自宅は、築年数でいえば、それなりに立っているが、ドアや金具は、まだ、現役で、錆びている所は、殆どない。そのため、この家で、扉や、クローゼット等で、今の様な、鈍い音が、する場所など、ない。あるとすれば、精々、キッチンのシンクの下あたりだろう…。だから、今の扉の音は、余りにも、不自然だった。
 私は、恐る恐る、その扉に近づき、取手に触れた。心臓は、今にもはち切れそうな程、胸を叩いていた。呼吸を整え、一思いに、扉を、開け放った。
 中には、女の子の姿はなく、言ったって普通の、見慣れたリビングが、そこにあった。
 しかし、違うところが、一点だけ、存在した。それは、異様に、この部屋が、熱いのだ。
 夏なのに、暖房でも焚いている様な、頭が、ボーっとする程に、熱い。
 幸い、今は夢の世界。触感は、伝わるものの、耐えられない程の、物ではない。だが、全身から、汗が噴き出してくるのには、変わりがない。今、この状態で、目が覚めれば、確実に、ベッドと枕は、寝汗で、ずぶ濡れになっているであろう…。

 私は、兎に角辺りを見渡した。私が、何故、夢で、こんな経験をしなければならないのか、何のための、夢なのか。それを知らない限る、この夢からは、一生覚める事が、ないと、何となくだが、分かっていた。
 茹だる様な熱さの中、私は、リビングとキッチンを一通り見て回った。だが、これと言って、変ったものや、不自然な物というのは、見当たらなかった。
 流石に疲れ、ダイニングの椅子に腰かけた。その時だった。視界の端に、何か、動くものを、捉えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

雨が止むとき、人形は眠る

秋初夏生
ホラー
「雨の日に人が突然倒れる」という不可解な事件が、金沢で続発していた。 冥府庁調査課の神崎イサナと黒野アイリは調査の末、ひがし茶屋街に佇む老舗の人形店「蓮月堂」へ辿り着く。 そこでは“誰も作った覚えのない人形が、夜ごと少しずつ増えている”という奇妙な噂が立っていた。 病に伏す人形師・桐生誠士は、異変の真相解明を二人に託し、さらに姿を消した元弟子の人形師“斎宮”を探してほしいと願う。 増え続ける人形、曖昧に濁される証言、消えた記録。静かな雨音の下で、隠された想いが少しずつ輪郭を帯びていく。 これは、失ったものを手放せなかった人間の執念が引き起こす、じわじわと心を侵す怪異の物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...