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7 待てよ・・・・・・これって(アーノルド視点)
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私は裁判所から呼び出し通知をもらった。罪状は『動物虐待の放置の疑い』だという。以下がその文面だ。
スラエ侯爵家の領地では動物の死骸が大量に埋められた森があるという。領民が動物を虐待し死ぬのを放置させていた疑いがあるので動物虐待防止法29条により罰金100万フランに処す。裁判所に出頭されたし。
くだらない罪状でこの私を呼び出すとは! だいたいその森に犬を捨てていたのはこの私だ。あの森は私がさんざん痛めつけて死んだ動物のお墓なんだぞ! それは幼い頃から繰り返されてきた慣習だった。王太子殿下と私は大親友で、その楽しい慣習を一緒にやってきた仲だった。 裁判官め! 王太子殿下に頼んで解雇させてやるから、覚えていろ!
私は怒りつつその手紙を読みビリビリに破くと王宮に向かった。
「王太子殿下にお会いしたい」
いつものように門番に言うと、大勢の騎士達が立ちはだかって進路を妨害した。
「なりません! 王太子殿下はただいまお忙しいとのことです。どなたともお会いしません!」
「なんだと! 私は特別なのだぞ! 通さなければお前らはきっと酷い罰をくらうからな!」
「なんと言われても、通せないものは通せません!」
いつもぺこぺこしていたこいつらが、急に偉そうに上から目線だ。
――おかしいな。いつもなら顔パスで入れる宮殿も騎士達が守っていて庭園にすら足を踏み入れさせないとは。
とうとうそのくだらない裁判の日になり、行くつもりのない私はのんびりと昼寝をしていた。だが、わざわざ迎えの馬車がやって来てなぜか騎士達に抱え込まれて馬車に乗せられたのだった。
しかも、連れて行かれたのは普通の裁判所ではない・・・・・・大罪人の貴族を裁くための王家も関わる裁判所に連れて行かれた私には、これがどういうことなのかさっぱりわからない。軽犯罪の罰金ならこんなところには用はないはずだ。
「まずは犬猫の虐待についてだが、スラエ侯爵は特に子犬を殴り殺すのが好きらしいな」
若い裁判官がにこりともせず聞いてくる。
「まさか・・・・・・誰がそんなことを! おい、お前言葉には気をつけろよ! 私は候爵だぞ!」
こんな若造に上から目線で問われるなど屈辱だ。
「スラエ侯爵家をやめた侍女達の証言です」
「ははは。首になった腹いせで嘘の証言をしたのでだろう? 困ったクズ達だ」
証言台に立った侍女達はかなり前に首にした侍女達だ。
ーー私を告発するとはいい度胸だ。あとで、全員むち打ちにしてやるぞ!
ーー権力者に逆らうとどうなるか思い知らせてやらないとな。
「罰金100万フランを払ってください」
馬鹿馬鹿しい。私は支払い証明書にサインをして退席しようとした。
「待てよ! お前の罪はこれだけじゃないよ」
私をお前呼ばわりとは良い度胸だ。その声の主は、と見ればオラン侯爵じゃないか! そして、後ろにはサマーがいた!
「ふふん、お前だったのか? 誘拐犯は? 私の妻を堂々真っ昼間に誘拐したのが、騎士団長様とはおそれいったよ。この国の法律を騎士団長様がお破りになるとはなぁ! 住居侵入罪と誘拐罪か? 隠匿罪もかな? 傷害罪もあるよなぁ? 私の部下がずいぶんと痛めつけられた。裁判官、こいつは犯罪者だ!」
「お前は、か弱い女性を殴るのが趣味の変態やろうだ! お前こそ裁きを受けるべきだ」
「ふっ。妻にした女性に躾けをしただけだよ。悪いことをしたら折檻されるのは当然じゃないか? だいたい、この私は王太子殿下の親友だぞ!」
「黙れ! お前の親友の王太子は廃嫡にした」
裁判官の座る奥の扉が開き、国王陛下がお出ましになった。
「まさか・・・・・・」
続いて貫禄のある女性が2人、別の扉から現れて悠々と私の前を通り過ぎて行く。その女性の護衛の一人に私はなんと小突かれて床に顔を叩きつけられた。頭と頬がズキズキしやがる!
「頭が高いぞ! この方をどなたと心得る! 先王の妹君と隣国の女王エカテリーナ様だ!」
――へ? 女王・・・・・・・なんでそんな大物がここにいるの?
スラエ侯爵家の領地では動物の死骸が大量に埋められた森があるという。領民が動物を虐待し死ぬのを放置させていた疑いがあるので動物虐待防止法29条により罰金100万フランに処す。裁判所に出頭されたし。
くだらない罪状でこの私を呼び出すとは! だいたいその森に犬を捨てていたのはこの私だ。あの森は私がさんざん痛めつけて死んだ動物のお墓なんだぞ! それは幼い頃から繰り返されてきた慣習だった。王太子殿下と私は大親友で、その楽しい慣習を一緒にやってきた仲だった。 裁判官め! 王太子殿下に頼んで解雇させてやるから、覚えていろ!
私は怒りつつその手紙を読みビリビリに破くと王宮に向かった。
「王太子殿下にお会いしたい」
いつものように門番に言うと、大勢の騎士達が立ちはだかって進路を妨害した。
「なりません! 王太子殿下はただいまお忙しいとのことです。どなたともお会いしません!」
「なんだと! 私は特別なのだぞ! 通さなければお前らはきっと酷い罰をくらうからな!」
「なんと言われても、通せないものは通せません!」
いつもぺこぺこしていたこいつらが、急に偉そうに上から目線だ。
――おかしいな。いつもなら顔パスで入れる宮殿も騎士達が守っていて庭園にすら足を踏み入れさせないとは。
とうとうそのくだらない裁判の日になり、行くつもりのない私はのんびりと昼寝をしていた。だが、わざわざ迎えの馬車がやって来てなぜか騎士達に抱え込まれて馬車に乗せられたのだった。
しかも、連れて行かれたのは普通の裁判所ではない・・・・・・大罪人の貴族を裁くための王家も関わる裁判所に連れて行かれた私には、これがどういうことなのかさっぱりわからない。軽犯罪の罰金ならこんなところには用はないはずだ。
「まずは犬猫の虐待についてだが、スラエ侯爵は特に子犬を殴り殺すのが好きらしいな」
若い裁判官がにこりともせず聞いてくる。
「まさか・・・・・・誰がそんなことを! おい、お前言葉には気をつけろよ! 私は候爵だぞ!」
こんな若造に上から目線で問われるなど屈辱だ。
「スラエ侯爵家をやめた侍女達の証言です」
「ははは。首になった腹いせで嘘の証言をしたのでだろう? 困ったクズ達だ」
証言台に立った侍女達はかなり前に首にした侍女達だ。
ーー私を告発するとはいい度胸だ。あとで、全員むち打ちにしてやるぞ!
ーー権力者に逆らうとどうなるか思い知らせてやらないとな。
「罰金100万フランを払ってください」
馬鹿馬鹿しい。私は支払い証明書にサインをして退席しようとした。
「待てよ! お前の罪はこれだけじゃないよ」
私をお前呼ばわりとは良い度胸だ。その声の主は、と見ればオラン侯爵じゃないか! そして、後ろにはサマーがいた!
「ふふん、お前だったのか? 誘拐犯は? 私の妻を堂々真っ昼間に誘拐したのが、騎士団長様とはおそれいったよ。この国の法律を騎士団長様がお破りになるとはなぁ! 住居侵入罪と誘拐罪か? 隠匿罪もかな? 傷害罪もあるよなぁ? 私の部下がずいぶんと痛めつけられた。裁判官、こいつは犯罪者だ!」
「お前は、か弱い女性を殴るのが趣味の変態やろうだ! お前こそ裁きを受けるべきだ」
「ふっ。妻にした女性に躾けをしただけだよ。悪いことをしたら折檻されるのは当然じゃないか? だいたい、この私は王太子殿下の親友だぞ!」
「黙れ! お前の親友の王太子は廃嫡にした」
裁判官の座る奥の扉が開き、国王陛下がお出ましになった。
「まさか・・・・・・」
続いて貫禄のある女性が2人、別の扉から現れて悠々と私の前を通り過ぎて行く。その女性の護衛の一人に私はなんと小突かれて床に顔を叩きつけられた。頭と頬がズキズキしやがる!
「頭が高いぞ! この方をどなたと心得る! 先王の妹君と隣国の女王エカテリーナ様だ!」
――へ? 女王・・・・・・・なんでそんな大物がここにいるの?
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