緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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深淵の観測者

#1

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 心霊スポットというのは、何処にでもある物だ。廃墟、薄暗い森、踏切、人気のない通り道等…。今回紹介するのは、山間部に存在する旧道の中間に位置する、トンネルだ。今はしっかりとした国道が作られ、旧道は全く使われておらず、自然に戻りつつある…。
 だが、1か月程前から、妙な噂が立つようになった。
 その噂というのは、車でトンネルに肝試しに来ていた、カップルが妙な視線を感じたというものだった…。
 特別何か被害に遭った訳ではないが、これ程まで噂が広がるとなると、ただ事ではない…。
 だから、今日私と彼も、このトンネルにやってきた。
 「ここが例のトンネルか…。」
 「本当に行くの?」
 「心配するな。特に何かあるわけじゃないって来ているからな。もし何かあれば、俺が守ってやるって。」
 彼は自信たっぷりにそう言った。だが、私には分る…。このトンネルには何か居る…。そして私たちは、トンネル内に入った…。

 トンネル内は、かなり暗く懐中電灯がないと、足元が見えない。道幅は車が一台通れるくらいの幅…。トンネルはかなり長いのが、出口の光が全く見えない…。
 「ねぇ…。」
 「大丈夫だって!怖いなら、くっ付いてくれても良いんだぜ?」
 彼は、自信満々にそう言った…。だが、彼の事は、よく知らない…。帰り際に声を掛けられ、このトンネルに行くというから、仕方なく付いてきたのだ…。
 私は小さい頃から霊感があり、色々なモノが見えたり、聞こえたり、感じたりしてきた…。だから、このトンネルにも何か居ることは、一目両全だった…。
 「何かあったら、すぐ帰るからね…。こんな所、薄気味悪くて、長居したくないわ…。」
 「大丈夫、大丈夫!何もないって!ちょっと遠回りして帰るだけだから。」
 彼は、きっと怖いという感情が少しズレているのだろうか…。呆れ半分、怖さ半分の気持ちでトンネル内を進んだ…。
 入り口から30メートル程進んだときだった、不意に背後から視線の様なものを感じ、私は思わず振り返った。だがあるのは、入り口だけで、変わりはない…。
 「どうした?そんなに怖いなら、手でも繋ぐ?」
 「いや、何でもない…。それより早く行きましょう。」
 私はそう彼を急かした。
 気のせい…。そう思いたいが、こういった場合、何かが着いてくる可能性が高い…。だから、一刻も早く、このトンネルを抜けた方が良い。来た道を引き返して、取り憑かれでもしたら堪った物ではない。
 100メートル程歩いた頃、漸く出口の光が見えた。私は胸を撫でおろした…。


 ―――うしろ……。
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