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転生ヒロインは綺麗な男が嫌い
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「お嬢様ぁー、レオン様がいらっしゃいましたよぉー」
「あ、うん。今、行くねぇー」
私は、階下へと足取りも重く降りていく。
「やぁ、マリアンヌ。今日も綺麗だね!」
ーーはいはい、ありがとう。無駄に美形なレオン様。
心の中でつぶやくけれど、顔だけはにっこり笑い合う。
この銀髪にアメジストの瞳って、ほんとに綺麗だと思う。けれど、私は『綺麗な男は嫌い病』なのだ。
そう、私は転生者。日本という国からこの異世界にやってきて、前世の記憶がある。前世での私は、男に欺されて貢がされて痛い思いをしたことが、一回や二回ではなかった。
これは、ひとえに私の『面食い病』からきた弊害にほかならない。
「そうよ。顔のいい男は女の敵なのよっ!!」
私のつぶやきをレオン様は、しっかり拾いあげたようだ。
「え?どういうこと?高位貴族ってみんな顔がいいでしょ?」
にこやかな微笑を浮かべるそのお顔偏差値は、軽く80いくわよね?偏差値80と言えば、一万人に13人しかいない超エリートだからね?
☆
「お母様、私、騎士とお付き合いしてみたいです!すっごい不細工な男性と!」
「え?なんで?どうして?」
「だって、綺麗な男性って、多分正確が歪んでいるから」
ーーーあとから、考えたら歪んでいるのは自分の性格だった。
不細工な騎士とつきあった私は、その男に殴られ全治2週間のケガを負った。原因は本当に些細なことだったように思う。
不細工が優しいとは限らない‥‥グスン‥‥
ならば、今度はフツ面と‥‥
平均値あたりな顔の男性で身分も男爵ぐらいが適当だと思うわ。うん、私の家は侯爵だから、下の身分なら私を大事にするはずよね?
☆
「マリアンヌ。君って、なんて可愛げがないんだ?そうか、自分のほうが爵位が上だと思って私を下に見ているのだな?女のくせに生意気だ!顔も綺麗だからって、うぬぼれるなよ!」
この平均値顔の男爵令息は、こんな性格だった。事あるごとに、この情けないセリフを吐くのよ。
これじゃぁねぇーーーだめよ、だめ、だめ!!
私はその男爵令息の劣等感の塊の発言から逃れるように、小走りにその場を去った。
私は屋敷に戻って、モフモフな愛猫のミーシャを撫でながらため息をついた。
やっぱり、高位貴族なのかな?レオン様は王家の血筋をひく公爵家の嫡男だ。顔の偏差値も家柄も最高すぎて、前世の記憶がある私には眩しい。前世の私は焼き鳥屋の女将だった。鳥をさばいて、串にさし炭火でこんがり焼くのよ。
ーーじゅるっ、よだれが出てきちゃう。
私の心のなかは、焼き鳥でいっぱいなのに、鏡を覗くと金髪碧眼のこれまた無駄に麗しいお顔が恋にわずらったような表情をしているわけよ。違和感が半端ない。
☆
空を薔薇色に染める夕暮れを、ぼんやりと眺めているとレオン様がやって来て私の肩を抱いた。
「もう、いい加減わかったでしょう?君には私しかいないって」
私はこの夕暮れの景色に、ビールと焼き鳥を思い浮かべながら頷いた。
「あぁ、もう、なんて君は可愛いんだろう。そんなに私を恋しくてたまらない表情を浮かべてくれるなんて!気にしなくていいからね。他の男と交際してみたことは許してあげる」
私は、レオン様の腕の中で、”ここで生きていくのも悪くないな”と思い始めていた。
☆
結婚してみると、レオン様は顔偏差値と比例するかのように、性格も高偏差値だった。穏やかで優しくて思いやりがある。おまけに、頭脳明晰、質実剛健。文句なしの最高の旦那様に私は身も心もメロメロになった。
『綺麗な男は嫌い病』は、すっかりなりを潜めた。
けれど、ここは『美形揃いの真実の愛は貴女のものよ♡』のゲームの世界。ゲームの世界で、また事故死して日本って国に転生したら『綺麗な男は嫌い病』を復活させたほうがいいかもね?
でも、今はこの幸せに浸っていたい。
完
「あ、うん。今、行くねぇー」
私は、階下へと足取りも重く降りていく。
「やぁ、マリアンヌ。今日も綺麗だね!」
ーーはいはい、ありがとう。無駄に美形なレオン様。
心の中でつぶやくけれど、顔だけはにっこり笑い合う。
この銀髪にアメジストの瞳って、ほんとに綺麗だと思う。けれど、私は『綺麗な男は嫌い病』なのだ。
そう、私は転生者。日本という国からこの異世界にやってきて、前世の記憶がある。前世での私は、男に欺されて貢がされて痛い思いをしたことが、一回や二回ではなかった。
これは、ひとえに私の『面食い病』からきた弊害にほかならない。
「そうよ。顔のいい男は女の敵なのよっ!!」
私のつぶやきをレオン様は、しっかり拾いあげたようだ。
「え?どういうこと?高位貴族ってみんな顔がいいでしょ?」
にこやかな微笑を浮かべるそのお顔偏差値は、軽く80いくわよね?偏差値80と言えば、一万人に13人しかいない超エリートだからね?
☆
「お母様、私、騎士とお付き合いしてみたいです!すっごい不細工な男性と!」
「え?なんで?どうして?」
「だって、綺麗な男性って、多分正確が歪んでいるから」
ーーーあとから、考えたら歪んでいるのは自分の性格だった。
不細工な騎士とつきあった私は、その男に殴られ全治2週間のケガを負った。原因は本当に些細なことだったように思う。
不細工が優しいとは限らない‥‥グスン‥‥
ならば、今度はフツ面と‥‥
平均値あたりな顔の男性で身分も男爵ぐらいが適当だと思うわ。うん、私の家は侯爵だから、下の身分なら私を大事にするはずよね?
☆
「マリアンヌ。君って、なんて可愛げがないんだ?そうか、自分のほうが爵位が上だと思って私を下に見ているのだな?女のくせに生意気だ!顔も綺麗だからって、うぬぼれるなよ!」
この平均値顔の男爵令息は、こんな性格だった。事あるごとに、この情けないセリフを吐くのよ。
これじゃぁねぇーーーだめよ、だめ、だめ!!
私はその男爵令息の劣等感の塊の発言から逃れるように、小走りにその場を去った。
私は屋敷に戻って、モフモフな愛猫のミーシャを撫でながらため息をついた。
やっぱり、高位貴族なのかな?レオン様は王家の血筋をひく公爵家の嫡男だ。顔の偏差値も家柄も最高すぎて、前世の記憶がある私には眩しい。前世の私は焼き鳥屋の女将だった。鳥をさばいて、串にさし炭火でこんがり焼くのよ。
ーーじゅるっ、よだれが出てきちゃう。
私の心のなかは、焼き鳥でいっぱいなのに、鏡を覗くと金髪碧眼のこれまた無駄に麗しいお顔が恋にわずらったような表情をしているわけよ。違和感が半端ない。
☆
空を薔薇色に染める夕暮れを、ぼんやりと眺めているとレオン様がやって来て私の肩を抱いた。
「もう、いい加減わかったでしょう?君には私しかいないって」
私はこの夕暮れの景色に、ビールと焼き鳥を思い浮かべながら頷いた。
「あぁ、もう、なんて君は可愛いんだろう。そんなに私を恋しくてたまらない表情を浮かべてくれるなんて!気にしなくていいからね。他の男と交際してみたことは許してあげる」
私は、レオン様の腕の中で、”ここで生きていくのも悪くないな”と思い始めていた。
☆
結婚してみると、レオン様は顔偏差値と比例するかのように、性格も高偏差値だった。穏やかで優しくて思いやりがある。おまけに、頭脳明晰、質実剛健。文句なしの最高の旦那様に私は身も心もメロメロになった。
『綺麗な男は嫌い病』は、すっかりなりを潜めた。
けれど、ここは『美形揃いの真実の愛は貴女のものよ♡』のゲームの世界。ゲームの世界で、また事故死して日本って国に転生したら『綺麗な男は嫌い病』を復活させたほうがいいかもね?
でも、今はこの幸せに浸っていたい。
完
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退会済ユーザのコメントです
maro 様❤️
おぉ〜来てくれたのでしゅね?
嬉しい♩.◦(pq*´꒳`*)♥♥*。
あぁーなるほど、その次の展開ですね?
そっか、そーやって続ければ良かったですね
ありがとうございまぁす😊🌹
青空様💖
面白くて読みやすかったです😆🎵🎵
イケメンで中身も良ければ最高ですね✨
鍋様💝
来ていただいて、ありがとうございまぁす😊
嬉しいぃ〜( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )੭⁾⁾
何も考えないで書いた作品です
お恥ずかしいぃ〜(⁄ ⁄•⁄ω⁄•⁄ ⁄)⁄
ちょうど、焼き鳥食べてたの……デス