緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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廃洋館

#12

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 寺井さんが、建物の陰に隠れてから、数秒後、止んでいた雨が、またしても降り始め、辺りの地面や、木々を音を立てながら、濡らし始めた。
 その所為か、気温が下がり、夏直前だというのに、口からは、白い息が出た。
 「こんなに寒いなんて、聞いてないんだけど…。」
 こういう事も想定して、予め、気象予報士の同僚に、今日の予報は、聞いてきていたのだが、こんなに雨が降り続け、こんなに肌寒くなるなんて、聞いていない…。
 「予報はあくまでも、予想ですからね…。」
 大谷が、カメラに付いた水滴を、タオルで拭きながら、そう言った。
 分かっているが、今日夕方からは、雨が止み、蒸し暑いと聞いていた。 
 ここまで、肌寒いと、流石に、苛立ちの一つは、覚える…。
 私は堪らず、車に積んである、毛布が恋しくなり、それを取りに向かった。
それから、数分後、寺井さんは、反対側の物影から、現れた。
 「取り敢えず、怪しい人影とかは、見なかったな。獣とかは居そうだが、この雨じゃぁ、居ても、逃げただろうな…。」
 そう言うと、寺井さんは、建物の軒下から、祖真っ暗闇の、夜空を見上げ、そう言った。
 

 「あの、本当に、中に入らなきゃいけないんですか?」
 寺井さんが、玄関の鍵穴に、鍵を挿そうとした時、私が、そう訊ねた。
 今更ながら、少し、恐怖が、出てきた。肌寒さも相まって、私の身体は、完全に、恐怖に、包まれていた。
 それは、大谷も同じだった様で、彼も、私に、同意した。
 「今日ばかりは、辞めませんか?この雨だったら、土砂崩れの心配だので、何とか胡麻化せると思います。」
 そう言った、タイミングで、扉の方から、ガチャリと、音が鳴った。
 「今日以外に、何時があるんだ?お前等が言う、“次”に、この建物がここに立っている、保証は無いし、真実を、求めている、視聴者が、何人もいることを、忘れちゃいけない。」
 寺井さんが、そう言いながら、ノブを引っ張り、扉を開けた。
 ギィーと、蝶番が、軋む音が、建物内外に、響き、更に不気味さを、際立たせた。
 「さて、ここに眠るは、お宝か遺体か。どちらにせよ。特大ニュースになりかねない。身を引き締めて行くぞ。」
 寺井さんが、そう啖呵を切り、洋館内に、我々三人は、入っていた。
 
扉が閉まると、中は、とても静かだった。外に打ち付ける、雨音は、耳に心地よく、屋敷内に響いていた。
玄関のたたきを上がると、広い廊下が、左右と前に続いている。前方の方には、二階に上がるのであろう、階段が、螺旋状に昇っている。
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