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快楽園とレディ・マドンナ
しおりを挟むけばけばしい娼館の名前は「快楽園」
「あら、まぁ、こんな極上な子がここに?わけありかい?ここは落ちぶれた娼婦が集まる大衆向けの安娼館だよ?」快楽園の女将が戸惑ったように笑っていた。
「ここに、行くようにお父様に言われたので‥‥」
「お父様?」
「この国の皇帝です‥‥」
「ちょいと、あたしゃぁ、このお嬢ちゃんと出かけてくるよ。」
娼館じゅうに響き渡る声で叫ぶと快楽園の女将は私の手をつかんだ。
☆
上品な貴族の館にしか見えない建物に、目の覚めるような美女がいて、なにやら書き物をしていた。
「あら、快楽園の女将じゃない?なぁに?いきなり来るなんて」
「ヘレナ!この子、見てよ!皇女様よ?」
「‥‥」
ヘレナと呼ばれた女性は高級娼館のマダムだった。
私の話を黙ってきいていたマダムはにっこり笑ったの。
「いいこと?あなたは娼婦に墜ちることはないわ。私に任せなさい」
☆
「いいですか?お辞儀は角度を気をつけて!歩くときは少し先を見つめて背筋はピンと‥‥」
私は高級娼婦たちに講義をしていた。
高級娼館の「レディ・マドンナ」に足を運ぶ男性は裕福な貴族ばかりだった。
特にそのなかでも、超高級娼婦といわれる3人の女性は王族や皇族しか相手にしない女性だった。
その女性たちに、皇族のしきたりや、マナーや言葉の使い方を教えるのが私の仕事になった。
「本物の皇女様が先生なら間違いないわ」
ヘレナは満足げに微笑んだ。
「ここにずっといていいのよ?あなたの愛するお兄様皇帝が迎えに来るわけがないわ。娼婦に墜ちた女を迎えに来る男なんてこの世にはいないのよ」
ヘレナは悲しげな顔でそう言った。
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