探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅧ:二つの事件

#13

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 「…。」
 梅木警部始め、その場に居る刑事たちは、押し黙った。
 言われてみれば、確かにそうだ。今回の事件は、当然人命がかかっている。
 一刻も早く、事件解決が望まれる現場で、誰が信用できないとか、何が気に食わないだとか、言っている場合ではない。
 一番、我々の事を信じているのは、人質に取られている、被害者達だ。私たちが、私たち自身を信用しないで、どうするのか…。
 「梅木警部、ここは、彼等に賭けてみましょう。彼等の力は、私も保証します。」
 私は、初めて上司に意見したかもしれない。
 だが、不思議と恐怖心は無かった。
 「…分かった。その代わり、危険だと思ったら、直様我々に主導権を渡してもらう。
 少なくとも、お前たちは、一般市民だ。被害が及んだら、それこそ警察の恥だ。
 それは、死んでも守ってもらう。良いな?」
 梅木警部は、日下部さんに睨みを利かせ、そう彼等に言い聞かせた。
 『熱いねぇ…。』
 スマホの向こうで、柏木さんの呟きが聞こえた。
 『話は纏まったようだね。では、改めて、任せるよ。ホームズの諸君。』
 笹野次長が、そう言うと、スマホの通話が切れた。
 「と、言うわけです。今、我々のメンバーは、もう二人、追加で来ます。それまで、犯人の要求を聞き出すことと、時間稼ぎ、お願いします。」
 日下部さんが、梅木警部に指示を出した。
 梅木警部は、渋々了承し、全員を持ち場に着かせた。
 「二人って、誰が来るんですか?」
 私はこっそりと、日下部さんに訊ねた。
 「我々にも、現場指揮者が必要です。なので、アマキ班から二人。アミさんと、ソウさんが、こちらに向かっているそうです。」
 それを聞いて、安心した半面、不安になった自分もいた。
 相沢さんは確か、警察嫌いだったはず…。そんな彼が、私たちと一緒にやっていけるのだろうか…。
 「あいつも、何だかんだで、仕事が出来る男です。クドーさんが思っている様な事は、起きませんよ。」
 私の心象を察したのか、大竹さんが、そう話した。
 「それより、さっきのクドーさんの、大見え、カッコよかったっすよ。」
 その言葉には、少しドキリとした。
 「そ、そうですか?
 まぁ、目的が一緒なので、なるべく確実な方を選んだ方が良いかなぁと…。あはは…。」
 あまり褒められ慣れていない為、ぎこちない笑いしか、出てこなかった。
 それでも、やはり、褒められれば、悪い気はしない。
 
 コンビニの店内から、動きがあったのは、その直後だった。
 ガシャン!と大きな音が店の外まで響き渡った。
 「時間稼ぎとか、言っていられなくなったな…。」
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