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1 家族に不信感を感じた瞬間
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初顔合わせの日。ワイアット様はエルズバー伯爵夫妻とこちらに訪ねていらっしゃった。
「初めてお目にかかります。僕はワイアットと申します。こんなに可愛い女性を婚約者にできて嬉しいです。どうぞよろしくお願いします」
月並みな自己紹介だったけれど、誠実な口調だったし金髪碧眼の爽やかな美青年だった。礼儀正しく、私を見つめる眼差しもとても柔らかだ。
(この方となら良い家庭を築いていけそうだわ。義両親となるエルズバー伯爵夫妻も穏やかな性格のようだし)
私がすっかり安堵し始めた頃、執務室で教育係である家令から当主教育を受けていたお姉様が合流した。
「私がこのウォーク公爵家を継ぐ長女のカトレアですわ。妹の婚約者になるエルズバー伯爵令息とは初めてお会いしますわね? どうぞよろしくお願い致します」
お姉様は淡いピンクの真っ直ぐで艶やかな髪をなびかせて、しなやかな曲線を描く魅惑的な肢体をクリーム色のドレスに包んで、綺麗な顔に色っぽい笑みを浮かべて挨拶をする。
部屋の空気が一気に変わった。お姉様の圧倒的な存在感はすごいと思う。お父様譲りのすらりとした背の高さと、エメラルドグリーンの瞳は吸い込まれるようで、ピンクの髪からは甘い香りがした。お姉様はお父様似なのよ。ちなみにお父様の髪は緑だけれど。
「・・・・・・すっっごい・・・・・・美しい女性ですね。本当にお二人は同じ両親から産まれた姉妹なのですか?」
ワイアット様が聞き捨てならぬことを尋ねた。少しだけ好感度が下がる。
「えぇ、もちろんですわ! 二人とも私の可愛い娘達ですのよ」
お母様は得意気に胸をそらした。 私とお母様は良く似ている。ブラウンの髪と瞳で、小柄で華奢な身体付きもそっくりだった。
私達が4人揃えば大抵の方々は納得する。私はお母様の遺伝子を、お姉様はお父様の遺伝子を受け継いだのだということを。
今まではその事実に満足していたし、少しも不満には感じなかった。でも今は・・・・・・お父様の遺伝子がもう少し多く欲しかった。だって、私の婚約者のはずのワイアット様は、お姉様に熱のこもった視線を向けていたから。
(あなたの婚約相手は私のはずですけど?)
そんな言葉を口に出せない私は意気地無しだ。ただ困ったような笑みを浮かべて、ソファに座りつづけているしかできない。
ワイアット様はお姉様に向けて話しかけ、笑いかけ、お姉様の話にとても楽しそうに相づちをうつ。彼はこの場を去るまで、私の方に視線を向けることはなかったのよ。
その間、お姉様は淡々と彼の話相手を務めていた。曖昧な笑み・・・・・・それは楽しいのか怒っているのかわからないようなミステリアスな笑みを浮かべながら。
(なぜなの? お姉様)
私がお姉様の立場ならきっと怒ると思う。『ワイアット様は妹の婚約者になるのですよ。いい加減私にだけ、べたべたと話しかけてくるのはやめていただけませんこと?』と、このようなセリフを吐いて不快感を示すはずだ。
でも、お姉様は怒らなかった。それに、いつもは私を可愛がって大事にしてくれる両親でさえも、ワイアット様に不快感を示すことはなかったのよ。
(なぜなの? 私は家族から愛されていたのではないの?)
今まで感じたことのないお姉様に対する劣等感と不信感。両親の愛を疑った瞬間だった。
(心が痛いわ)
幼い頃から大好きだった家族なのに、こんなのは悲しすぎた。
「初めてお目にかかります。僕はワイアットと申します。こんなに可愛い女性を婚約者にできて嬉しいです。どうぞよろしくお願いします」
月並みな自己紹介だったけれど、誠実な口調だったし金髪碧眼の爽やかな美青年だった。礼儀正しく、私を見つめる眼差しもとても柔らかだ。
(この方となら良い家庭を築いていけそうだわ。義両親となるエルズバー伯爵夫妻も穏やかな性格のようだし)
私がすっかり安堵し始めた頃、執務室で教育係である家令から当主教育を受けていたお姉様が合流した。
「私がこのウォーク公爵家を継ぐ長女のカトレアですわ。妹の婚約者になるエルズバー伯爵令息とは初めてお会いしますわね? どうぞよろしくお願い致します」
お姉様は淡いピンクの真っ直ぐで艶やかな髪をなびかせて、しなやかな曲線を描く魅惑的な肢体をクリーム色のドレスに包んで、綺麗な顔に色っぽい笑みを浮かべて挨拶をする。
部屋の空気が一気に変わった。お姉様の圧倒的な存在感はすごいと思う。お父様譲りのすらりとした背の高さと、エメラルドグリーンの瞳は吸い込まれるようで、ピンクの髪からは甘い香りがした。お姉様はお父様似なのよ。ちなみにお父様の髪は緑だけれど。
「・・・・・・すっっごい・・・・・・美しい女性ですね。本当にお二人は同じ両親から産まれた姉妹なのですか?」
ワイアット様が聞き捨てならぬことを尋ねた。少しだけ好感度が下がる。
「えぇ、もちろんですわ! 二人とも私の可愛い娘達ですのよ」
お母様は得意気に胸をそらした。 私とお母様は良く似ている。ブラウンの髪と瞳で、小柄で華奢な身体付きもそっくりだった。
私達が4人揃えば大抵の方々は納得する。私はお母様の遺伝子を、お姉様はお父様の遺伝子を受け継いだのだということを。
今まではその事実に満足していたし、少しも不満には感じなかった。でも今は・・・・・・お父様の遺伝子がもう少し多く欲しかった。だって、私の婚約者のはずのワイアット様は、お姉様に熱のこもった視線を向けていたから。
(あなたの婚約相手は私のはずですけど?)
そんな言葉を口に出せない私は意気地無しだ。ただ困ったような笑みを浮かべて、ソファに座りつづけているしかできない。
ワイアット様はお姉様に向けて話しかけ、笑いかけ、お姉様の話にとても楽しそうに相づちをうつ。彼はこの場を去るまで、私の方に視線を向けることはなかったのよ。
その間、お姉様は淡々と彼の話相手を務めていた。曖昧な笑み・・・・・・それは楽しいのか怒っているのかわからないようなミステリアスな笑みを浮かべながら。
(なぜなの? お姉様)
私がお姉様の立場ならきっと怒ると思う。『ワイアット様は妹の婚約者になるのですよ。いい加減私にだけ、べたべたと話しかけてくるのはやめていただけませんこと?』と、このようなセリフを吐いて不快感を示すはずだ。
でも、お姉様は怒らなかった。それに、いつもは私を可愛がって大事にしてくれる両親でさえも、ワイアット様に不快感を示すことはなかったのよ。
(なぜなの? 私は家族から愛されていたのではないの?)
今まで感じたことのないお姉様に対する劣等感と不信感。両親の愛を疑った瞬間だった。
(心が痛いわ)
幼い頃から大好きだった家族なのに、こんなのは悲しすぎた。
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