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ファイルⅠ:連続ひったくり事件
#16
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「動機は、警察への復讐ってところか…。」
土屋さんが自分の顎に手を置きながら言った。
「田中良樹。田中美紀の実兄。彼は、三年前に事故で亡くなった。その時の警察の捜査が杜撰じゃなかったのかと、何度か訴訟を起こしている。
太田、お前とその良樹は学生時代からの、親友だった。」
日下部さんの車の屋根から降りてきた、柏木さんが、後部座席から女の子を連れてきた。
「美紀ちゃん!」
太田が少し、驚いたように叫んだ。
「今日のお昼頃、私が見つけて確保した。」
天木さんが、美紀さんの手を引っ張る様に、太田の前に連れてきた。
あの朝の調査の後、私は本当に自宅に帰る予定だった。
しかし、一つだけずっと引っかかっていた事があった。
四件目の被害者が何故、これだけ分かりやすい嘘を彼女は述べたのか…。それが、昨日の時からずっと気になっていた。
“彼ならきっと、分かったんだろう…。”
そういう意味での昨日の言葉だった。
でも今は、彼は居ない。だからこそ、昨日、私も嘘を付いた。彼ならそうすると思ったから。人の嘘に嘘を重ねることが、私にとっては難しい。
さっきの交差点でやったのは、シミュレーションではない。彼の真似だった。彼は考え事をするとき、よく目を瞑っていた。
気が付くと、さっきの住宅街の交差点に着いていた。
雨は、傘を差すまでもない程になっていた。
「ごめん、ザッキー…やっぱり、貴方には勝てない…。力使うね…。」
そう心の中で呟き、またしても目を閉じた。
脳内に昨日見た捜査資料が一瞬にして広がる。それだけじゃなく、それぞれの現場付近で見聞きしたことなども全て…。
そして、思い出した。ここで、三年前に事故が起きていた事。小さくだが、新聞の記事にそれが乗っていた。
急いでスマホを取り出す。
「…カエ?」
『どうしたの?』
カエが出てくれた…。彼女は少し前まで、リューの配下の捜査班だった。
「ツッチーまだ居る?」
『居るけど、どうしたの?』
「スピーカーモードにして、皆聞いて。
今から調べて欲しい事がある。
一つは、六件目の現場近くにあるウィークリーの犯人に繋がる様な決定的な証拠。」
『証拠ってどうやって…。』
カエが、落胆したような感じに聞いてくる。
「何かしら“アト“が必ずあるはず。」
『アト…。今まで、何が見つかってるんだ?』
ツッチーがフォローしてくれた。
「一件目、原付バイクの接触痕。第三、自転車のタイヤ痕。第五はまだ見てないから、分からない。でも、必ずあるはず…。」
「任せて。アマキちゃんの班のメンバー何人か貸して。」
カエが心強く返してくれる。
「ありがと。二つ目は、三年前のとある事故について調べて欲しい…。」
『事故?』
ミヤマが不思議そうな声を上げる。
『事故…。もしかして、四件目の住宅地付近の事故か?』
「流石ツッチー。そう、その事故を徹底的に調べられるだけ、調べて。制限時間は一七時まで。」
少し、わくわくしてきた。この、ひったくり事件はメッセージが隠されている…。
私にとって、問題が餌の様な感覚…。難問な程、全てを解き明かしたくなる…。
“全てを見つけて、全てを拾うのは、賢いとは言えないよ。”
その言葉が、一瞬頭をよぎった…。彼が、私に最初に教えてくれたことだった…。
『アマキ、余計な事考えんなよ。』
ツッチーの声だった。
『お前は無駄にプレッシャーに弱いところあるから、あまり気にするな。自分のやり方で、切り開いたんだろ?だったら、もっと自信持て、この俺がお前を全力でフォローしてやる。』
彼のその応援はもう二年もずっと聞いてきたが、今日だけは、何故か一番心強かった。
「ありがと、ツッチー。じゃぁ皆、私の手足になって。」
『オーダー、心得ましたよ。』
ミヤマが返事を返してくれた。
私はその後、一旦ホームズに戻り、車を動かした。
土屋さんが自分の顎に手を置きながら言った。
「田中良樹。田中美紀の実兄。彼は、三年前に事故で亡くなった。その時の警察の捜査が杜撰じゃなかったのかと、何度か訴訟を起こしている。
太田、お前とその良樹は学生時代からの、親友だった。」
日下部さんの車の屋根から降りてきた、柏木さんが、後部座席から女の子を連れてきた。
「美紀ちゃん!」
太田が少し、驚いたように叫んだ。
「今日のお昼頃、私が見つけて確保した。」
天木さんが、美紀さんの手を引っ張る様に、太田の前に連れてきた。
あの朝の調査の後、私は本当に自宅に帰る予定だった。
しかし、一つだけずっと引っかかっていた事があった。
四件目の被害者が何故、これだけ分かりやすい嘘を彼女は述べたのか…。それが、昨日の時からずっと気になっていた。
“彼ならきっと、分かったんだろう…。”
そういう意味での昨日の言葉だった。
でも今は、彼は居ない。だからこそ、昨日、私も嘘を付いた。彼ならそうすると思ったから。人の嘘に嘘を重ねることが、私にとっては難しい。
さっきの交差点でやったのは、シミュレーションではない。彼の真似だった。彼は考え事をするとき、よく目を瞑っていた。
気が付くと、さっきの住宅街の交差点に着いていた。
雨は、傘を差すまでもない程になっていた。
「ごめん、ザッキー…やっぱり、貴方には勝てない…。力使うね…。」
そう心の中で呟き、またしても目を閉じた。
脳内に昨日見た捜査資料が一瞬にして広がる。それだけじゃなく、それぞれの現場付近で見聞きしたことなども全て…。
そして、思い出した。ここで、三年前に事故が起きていた事。小さくだが、新聞の記事にそれが乗っていた。
急いでスマホを取り出す。
「…カエ?」
『どうしたの?』
カエが出てくれた…。彼女は少し前まで、リューの配下の捜査班だった。
「ツッチーまだ居る?」
『居るけど、どうしたの?』
「スピーカーモードにして、皆聞いて。
今から調べて欲しい事がある。
一つは、六件目の現場近くにあるウィークリーの犯人に繋がる様な決定的な証拠。」
『証拠ってどうやって…。』
カエが、落胆したような感じに聞いてくる。
「何かしら“アト“が必ずあるはず。」
『アト…。今まで、何が見つかってるんだ?』
ツッチーがフォローしてくれた。
「一件目、原付バイクの接触痕。第三、自転車のタイヤ痕。第五はまだ見てないから、分からない。でも、必ずあるはず…。」
「任せて。アマキちゃんの班のメンバー何人か貸して。」
カエが心強く返してくれる。
「ありがと。二つ目は、三年前のとある事故について調べて欲しい…。」
『事故?』
ミヤマが不思議そうな声を上げる。
『事故…。もしかして、四件目の住宅地付近の事故か?』
「流石ツッチー。そう、その事故を徹底的に調べられるだけ、調べて。制限時間は一七時まで。」
少し、わくわくしてきた。この、ひったくり事件はメッセージが隠されている…。
私にとって、問題が餌の様な感覚…。難問な程、全てを解き明かしたくなる…。
“全てを見つけて、全てを拾うのは、賢いとは言えないよ。”
その言葉が、一瞬頭をよぎった…。彼が、私に最初に教えてくれたことだった…。
『アマキ、余計な事考えんなよ。』
ツッチーの声だった。
『お前は無駄にプレッシャーに弱いところあるから、あまり気にするな。自分のやり方で、切り開いたんだろ?だったら、もっと自信持て、この俺がお前を全力でフォローしてやる。』
彼のその応援はもう二年もずっと聞いてきたが、今日だけは、何故か一番心強かった。
「ありがと、ツッチー。じゃぁ皆、私の手足になって。」
『オーダー、心得ましたよ。』
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私はその後、一旦ホームズに戻り、車を動かした。
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