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2 アナスターシアの味方
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それからしばらくして、チェルシー王妃主催のお茶会の通知がカッシング侯爵家に届いた。そこには多くの名家の夫人や子供たちが招かれた。
ちなみに王族居住区である広い敷地には四つの城が建っている。国王が住む城はダイヤモンド城、王妃の住む城はルビー城、カラハン第一王子はエメラルド城、ハーランド第二王子はサファイア城で暮らしていた。
お茶会にはアナスターシアとローズリンが招待され、それぞれの専属侍女も伴って王宮に行くことになった。もちろん、カッシング侯爵夫人のサリナも同行した。ルビー城の豪華なサロンでは、お茶会が優雅に進行していく。貴族の夫人たちが、美しいティーカップを手に優雅に談笑しているなか、その子供たちもまたその一角に座った。
アナスターシアは隣に座ったマグレガー伯爵令嬢と会話が弾んだおかげで、すっかり喉が渇いていた。しかし、アニヤはアナスターシアのティーカップが空になっても、なかなか新しい紅茶を淹れようとしなかった。
「アニヤ、紅茶を淹れてちょうだい」
アナスターシアは、わずかに眉をひそめながら命令した。アニヤの気が利かないことはいつものことだった。
「かしこまりました、アナスターシア様。」
アニヤは恭しく頭を下げ、ティーポットを手に取った。しかし、手元が狂ったのか、熱い紅茶がアナスターシアのドレスにこぼれた。アニヤはカッシング侯爵家でも似たようなことを何度もしでかしていた。
「きゃあ!」アナスターシアは叫び声をあげ、立ち上がる。紅茶がドレスに染み込み、アナスターシアの頬は怒りで真っ赤になっていた。この場に王妃や貴族の貴婦人たちがいることも忘れ、いつものように怒鳴り散らしてしまう。
「アニヤ、何をしているの! こんな大事な場で恥をかかせるなんて! アニヤは不注意すぎるのよ!」
「申し訳ありません、アナスターシア様。」
アニヤは慌てた様子で謝罪し、急いで拭き取りの布を取り出した。
「すぐに綺麗にいたしますので・・・・・・焼きごてだけは勘弁してくださいませ」
「もういいわ、触らないで!」
アナスターシアはアニヤの手を払いのけ、周囲の貴婦人たちが注目するなかで声を荒げた。
「こんな失態、許せない! カッシング侯爵家に戻ったらお仕置きよ」
「アナスターシア様、入れ墨や焼きごては勘弁してください」
なんども『焼きごて』の言葉を連発するアニヤに、少し離れた席にいたカラハン第一王子が首を傾げた。アナスターシアと同じテーブルについていた令嬢たちも、驚き呆れるような表情をしていた。マグレガー伯爵令嬢に至っては、二度と話しかけてはいけない令嬢認定のなかに、アナスターシアを迷うことなく入れたほどだった。
「たしかにその侍女の落ち度ではあるが、入れ墨や焼きごての罰は酷すぎる。君はいつもそんなことを侍女に言っているのかい? それに、このような場面では静かに席を立ち、王家の侍女に着替えを申し出れば済むことだ。控え室にはたくさんの衣装が用意してある。君は短気すぎると思う。残酷な罰を軽々しく言葉にしてはいけないよ」
もっともな忠告をしたカラハン第一王子は、アナスターシアよりも少し年上だった。彼の瞳は深い知性と冷静さをたたえ、エメラルドのように輝いており、すべてを見通すかのような鋭さがあった。彼の一挙手一投足は計算され尽くされ、子供ながらも王族としての威厳を完璧に体現しているように見えた。
そこにハーランド第二王子が口をはさむ。ハーランド第二王子はカラハン第一王子と正反対のタイプで、親しみやすさと明るさを持ち合わせた存在だった。彼の瞳は鮮やかなブルーで、まるで晴れ渡る青空のように澄んでいた。彼の笑顔は温かく、誰もが自然と心を開いてしまうほどの魅力があった。
ハーランド第二王子が城内を歩くとき、よく使用人たちと冗談を交わしていた。親しみやすく、明るい性格の彼は、城内の誰からも愛される存在だった。
第一王子が頭脳明晰・眉目秀麗であると尊敬される一方で、第二王子は思いやりがあり誰に対しても気さくに接すると思われていたのだ。
「兄上、この令嬢を責めることはやめてください。彼女は被害者ですよ。そのアニヤという侍女が熱い紅茶を主のドレスにこぼしたのがいけない。とにかく、そのドレスは着替えが必要だから、僕が控え室まで連れて行ってあげよう。好きなドレスに着替えたら良い」
ハーランド第二王子はアナスターシアに、にっこりと微笑みかけた。アナスターシアはその優しさに思わずキュンとしてしまう。ドレスを着替えるまで、ハーランド第二王子は控え室の扉の前でアナスターシアを待っていた。
「さっきは兄上が酷いことを言ってごめんよ。兄上は行儀作法にうるさいし、頭が固いのさ。僕は君の侍女が悪いと思うよ。あんな場所で熱い紅茶をこぼすなんてあり得ない」
「そうでしょう? アニヤはいつもそんなことばかりするのよ。でも、サリナお母様は優しいからクビにしないわ。ローズリンお姉様も『アニヤが可哀想だから許してあげて』なんて言うのよ。だから、私はいつも怒ってばかりいるわ」
「そうなのかい? 君をとても気の毒に思うよ。無能な使用人を持つほどいらいらすることはないものね。ところで、君の名前と年齢は?」
「私はアナスターシア・カッシングで10歳よ。カッシング侯爵家の娘で、お母様はバイオレッタ・マッキンタイヤー公爵令嬢だったわ」
「あのマッキンタイヤー公爵の姪なのかい? 彼は英雄だよね。マッキンタイヤー将軍と言えば、この国で知らない者はいない。歴史の教科書にも出てくる人物だよ。凄いや。それに、マッキンタイヤー公爵領は豊かで作物が良く育つ。おまけにリネンや絹も特産物だし、海に面しているから交易も盛んだよね。確か、マッキンタイヤー公爵には子供がいないと聞いたことがある。もしかして、跡継ぎは君なのかい?」
「えぇ、そう言われているわ。伯父様は前線に立つことも多かったから、妻子をもっても悲しませるだけだと思っていたみたい。伯父様はお母様を溺愛していたし、私のことも愛していると言うけれど、私は苦手なの。だって、会えばお説教ばかりなのよ。でも、私が将来マッキンタイヤー女公爵になるのは決まっていることなのですって。カッシング侯爵家も継ぐことになると思うわ。ローズリンお姉様はサリナお母様の連れ子で、カッシング侯爵家の血筋ではないから」
「だったら、僕たちは少し似ているね。僕はハーランド第二王子でチェルシー王妃の子供さ。兄上とは母親が違う。 兄上はロザリン前王妃の子供だから、容姿も性格も僕とは似ていない。僕とアナスターシア嬢は年齢も一緒だし、身分だって釣り合いがとれる。これから仲良くできると嬉しいな」
「まぁ、私も嬉しいです! きっと、仲良くできるわ。だってハーランド第二王子殿下はとても優しいもの。サリナお母様やローズリンお姉様のように、私の味方なのでしょう?」
「もちろんさ。僕はずっとアナスターシア嬢の味方だよ」
この瞬間、アナスターシアにとってカラハン第一王子は意地悪な敵、ハーランド第二王子は優しい味方というイメージができあがった。アナスターシアには極めて感情的で短絡的な考え方が染みついていたのだ。
☆彡 ★彡
その夜のカッシング侯爵家のディナーの席で、アナスターシアはカッシング侯爵に胸をはって報告した。
「お父様。私、ハーランド第二王子殿下とたくさんおはなしができました。とても優しい方で『これから仲良くできたら嬉しい』とおっしゃったわ」
「それは良かったな。王族と仲良くしておけば損はないからな」
カッシング侯爵はそう言いながら食事を続けただけだったが、アナスターシアは気にもとめなかった。もともと、カッシング侯爵はアナスターシアに積極的に話しかけることはなかったからだ。
それ以来、アナスターシアはハーランド第二王子からサファイア城に招かれることが多くなった。ローズリンも頻繁に一緒に招かれ、アナスターシアは自分を甘やかしてくれるハーランド第二王子とローズリンに囲まれて、居心地の良さを感じていた。
(ハーランド第二王子もローズリンお姉様も大好きだわ)
アナスターシアは心からそう思ったのだった。
ちなみに王族居住区である広い敷地には四つの城が建っている。国王が住む城はダイヤモンド城、王妃の住む城はルビー城、カラハン第一王子はエメラルド城、ハーランド第二王子はサファイア城で暮らしていた。
お茶会にはアナスターシアとローズリンが招待され、それぞれの専属侍女も伴って王宮に行くことになった。もちろん、カッシング侯爵夫人のサリナも同行した。ルビー城の豪華なサロンでは、お茶会が優雅に進行していく。貴族の夫人たちが、美しいティーカップを手に優雅に談笑しているなか、その子供たちもまたその一角に座った。
アナスターシアは隣に座ったマグレガー伯爵令嬢と会話が弾んだおかげで、すっかり喉が渇いていた。しかし、アニヤはアナスターシアのティーカップが空になっても、なかなか新しい紅茶を淹れようとしなかった。
「アニヤ、紅茶を淹れてちょうだい」
アナスターシアは、わずかに眉をひそめながら命令した。アニヤの気が利かないことはいつものことだった。
「かしこまりました、アナスターシア様。」
アニヤは恭しく頭を下げ、ティーポットを手に取った。しかし、手元が狂ったのか、熱い紅茶がアナスターシアのドレスにこぼれた。アニヤはカッシング侯爵家でも似たようなことを何度もしでかしていた。
「きゃあ!」アナスターシアは叫び声をあげ、立ち上がる。紅茶がドレスに染み込み、アナスターシアの頬は怒りで真っ赤になっていた。この場に王妃や貴族の貴婦人たちがいることも忘れ、いつものように怒鳴り散らしてしまう。
「アニヤ、何をしているの! こんな大事な場で恥をかかせるなんて! アニヤは不注意すぎるのよ!」
「申し訳ありません、アナスターシア様。」
アニヤは慌てた様子で謝罪し、急いで拭き取りの布を取り出した。
「すぐに綺麗にいたしますので・・・・・・焼きごてだけは勘弁してくださいませ」
「もういいわ、触らないで!」
アナスターシアはアニヤの手を払いのけ、周囲の貴婦人たちが注目するなかで声を荒げた。
「こんな失態、許せない! カッシング侯爵家に戻ったらお仕置きよ」
「アナスターシア様、入れ墨や焼きごては勘弁してください」
なんども『焼きごて』の言葉を連発するアニヤに、少し離れた席にいたカラハン第一王子が首を傾げた。アナスターシアと同じテーブルについていた令嬢たちも、驚き呆れるような表情をしていた。マグレガー伯爵令嬢に至っては、二度と話しかけてはいけない令嬢認定のなかに、アナスターシアを迷うことなく入れたほどだった。
「たしかにその侍女の落ち度ではあるが、入れ墨や焼きごての罰は酷すぎる。君はいつもそんなことを侍女に言っているのかい? それに、このような場面では静かに席を立ち、王家の侍女に着替えを申し出れば済むことだ。控え室にはたくさんの衣装が用意してある。君は短気すぎると思う。残酷な罰を軽々しく言葉にしてはいけないよ」
もっともな忠告をしたカラハン第一王子は、アナスターシアよりも少し年上だった。彼の瞳は深い知性と冷静さをたたえ、エメラルドのように輝いており、すべてを見通すかのような鋭さがあった。彼の一挙手一投足は計算され尽くされ、子供ながらも王族としての威厳を完璧に体現しているように見えた。
そこにハーランド第二王子が口をはさむ。ハーランド第二王子はカラハン第一王子と正反対のタイプで、親しみやすさと明るさを持ち合わせた存在だった。彼の瞳は鮮やかなブルーで、まるで晴れ渡る青空のように澄んでいた。彼の笑顔は温かく、誰もが自然と心を開いてしまうほどの魅力があった。
ハーランド第二王子が城内を歩くとき、よく使用人たちと冗談を交わしていた。親しみやすく、明るい性格の彼は、城内の誰からも愛される存在だった。
第一王子が頭脳明晰・眉目秀麗であると尊敬される一方で、第二王子は思いやりがあり誰に対しても気さくに接すると思われていたのだ。
「兄上、この令嬢を責めることはやめてください。彼女は被害者ですよ。そのアニヤという侍女が熱い紅茶を主のドレスにこぼしたのがいけない。とにかく、そのドレスは着替えが必要だから、僕が控え室まで連れて行ってあげよう。好きなドレスに着替えたら良い」
ハーランド第二王子はアナスターシアに、にっこりと微笑みかけた。アナスターシアはその優しさに思わずキュンとしてしまう。ドレスを着替えるまで、ハーランド第二王子は控え室の扉の前でアナスターシアを待っていた。
「さっきは兄上が酷いことを言ってごめんよ。兄上は行儀作法にうるさいし、頭が固いのさ。僕は君の侍女が悪いと思うよ。あんな場所で熱い紅茶をこぼすなんてあり得ない」
「そうでしょう? アニヤはいつもそんなことばかりするのよ。でも、サリナお母様は優しいからクビにしないわ。ローズリンお姉様も『アニヤが可哀想だから許してあげて』なんて言うのよ。だから、私はいつも怒ってばかりいるわ」
「そうなのかい? 君をとても気の毒に思うよ。無能な使用人を持つほどいらいらすることはないものね。ところで、君の名前と年齢は?」
「私はアナスターシア・カッシングで10歳よ。カッシング侯爵家の娘で、お母様はバイオレッタ・マッキンタイヤー公爵令嬢だったわ」
「あのマッキンタイヤー公爵の姪なのかい? 彼は英雄だよね。マッキンタイヤー将軍と言えば、この国で知らない者はいない。歴史の教科書にも出てくる人物だよ。凄いや。それに、マッキンタイヤー公爵領は豊かで作物が良く育つ。おまけにリネンや絹も特産物だし、海に面しているから交易も盛んだよね。確か、マッキンタイヤー公爵には子供がいないと聞いたことがある。もしかして、跡継ぎは君なのかい?」
「えぇ、そう言われているわ。伯父様は前線に立つことも多かったから、妻子をもっても悲しませるだけだと思っていたみたい。伯父様はお母様を溺愛していたし、私のことも愛していると言うけれど、私は苦手なの。だって、会えばお説教ばかりなのよ。でも、私が将来マッキンタイヤー女公爵になるのは決まっていることなのですって。カッシング侯爵家も継ぐことになると思うわ。ローズリンお姉様はサリナお母様の連れ子で、カッシング侯爵家の血筋ではないから」
「だったら、僕たちは少し似ているね。僕はハーランド第二王子でチェルシー王妃の子供さ。兄上とは母親が違う。 兄上はロザリン前王妃の子供だから、容姿も性格も僕とは似ていない。僕とアナスターシア嬢は年齢も一緒だし、身分だって釣り合いがとれる。これから仲良くできると嬉しいな」
「まぁ、私も嬉しいです! きっと、仲良くできるわ。だってハーランド第二王子殿下はとても優しいもの。サリナお母様やローズリンお姉様のように、私の味方なのでしょう?」
「もちろんさ。僕はずっとアナスターシア嬢の味方だよ」
この瞬間、アナスターシアにとってカラハン第一王子は意地悪な敵、ハーランド第二王子は優しい味方というイメージができあがった。アナスターシアには極めて感情的で短絡的な考え方が染みついていたのだ。
☆彡 ★彡
その夜のカッシング侯爵家のディナーの席で、アナスターシアはカッシング侯爵に胸をはって報告した。
「お父様。私、ハーランド第二王子殿下とたくさんおはなしができました。とても優しい方で『これから仲良くできたら嬉しい』とおっしゃったわ」
「それは良かったな。王族と仲良くしておけば損はないからな」
カッシング侯爵はそう言いながら食事を続けただけだったが、アナスターシアは気にもとめなかった。もともと、カッシング侯爵はアナスターシアに積極的に話しかけることはなかったからだ。
それ以来、アナスターシアはハーランド第二王子からサファイア城に招かれることが多くなった。ローズリンも頻繁に一緒に招かれ、アナスターシアは自分を甘やかしてくれるハーランド第二王子とローズリンに囲まれて、居心地の良さを感じていた。
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