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6 静かに崩れていく
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【ギルベルト視点】
剣の稽古は、いつもどおり――のはずだった。
そう思ってた。
でも今日、対戦相手の一撃が妙にズシンときた。
「おいおい、手加減しろよ」って軽口叩いたら、
「え? いつも通りだぜ?」だと。
まあ、いいさ。俺の動きがキレッキレすぎて、相手が本気に見えただけだろ。
最近ちょっとだけ、踏み込みが遅れることがあるが、それも調整中ってやつだ。
昨日の稽古でも、一瞬だけ手首に違和感があったが、ただの使いすぎだろうな。
むしろ俺がどんどん鍛えられてる証拠だ。限界を超えてこそ、強くなるもんだしな。
それにしても、今日は朝食があんまり進まなかった。妙に食欲が湧かなくて、残しちまったけど……まあ、そんな日もあるか。
気にするほどのことでもない。ちょっと眠りが浅かっただけだろう。昨日はミレイユも泊まって……色々あったしな、ふふん。
しかし、この鎧、前より重く感じる気がするぞ。
けど、それも俺の感知能力が発達して、前は気づけなかった重みまで感じ取れるってことだよな?
俺の感性は相当研ぎ澄まされてるな。
騎士として感覚が鋭くなってきた証ってやつだ。
うん、悪くない。
ああ、そういえば、手の擦り傷……まだちょっと赤いか?
いつもならポーションで速攻、治ってたが、まぁ使うまでもない傷だしな。
それに、もう俺にはああいう補助は不要だ。
ポーションなんて所詮、気休めだろう?
本当に強いやつは、そんなもんに頼らないのさ。
……ま、明日には全部、元通りになってるだろ。
【ミレイユ視点】
最近、少し変なのよね。
神の声が……なんだかぼんやりとして、かすれて聞こえるの。
以前はもっとはっきりと耳に届いたのに。
まるで澄んだ鈴の音のように、胸の奥まで響いていたはずなのよ。
耳が悪くなったのかしらって、念のため神殿医に診てもらったの。
でも「まったく異常は見られません」って言われたわ。
だったら――きっと疲れてるのね。
少し無理してたもの。あれだけの人々が私に奇跡を求めてくるのだから、疲れて当然よね。
……でも、スフレドリたちの姿も最近見かけないのよね。
あの、まるっとしてて青くて可愛らしい小鳥たち。
前は神殿の中庭にもたくさんいて、私が姿を見せれば、我先に枝から舞い降りてきて、肩に止まったり指先でさえずったりしていたのに。
姿が消えたのは、いつからかしら?
忘れちゃったわ。
……まぁ、どうせまたそのうち戻ってくるでしょう。
鳥なんて、所詮は気まぐれな生き物なんだから。
――あら。
ふと袖口に目を落とすと、聖衣の刺繍が少しほつれていた。
まったく。私付きの聖女官たちったら、なんて怠慢なのかしら。
ちゃんと整えておくように、昨日も言ったばかりじゃない。
……もういいわ。今夜は食事抜き。自業自得よね。少しくらい痛い目を見ないと、きっとまた気が緩むもの。
……ま、きっと明日には、全部元通りになっているでしょう。
神の声も、小鳥たちも、聖女官たちの仕事ぶりも。
全部――私がちゃんと整えてあげれば、何も問題なんて起こらないのだから。
【リーナ視点】
「……あら、あなたたち、どこから来たの?」
朝の光が差し込む庭の枝に、青いスフレドリたちが仲良く並んでいる。並んだまるい背中が、とても愛らしい。
私はそっと笑って、手のひらを差し出す。いち羽が跳ねて乗ると、他の子たちもやって来た。
――……かわいい。
私はこの小鳥たちとすぐに仲良くなった。
……でも不思議ね。スフレドリって神殿や聖域にしか生息しない希少な鳥って言われているのに。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
※本作の世界をより楽しんでいただくための一助として、スフレドリのAIによるイメージイラストを掲載しております。必要に応じてご覧いただければ幸いです。
剣の稽古は、いつもどおり――のはずだった。
そう思ってた。
でも今日、対戦相手の一撃が妙にズシンときた。
「おいおい、手加減しろよ」って軽口叩いたら、
「え? いつも通りだぜ?」だと。
まあ、いいさ。俺の動きがキレッキレすぎて、相手が本気に見えただけだろ。
最近ちょっとだけ、踏み込みが遅れることがあるが、それも調整中ってやつだ。
昨日の稽古でも、一瞬だけ手首に違和感があったが、ただの使いすぎだろうな。
むしろ俺がどんどん鍛えられてる証拠だ。限界を超えてこそ、強くなるもんだしな。
それにしても、今日は朝食があんまり進まなかった。妙に食欲が湧かなくて、残しちまったけど……まあ、そんな日もあるか。
気にするほどのことでもない。ちょっと眠りが浅かっただけだろう。昨日はミレイユも泊まって……色々あったしな、ふふん。
しかし、この鎧、前より重く感じる気がするぞ。
けど、それも俺の感知能力が発達して、前は気づけなかった重みまで感じ取れるってことだよな?
俺の感性は相当研ぎ澄まされてるな。
騎士として感覚が鋭くなってきた証ってやつだ。
うん、悪くない。
ああ、そういえば、手の擦り傷……まだちょっと赤いか?
いつもならポーションで速攻、治ってたが、まぁ使うまでもない傷だしな。
それに、もう俺にはああいう補助は不要だ。
ポーションなんて所詮、気休めだろう?
本当に強いやつは、そんなもんに頼らないのさ。
……ま、明日には全部、元通りになってるだろ。
【ミレイユ視点】
最近、少し変なのよね。
神の声が……なんだかぼんやりとして、かすれて聞こえるの。
以前はもっとはっきりと耳に届いたのに。
まるで澄んだ鈴の音のように、胸の奥まで響いていたはずなのよ。
耳が悪くなったのかしらって、念のため神殿医に診てもらったの。
でも「まったく異常は見られません」って言われたわ。
だったら――きっと疲れてるのね。
少し無理してたもの。あれだけの人々が私に奇跡を求めてくるのだから、疲れて当然よね。
……でも、スフレドリたちの姿も最近見かけないのよね。
あの、まるっとしてて青くて可愛らしい小鳥たち。
前は神殿の中庭にもたくさんいて、私が姿を見せれば、我先に枝から舞い降りてきて、肩に止まったり指先でさえずったりしていたのに。
姿が消えたのは、いつからかしら?
忘れちゃったわ。
……まぁ、どうせまたそのうち戻ってくるでしょう。
鳥なんて、所詮は気まぐれな生き物なんだから。
――あら。
ふと袖口に目を落とすと、聖衣の刺繍が少しほつれていた。
まったく。私付きの聖女官たちったら、なんて怠慢なのかしら。
ちゃんと整えておくように、昨日も言ったばかりじゃない。
……もういいわ。今夜は食事抜き。自業自得よね。少しくらい痛い目を見ないと、きっとまた気が緩むもの。
……ま、きっと明日には、全部元通りになっているでしょう。
神の声も、小鳥たちも、聖女官たちの仕事ぶりも。
全部――私がちゃんと整えてあげれば、何も問題なんて起こらないのだから。
【リーナ視点】
「……あら、あなたたち、どこから来たの?」
朝の光が差し込む庭の枝に、青いスフレドリたちが仲良く並んでいる。並んだまるい背中が、とても愛らしい。
私はそっと笑って、手のひらを差し出す。いち羽が跳ねて乗ると、他の子たちもやって来た。
――……かわいい。
私はこの小鳥たちとすぐに仲良くなった。
……でも不思議ね。スフレドリって神殿や聖域にしか生息しない希少な鳥って言われているのに。
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※本作の世界をより楽しんでいただくための一助として、スフレドリのAIによるイメージイラストを掲載しております。必要に応じてご覧いただければ幸いです。
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