緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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燃えた人形

#4

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 先ほどの女の子が、棚の上にある、写真を見て居た。髪は、長く、彼女の表情は、見えない。だが、感覚としては、伝わってくる…。この、悪寒と、ゾッとする様な、畏怖…。
 私の額から、流れる汗は、冷や汗に、変っていた。
 「……。」
 女の子は、写真を見つつ、何かをぶつぶつと、呟いていた。
 それを見て、私は、何も言えないでいた。むしろ、身動き一つ取れない。まるで、金縛りにあったかの様に…。
 私は、息を殺し、彼女の声に、集中した。それでも、彼女の言葉は、聞き取ることも、理解することも、出来なかった。
 そして、次第に、彼女は、私の、視線に気が付いたのか、こちらに、顔を向けた。
 その眼には、白い結膜がなく、黒一色に、染まっていた。当然、光なんてものも、無く。ただ、そこに、黒い穴が、ある様に
感じだった。
 私は、それを見て、更に、怯えた。
 「麗華…。」
 彼女の言葉が、漸く聞こえた。それは、私の名前だった。
 何故、私の名前を知っているのか。それが、私には、分からない…。だが、反射的に、私は、身体を動かしていた。
 座っていた、椅子を、押し倒し、最短距離で、リビングの入り口に向かった。
 ここに居てはいけない…。私は、それを本能的に、理解していた。
 玄関に向かい、扉のノブを、動かした。しかし、扉は、動かず、開くことは無かった。鍵が掛かっているわけでも、何かが、つっかえて居る訳でもない。扉自体が、固定されている様な、そんな感じだった…。
 「麗華…。」
 声の大きさと、影の形からして、近づいてきているのは、分かった。
 私は、怯えつつも、その脇を通り、直近くの階段を這いつくばり、二階に上った。そして、一番近場の、自室に立て籠もった。
 扉の鍵をかけ、近くにあった、本棚や、机など、重石になりそうな物を、扉の前に置き、更に、施錠を、強固にした。
 
 あの女の子は、一体何だったのだろうか…。私の名を知っていた。それに、リビングにあった、私たち家族の写真を見つめていた…。
 もし、あの女の子が、この世の者では、無いのならば、何かしら、私や、私の家族に、何かしら、憎しみや、恨みを持っているのか…。そうだとすれば、何故…。
 ドン!
 扉が、大きな音を立てて、揺れた。まるで、部屋全体が、大きく揺れている様な、感覚に襲われた。
 怖い…。
 感情というのは、常に、無茶苦茶だ。冷静になっていたかと思えば、すぐにこの、感覚に、引き戻されてしまう…。この、現実とも、夢とも、捉えられない、何とも曖昧な世界では、最も、重要な情報源だ。
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