緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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廃洋館

#22

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 何が起きても不思議でも、可笑しくもない状態なのだが、非日常的なことが起これば、当然、“恐怖”に包まれる。
 「な、何、今の…。」
 たった今聞こえた、悲鳴の様な声は、明らかに、非日常的な物だ…。
 「分からないが、上の階から聞こえたな…。」
 本当なら、その正体を突き止めなければいけないのだろうが、今の私には、そんな余裕なんて、無かった…。
 兎に角、現状から、逃げたい。ただそれだけだった…。
 私は、大谷と一緒に、必死に、玄関扉を、動かした、それでも、扉は、びくともしない。鍵穴があれば、何とかなるかもしれないが、内側からの鍵。しかも、施錠されていない物だと、どうしようもない…。
 「落ち着けお前等!」
 その言葉と共に、私の肩に激痛が走った。とはいえ、痛すぎる程ではない、何とか、“痛い”という感触が、身体に、回っている感じだ。お陰で、眼が覚めた…。
 「ここで取り乱しても、どうにもならない…。だから、せめて、手掛かりだけでも、探しに行かないか?」
 寺井さんが、落ち着いた声で、そう呟いた。彼の言葉に、何とか、私と、大谷は、落ち着きを取り戻した。
 「そうですね…。でも、どうしましょう…。」
 大谷が、そう呟いた。
 「取り敢えず、今の声の所に行こう。確か、二階の方から聞こえたな…。」
 私たちは、二階の方を、見詰めた。
 「何が出てくるんでしょうね…。」
 落ち着いたとはいえ、心配事と、恐怖心が消えたわけではない。寧ろ、この状況を、受け入れようと努力している、自分にも、恐怖を覚えている…。
 「分からんが、兎に角、行ってみるぞ…。」
 私たち三人は、もう一度階段を上り、二階に向かった。
 驚いたことに、廊下にあるランタンや、照明は、全てに明かりが灯っており、かなり明るくなっていた。
 「これだけ明るければ、少しくらい、怖さが、紛れますね…。」
 大谷が言ったその言葉に、私は、頷いたが、不気味なのは、変らない…。
 「シッ!静かに!」
 寺井さんの声に、ドキッとしつつも、何とか、私と大谷は、押し黙った。
 耳を澄ますと、先ほどの書斎の方から、足音の様な物が、聞こえてきた。
 「向こうの方の様だな。」
 寺井さんは、実際言葉に出してはいなかったが、視線の動かし方とジェスチャーで、何となくそう言っている様に聞こえた。
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