(完結)王太子妃の苦悩ーーなぜ私は王太子が嫌いになれないのでしょう?

青空一夏

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7 クラーク王太子視点

「俺を断罪するのか? 何様のつもりだ。第2王子の分際で!」

 この世界は俺のものだ。俺を中心に操り人形達が動く夢の世界。ここでの絶対的支配者は俺だけだ。

「黙れ! 今までがおかしかったのだ。少しも優秀でない愚かな長男が王太子になっていることがそもそもの間違いなのだ。その眼鏡のお陰で皆が正気に戻れた。でかしたぞ、アルフォンス」

 父上がアルフォンスを褒める。こんなことは初めてだ。

「いや、ここは男性版ハーレムゲームの世界だろう? 俺は何をしても許されてウハウハな生活が満喫できるはずだった。ここは成人向けのアダルトゲームなはずじゃぁないのか」

 ストーリーも登場人物も激似しているけれどこんな眼鏡はどこにも出てこなかった。弟アルフォンスの国外追放を取り消したのがいけなかったのだろうか? これからはハーレム状態で、まさに多数の女と遊びまくるという展開になるはずだったのに。

「そうか、アルフォンスがまだ国内にいるからストーリーが変わってきてしまったんだ。アルフォンスはここにいてはいけない人間だな。こいつがいなくなれば、この世界の若くて美しい女は全て俺のものになる」

 俺はつい声に出して本音を漏らしてしまう。そう、俺は嘘がつけない純粋な人間だから。

「恐ろしい人ですね。女性がそれほど好きなのであれば遠い異国の女性ばかりの国に追放して差し上げましょう。どうぞそこで終生お暮らしください」

 アルフォンスがパラダイスな提案を俺に投げかけた。

「女ばかりの国があるのか? なんと素晴らしい国だ。俺はそこで王様のように女達にかしづかれたい。まさに男の夢だよ」

 俺はアルフォンスに感謝さえした。なんて良い弟だ。

       



 


 女ばかりの国境に捨てられ、そちらに入国する際に聞かれたことは一つだけだ。

「男がこの国の民になるには条件があります。健康な若い女性に子供を授けることです。それが仕事になりますが、よろしいですか? それから……」

「いや、面倒な説明はそれ以上はいらない。そんな天国な条件ならいくらでも飲むから」

 俺は男としてヒャッホーな条件を女王様から提示され、説明を途中で遮り嬉々として入国した。

(こんな男のパラダイス、誰が断るんだよ?)

 そして俺はせっせとたくさんの女達と子作りに励む。最初は天国だった。ところが、これが仕事になってくると苦痛を感じるようになる。毎日、毎日、女と四六時中しろ、と言われても俺だって寝たいし、したくない日だってあるよ。

「何をサボっているのですか! 最低限の睡眠と食事時間以外は、やることは一つです。この国にはお前しか男はいないのですよ? できなくなるまで女性に子種を授けるのです!」

 この国に来てから5年が経とうとしていた。最早、女とすることは少しも楽しくなくなり、干からびて死にそうだ。

「俺は種馬じゃねー。もう限界だ。少しは休ませろ」

「できなくなったらお前にはなんの価値もないです。その後は死刑が待っています」

「いや、待て。なんで死刑なんだよ? 俺はこの国に多大な貢献をしただろう?」

「この国では代々、男はその為だけに存在します。女が1番尊い生き物ですから男は用が済んだら殺されます」

「まさか……そんなの聞いてないよ」

「今初めて言いました。だってお前は説明を遮ったでしょう? 愚かな男は皆んなそうです。考えてもご覧なさい。なぜここに男が1人もいないのか。それは男は用が済んだら殺されるからです」

「……だって、産まれてくる子の中には男がいてもおかしくないだろう? 産まれてきた男の子も殺すのか?」

「この国の女達は女しか産めないようになっています。それがなぜかはわかりませんが、きっと女神様のご意志なのでしょう」

「どんな底意地の悪い女神だよ!」

「お前は即刻死刑です! 偉大な女神様のことを悪くいうなど、罰当たりめがっ!」


 この国では昔、男を巡って女達が取り合いをし殺し合うようになったことがあったらしい。多くの血が流れてこの国は崩壊寸前になったとか。その為、この国の女達は男に夢中にならないよう暗示をかけられながら育てられるという。

 つまり俺の魅了の魔法はここでは無効化されるってわけさ。あのけしからん眼鏡がはずれた後も、道理で女達の反応が変わらなかったはずさ。

 そうして俺はあっという間に処刑される……と思ったら洞穴に閉じ込められそのまま放置された。水も食い物もなくひたすら寒い洞穴で1人寂しく飢えながら餓死するという末路だ。

(み、水……喉が渇いて死にそうだ……酷いよ。こんなの聞いてない。今ならカマキリの雄の気持ちが痛いほどわかるよ。雄蜂の気持ちもな。こんなはずじゃなかったのに)

 俺は今更自分の行いを悔いたけれどそれはあまりに遅すぎた。死はなかなか訪れないし、短くはない苦痛を味わう羽目になったのだった。

 

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