緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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廃洋館

#8

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 長男の自室には、『私は見た』とだけ、書かれた、紙が遺されており、長女の件に関係があるのではないかと疑った刑事たちは、夫婦や使用人に、取り調べを何度も行ったり、家宅捜査も実施したが、成果は何もなかった。
 捜査も、難航しかけた時、今度は、母親が父親の書斎で、亡くなっていた。死因は、胸にナイフが刺さったことによる、失血死。ナイフからは、父親の指紋と、長男と長女の物と思われる、血液も付着していたことから、父親が何らかの動機があり、三人を殺害したのではないかとなり、緊急逮捕となった。
 しかし、父親は頑として、無罪を主張した。なんでも、母親が殺害されたと思われる時間帯に、父親は、書斎にはおらず、広間で、やけ酒をしていたらしい。それは、使用人もそれを承認した。
 その事もあり、二人は口裏を合わせているとなり、二人とも、留置された。
 だが翌日、二人は、留置所内で、ナイフで刺され、亡くなっていた。ナイフからは、亡くなった筈の、母親の指紋が検出された。留置所とはいえ、警備がしっかりしている場所での殺人など、到底あり得ない。あるとすれば、警察内部の犯行。それだけは、世間の目から、避けたいとして、警察はこの事件を、有耶無耶にした。
 最後まで生き残った、次男は、まだ幼く、事件への関連性が少ないと判断された為、彼は、取り調べ等は、免除された。
 後に彼は、親戚の家に預けられることになったのだが、彼の同級生たちや、街の人達、あろうことか、親戚たちも、彼の事を、疫病神だの、死神だのと、噂されることとなった。
 
 「その噂も、時間と共に、薄れ、今では、あの洋館の噂話だけが、一人歩きしていると、言った所です。」
 一通り話し終えた生駒さんが、お茶を啜った。
 話は理解できたのだが、史実が噂になるには、余りにも、短すぎる気がする。40年程前となれば、まだ、この世に生きている人が多い。更に、これだけ、不可解な事件があったとなると、未だに語り継がれていそうなのだが、知っている人、覚えている人は、少なくない筈だ。
 それなのに、私はおろか、30代半ばである、寺井さんや、役所であった、浅井さんも知らなかった。ここには、流石に違和感を覚える。
 「あの、何故、その話を知っている人が少ないのでしょうか…。」
 「警察が、地元の議員たちを使って、その事件の内容を捏造したからですよ。一連の事件の犯行を父親と使用人に仕立て上げ、全く別の噂を流した。その結果、噂に尾ひれが付き、あの洋館に対する、あやふやな噂が目立つ様になったのです。」
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