緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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廃洋館

#23

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 足音は、革靴の様な、小気味いい物だ。だが、それが、一段と、恐怖を煽った。何故なら、それ以外の音は、私たちの呼吸音以外、何も聞こえないからだ。
 窓の外の風の音や、野生動物の鳴き声でも、聞こえれば、只々“怖い”だけで、済むのだが、不気味だけが、漂うこの空間では、たった一つの物音が、恐怖へと、誘ってしまう…。
 足音は、暫く歩き、ほんの少し、遠ざかった後、立ち止まり、書斎の方にある、扉を、ギィーっと、音を立て、開け、部屋の中に、消えて行った。
 「行くぞ。」
 寺井さんは、そう言うと、先陣を切り、足音が、消えた方に、歩き始めた。私は、彼の後ろに、只々、着いていくしかなかった。
 「……。」
 扉の前に着くと、部屋の中から、話声が、聞こえてきた。当然、私たちの声ではない。
 だが、一つの声は、聞き覚えがあった。
 さっきの一階で見た、男性の声。そして、さっきとは違う、女性の声が、もう一つ、聞こえてきた。
 私たちは、もう一度、耳を澄ませた。
 「復讐は、済んだか?」
 「はい…。ありがとう、兄さん。私の、やりたい事は、済んだ。後は、何でも、従うよ。一人も、二人も一緒でしょ?」
 「何を言う、ナツミ。お前は、もう、完璧な存在だ…。警察に捕まりなどしない。何せお前は、もう………。」
 最後の言葉だけ、何故か、聞こえなかった。いや、ひょっとしたら、聞くのを、拒んでいたのかもしれない…。
 「取り敢えず、もう一度、隠れていてくれ。親父たちが、騒ぎだしたら、また面倒だろう…。」
 男は、そう言った直後、部屋の中から、またしても、扉を開ける音が聞こえた。
 だが、それは不自然だ…。さっき、私たちが部屋に入った時。出入口以外の扉なんて、見当たらなかった。だから、扉の音が聞こえるなんて、あり得ない…。
 扉が閉まる音がし、部屋の中は、沈黙を取り戻した。
 「入るぞ…。」
 寺井さんのその言葉に、私と、大谷は、頷き、部屋の中に入った。部屋の中は、鼻をつんざく様な、生臭い匂いが、漂っていた。
 私は、思わず、鼻と口を、両手で抑え、鼻に入る匂いを、少しでも、軽減させた。それでも、指の隙間から、入り込む異臭は、どうしても、防ぎきることは、出来ない…。
 「本来なら、特大ニュースになるんだがな…。」
 寺井さんが、何かを見つけたのか、机の脇を、スマホのライトで照らした。
 私は、その一部が、視界に入ってしまい、思わず、悲鳴を上げたくなった。
 だが、口を覆っていたお陰で、息を飲むだけに、収まった。
 「犯人は、ナツミという、女性で、間違いなさそうだな…。」
 
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