緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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廃洋館

#30

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 地下室は、レンガと石でできており、その所為か空気が冷たい…。
 『あなた方は、あまりこの空気は、吸わない方が、よろしいかと…。』
 彼女はそう言い、近くにあったランタンに、火を灯した。
 そして、わたしたち一同は、目を疑った…。壁や床、天井にまで、何かで引っ搔いた様な傷が、いくつも刻まれていた。
 「何だ…こりゃ…。」
 「よく見ると、血の様なものも、滲んでいますね…。」
 私は、声が出なかった。
 『暴れた後です…。気を付けて下さい。この子の逆鱗に触れれば、文字通り祟られます。』
 ナツミさんは、奥の壁の方にある松明に、火を点けた。そこには、両手に手枷を着けられた、髪の長い女性が、俯いていた。容姿こそ、ナツミさんに似てはいるが、雰囲気や伝わってくる、気配は全く真逆なものだ…。何というか、とても好きにはなれない…。
 『だ…誰?』
 雰囲気とは、裏腹に、か細い声が、部屋中に木霊した。
 『久々のお客様ですよ…。』
 『お客様…。っ!帰って!今すぐこの館から、出て行って!』
 急に取り乱した様に、彼女はそう叫んだ。
 『この人たちは私たちの存在に気付いてくれた人たちよ。ぶりに来た、のお客よ?』
 ナツミさんが、諭すようにそう言った。だが、手枷を着けられた、彼女が更に叫んだ。
 『だったら、猶更出て行って頂戴!私の力が、!』
 そういった直後だった。
 フッと、周りの松明やランタンの火が消え、煙の臭いが、部屋中に漂った。
 「何?」
 私がそういうと、手枷を着けられた彼女が、声を上げた。
 『始まった…。皆!私の近くに来て!じゃないと、護れない!』
 私がその言葉に理解する前に、大谷が、動き出した。
 「今は、ナツミさんのいう事に、従って下さい!」
 訳が分からぬまま。私と寺井さんは、彼女の近くに寄った。すると、私たちは、力強く、床に座らされた。思わず腰を打ったが、それを気にしているどころではなかった…。
 部屋は、火が消され、暗闇しかないはずなのに、影のようなものが、いくつも、壁や床、天井に浮かび上がっていた…。人影ではない…。唯々蠢く、謎の影…。
 『貴方、大谷とか言ったわね?あの本が読めたのなら、知ってるでしょ?私を使。』
 大谷は頷き、本を開いた。
 「不浄を燃やす蒼炎よ…。よこしまなる影餓えいがを、退き給え…。」
 大谷がそういうと、手枷の末端の鎖が青白く光りだした。
 『フ…随分と男らしいね…。じゃぁ、、貰うよ?』
 彼女がそう言ったとたん、鎖の光が、どんどんと光、とうとう、手枷の部分まで、行き着き、彼女自身を、青白い光が包んだ。
 『下がって…。ここは私の館でもあるのよ?』
 青白い光は、次第に熱を帯び、冷たかった地下室が、どんどんと温かくなった。
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