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4 勿体ないお化けが出るわよーオバタリアンは食材を無駄にするのは許さないーその1
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『うん、うん。これで面倒な旦那様のお世話はペクスィモちゃんに丸投げっと……ん? なんか侍女達の視線が熱いわねぇ』
「ジュリエット様! 素晴らしいです。その慈悲深さと寛容さ、このアルシナ感激いたしましたっ! 先代の亡くなられた奥様以上の女傑! ケビン公爵家は奥様がいらっしゃる限り安泰です!」
侍女長のアルビナが真理に抱きつき感涙する。
「え? あぁ、そうかしら? なんていうか……おほほほ、当主夫人として当然のことですわ」
『だって、イリスィオスのことなんてなんとも思ってないしねぇ。私から見たらまだほんの子供よ。こんな若僧にヤキモチなんか湧きようもないわ。孫よ、孫。お子ちゃまにしか見えんわ。それより早くこのバカップルを追っ払ってなんか食べたいわぁ』
「では、とにかく旦那様はペクスィモさんを労ってあげてくださいな。ペクスィモさんの食欲が戻るように気をつけてあげてくださいね。お腹の子供はケビン公爵家の大事な子供ですからね。じゃぁ、仲良くお二人とも離れにどうぞ移動してくださいな」
真理はそう言いながら手をひらひらさせたが、固まったように動かないイリスィオス。
「そうですとも! 奥様のおっしゃる通りに旦那様はするべきです。さぁ、さっさと離れに行ってください。大事な奥様の食事が冷めてしまいますわ。コックが奥様の為にトマトスープ仕立てのパン粥を作りましたよ。ミルクに蜂蜜もたっぷり入れて持って来ますからね」
アルシナはイリスィオス達を手際よく追いたてると、真理の食事をいそいそと自ら運ぶのであった。
翌日は朝から侍女達の動きがいつもと違う。いつも来る愛想のない専属侍女達の代わりに恭しくアルシナが真理の寝室にやって来て、そっと起こすと静かにカーテンを開ける。しかもその手には今まで持って来たこともない白いバラの花束を持っていた。
「奥様のお部屋に飾りましょう。高貴な白バラはケビン公爵家の紋章にも描かれております。代々、ケビン公爵夫人のお部屋にはこの花が飾られていました。これからは欠かさずお持ちしますね」
「あら、ありがとう。とても綺麗ね」
いつもツンとしていたアルシナが真理を崇めるような眼差しで見つめており、少々こそばゆい思いのする真理である。
「はい、奥様にぴったりですわ。気高い自己犠牲の精神と海のごとき寛容な広いお心! この白バラはそのような奥様にぴったりでございます」
真理はアルシナの過大評価に戸惑い苦笑するのだった。
豪華な食堂の長いテーブルには朝からたくさんの食べ物が並び、真理の勿体ないオバタリアン気質がまた発動する。
『スクランブルエッグにカリカリに焼いたベーコンと、ほどよく焦げ目のついたソーセージ、サラダまではいいとしても……なぜここでディナーに食べるような肉の塊まで出現するのよ! パンの種類もバゲット、ブリオッシュ、クロワッサン、ボールの形のブール、この柔らかい山形パンはパン・ド・ミだわ。スープにサラダ、フレッシュジュース5種にミルク。しかもデザートも7種類あって、とても私一人では食べきれないわよ。量も種類も多すぎて……ここはホテルのバイキングかっての!』
「この朝食はいつもより多いのでは? 旦那様も離れでお召し上がりになるのになぜこれほど豪華なのかしら?」
「それは、ジュリエット様を当主夫人として使用人一同が認めたからですわ。ケビン公爵夫人ともなればこの国一番の資産家の奥方様。ケビン公爵家はダイアモンド鉱山をいくつもお持ちではありませんか。当主夫人の前に並べられる皿の数は権力と富の象徴です!」
アルシナが鼻の穴を膨らませて語気も荒く当然のように主張する様子に、この世界の価値観の愚かさにため息をつく真理であった。
「そうね。そういうことならこの食事量は必要悪かしら? でも流石にこれは一人では無理よ。この余ったものはどうなるの?」
「当主夫妻のお食事の余りは潔く捨てます。残飯が大量で高級食材であることも富と権力の象徴ですので……」
「まぁ、なんてこと! 勿体ないお化けが夢に出てくるわよ。だったら、私から提案があるわ」
୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧
※ご注意
勿体ないお化けとは
概要
1982年12月電通大阪制作。テーマ「教育」のひとつとして、食べ物を粗末にしないことを啓蒙する目的で制作された。当時人気番組だった『まんが日本昔ばなし』(毎日放送・TBS系)と同様に、中田実紀雄プロデュースのアニメーション、常田富士男と市原悦子のナレーションを起用。ストーリーそのものも昔話をモチーフに仕上げられており、ほのぼのと心情に訴える作品となった。人気を受け、本CMは後述の関連作品とともに1990年代まで長期に渡りテレビで放映された。
CMに現れるもったいないお化けは一般に言われる「お化け」の典型であり、報恩感謝を怠った者に文字通り化けて現れている。御霊信仰のたたり、もしくは仏教の因果応報を子供向けの柔らかい説話風に仕立て上げるための、本CM向けのオリジナルである。
CMは60秒版、30秒版、さらに英語版も作成された。
あらすじ
昔、寺の和尚が子どもたちを晩ごはんに招く。しかし、子どもたちは「大根嫌いじゃ」「豆嫌いじゃ」などと言いながら嫌いな食べ物を次々と跳ねのけてしまう。するとその夜、子どもたちの前に紫の紋付き着物を纏った食べ物のお化けが現れ、子どもたちを取り囲んで体を左右に揺らしながら「もったいねぇ~」と恐ろしい声で怖がらせる。その後、その出来事を知った和尚は「それは『もったいないお化け』というものじゃよ」と答える。それ以来、子どもたちは食事を残さず食べるようになった。
CMの最後には「たべものを大切に」の文字が表示される。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋
『』は真理の心の声
「ジュリエット様! 素晴らしいです。その慈悲深さと寛容さ、このアルシナ感激いたしましたっ! 先代の亡くなられた奥様以上の女傑! ケビン公爵家は奥様がいらっしゃる限り安泰です!」
侍女長のアルビナが真理に抱きつき感涙する。
「え? あぁ、そうかしら? なんていうか……おほほほ、当主夫人として当然のことですわ」
『だって、イリスィオスのことなんてなんとも思ってないしねぇ。私から見たらまだほんの子供よ。こんな若僧にヤキモチなんか湧きようもないわ。孫よ、孫。お子ちゃまにしか見えんわ。それより早くこのバカップルを追っ払ってなんか食べたいわぁ』
「では、とにかく旦那様はペクスィモさんを労ってあげてくださいな。ペクスィモさんの食欲が戻るように気をつけてあげてくださいね。お腹の子供はケビン公爵家の大事な子供ですからね。じゃぁ、仲良くお二人とも離れにどうぞ移動してくださいな」
真理はそう言いながら手をひらひらさせたが、固まったように動かないイリスィオス。
「そうですとも! 奥様のおっしゃる通りに旦那様はするべきです。さぁ、さっさと離れに行ってください。大事な奥様の食事が冷めてしまいますわ。コックが奥様の為にトマトスープ仕立てのパン粥を作りましたよ。ミルクに蜂蜜もたっぷり入れて持って来ますからね」
アルシナはイリスィオス達を手際よく追いたてると、真理の食事をいそいそと自ら運ぶのであった。
翌日は朝から侍女達の動きがいつもと違う。いつも来る愛想のない専属侍女達の代わりに恭しくアルシナが真理の寝室にやって来て、そっと起こすと静かにカーテンを開ける。しかもその手には今まで持って来たこともない白いバラの花束を持っていた。
「奥様のお部屋に飾りましょう。高貴な白バラはケビン公爵家の紋章にも描かれております。代々、ケビン公爵夫人のお部屋にはこの花が飾られていました。これからは欠かさずお持ちしますね」
「あら、ありがとう。とても綺麗ね」
いつもツンとしていたアルシナが真理を崇めるような眼差しで見つめており、少々こそばゆい思いのする真理である。
「はい、奥様にぴったりですわ。気高い自己犠牲の精神と海のごとき寛容な広いお心! この白バラはそのような奥様にぴったりでございます」
真理はアルシナの過大評価に戸惑い苦笑するのだった。
豪華な食堂の長いテーブルには朝からたくさんの食べ物が並び、真理の勿体ないオバタリアン気質がまた発動する。
『スクランブルエッグにカリカリに焼いたベーコンと、ほどよく焦げ目のついたソーセージ、サラダまではいいとしても……なぜここでディナーに食べるような肉の塊まで出現するのよ! パンの種類もバゲット、ブリオッシュ、クロワッサン、ボールの形のブール、この柔らかい山形パンはパン・ド・ミだわ。スープにサラダ、フレッシュジュース5種にミルク。しかもデザートも7種類あって、とても私一人では食べきれないわよ。量も種類も多すぎて……ここはホテルのバイキングかっての!』
「この朝食はいつもより多いのでは? 旦那様も離れでお召し上がりになるのになぜこれほど豪華なのかしら?」
「それは、ジュリエット様を当主夫人として使用人一同が認めたからですわ。ケビン公爵夫人ともなればこの国一番の資産家の奥方様。ケビン公爵家はダイアモンド鉱山をいくつもお持ちではありませんか。当主夫人の前に並べられる皿の数は権力と富の象徴です!」
アルシナが鼻の穴を膨らませて語気も荒く当然のように主張する様子に、この世界の価値観の愚かさにため息をつく真理であった。
「そうね。そういうことならこの食事量は必要悪かしら? でも流石にこれは一人では無理よ。この余ったものはどうなるの?」
「当主夫妻のお食事の余りは潔く捨てます。残飯が大量で高級食材であることも富と権力の象徴ですので……」
「まぁ、なんてこと! 勿体ないお化けが夢に出てくるわよ。だったら、私から提案があるわ」
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※ご注意
勿体ないお化けとは
概要
1982年12月電通大阪制作。テーマ「教育」のひとつとして、食べ物を粗末にしないことを啓蒙する目的で制作された。当時人気番組だった『まんが日本昔ばなし』(毎日放送・TBS系)と同様に、中田実紀雄プロデュースのアニメーション、常田富士男と市原悦子のナレーションを起用。ストーリーそのものも昔話をモチーフに仕上げられており、ほのぼのと心情に訴える作品となった。人気を受け、本CMは後述の関連作品とともに1990年代まで長期に渡りテレビで放映された。
CMに現れるもったいないお化けは一般に言われる「お化け」の典型であり、報恩感謝を怠った者に文字通り化けて現れている。御霊信仰のたたり、もしくは仏教の因果応報を子供向けの柔らかい説話風に仕立て上げるための、本CM向けのオリジナルである。
CMは60秒版、30秒版、さらに英語版も作成された。
あらすじ
昔、寺の和尚が子どもたちを晩ごはんに招く。しかし、子どもたちは「大根嫌いじゃ」「豆嫌いじゃ」などと言いながら嫌いな食べ物を次々と跳ねのけてしまう。するとその夜、子どもたちの前に紫の紋付き着物を纏った食べ物のお化けが現れ、子どもたちを取り囲んで体を左右に揺らしながら「もったいねぇ~」と恐ろしい声で怖がらせる。その後、その出来事を知った和尚は「それは『もったいないお化け』というものじゃよ」と答える。それ以来、子どもたちは食事を残さず食べるようになった。
CMの最後には「たべものを大切に」の文字が表示される。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋
『』は真理の心の声
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