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下女のふりをしていた女を見つけたスズラン
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豪奢な輿に揺られている私の服は金糸銀糸で花の刺繍が施された贅沢なものだった。後ろには私の衣装や持ち物を運ぶ荷車がずらりと連なっている。大将軍家の娘ともなれば、宮廷入りするのにはこれぐらいの華やかさが必要だと、お父様はおっしゃっていたけれど、以前の私なら恐れ多くて辞退していただろう。今は違う。ありがたく、たくさんの衣装やら宝石は頂いたし、選りすぐりの侍女達も頂いた。
「さぁ、スズラン皇妃様。どうぞ、お降り遊ばして」
シンイー侍女長が私の手を取って輿から下ろしてくれた。一歩、歩み、前を向く。そこには、すべての女官達が整然と並び、頭を下げていた。
「まぁ、なんてお綺麗なのかしら!天女のよう!」
「皇后様に似ていらっしゃるが、さらに瑞々しい美しさと清廉な気高さが備わっていらっしゃる」
「さすが、チェン大将軍の姫君ですわね」
褒め称える言葉しか聞こえないが、なぜか背中はぞわっとしていた。以前の女官達は私とは口も聞いてくれず、眼も合わせてはくれなかったのに、今はキラキラした眼差しで私を見てくる。
もう一人の皇妃の牡丹様の父上は大将だったように思う。が、私のお父様はそれより2階級上の大将軍で軍部で言えば最高トップなのだ。その愛娘の後宮入りに、女官達は神妙な顔つきで控えている。
そこに、皇帝ご本人が宮廷の方角から後宮に足早にいらっしゃり、私の手を取ってご自分の頬に持っていく。
「おぉ、待ちわびたぞ!どんなにこの日を待っていたか!!さぁ、こちらに来て、一緒にお茶を飲もう。侍女達も続け」
いそいそと、皇帝は後宮にある一番贅沢で大きな部屋に私を連れていく。そこは、側室の身分で一番高い者が使う部屋に違いない。でも‥‥後宮の側室の部屋にしては、とてもかわいく落ち着いた気分になれた。
「ふふっ、気がついた?」
「はい、壁紙が‥‥かわいい‥‥」
「そう、スズランの絵を描かせた。あの衝立にも、絵師にスズランを書かせた。私の大事なスズランの部屋だから。気に入った?」
「はい!とっても、かわいいです。皇帝のお側に来れたことが嬉しくてたまりません」
チェン家の私のお部屋にどうやら似せてくれたらしく、淡いピンクと淡い黄色が基調の優しい部屋だ。私の部屋は居間が二つ、寝室が二つ、大きな衣装部屋が二つ、それと侍女達が寝泊まりする続きの間が10部屋ほど続いていた。
「狭くてすまない。子供が産まれたらスズランだけのために宮殿をもう一つ建てよう」
皇帝は、私の手を撫でながら顔に喜色を浮かべる。私も、そのような嬉しげな皇帝のお顔を見て微笑むのだった。
☆
チェン家から持ってきたくさんの衣装も色々な物も、すべて私の部屋のあるべき場所に、侍女達がテキパキと収めていく。侍女達の無駄のない動きが頼もしかった。私は、できるだけ侍女たちには話しかけるようにして、穏やかな時間が流れていった。
側室の位を賜る儀式は、翌日に行われた。(私はすでに皇妃様と呼ばれてはいるが、正式にはこの儀式で皇妃様となる。)
私はチェン家の家紋の入った礼服をまとう。見知った顔の側室たちを素知らぬ顔で一瞥すると、背筋を伸ばし堂々と儀式の間に進んでいく。
「スズランを皇妃とする。それと同時に側室筆頭の地位も与える。私を支え、助け、後宮の主として精進するように」
「かしこまりました」
私は臣下の礼で皇帝のお言葉に答えた。私が皇帝の横に立ち歓声に応えているともう一人の皇妃の牡丹様から、黒々としたじめっとした視線を感じた。
そして、その牡丹の傍らには忘れもしないあの女がいた。あの日、私を庭園に誘い出したあの下女だ。今は、牡丹付きの侍女として後ろに控えていた。
ーーあぁ、そうだったの‥‥あなたは、はじめから下女ではなかったのね‥‥嬉しいわ、早速、あなたを見つけられて‥‥
私は、その下女を目の端で追いながら口角をゆっくりと上げたのだった。
「さぁ、スズラン皇妃様。どうぞ、お降り遊ばして」
シンイー侍女長が私の手を取って輿から下ろしてくれた。一歩、歩み、前を向く。そこには、すべての女官達が整然と並び、頭を下げていた。
「まぁ、なんてお綺麗なのかしら!天女のよう!」
「皇后様に似ていらっしゃるが、さらに瑞々しい美しさと清廉な気高さが備わっていらっしゃる」
「さすが、チェン大将軍の姫君ですわね」
褒め称える言葉しか聞こえないが、なぜか背中はぞわっとしていた。以前の女官達は私とは口も聞いてくれず、眼も合わせてはくれなかったのに、今はキラキラした眼差しで私を見てくる。
もう一人の皇妃の牡丹様の父上は大将だったように思う。が、私のお父様はそれより2階級上の大将軍で軍部で言えば最高トップなのだ。その愛娘の後宮入りに、女官達は神妙な顔つきで控えている。
そこに、皇帝ご本人が宮廷の方角から後宮に足早にいらっしゃり、私の手を取ってご自分の頬に持っていく。
「おぉ、待ちわびたぞ!どんなにこの日を待っていたか!!さぁ、こちらに来て、一緒にお茶を飲もう。侍女達も続け」
いそいそと、皇帝は後宮にある一番贅沢で大きな部屋に私を連れていく。そこは、側室の身分で一番高い者が使う部屋に違いない。でも‥‥後宮の側室の部屋にしては、とてもかわいく落ち着いた気分になれた。
「ふふっ、気がついた?」
「はい、壁紙が‥‥かわいい‥‥」
「そう、スズランの絵を描かせた。あの衝立にも、絵師にスズランを書かせた。私の大事なスズランの部屋だから。気に入った?」
「はい!とっても、かわいいです。皇帝のお側に来れたことが嬉しくてたまりません」
チェン家の私のお部屋にどうやら似せてくれたらしく、淡いピンクと淡い黄色が基調の優しい部屋だ。私の部屋は居間が二つ、寝室が二つ、大きな衣装部屋が二つ、それと侍女達が寝泊まりする続きの間が10部屋ほど続いていた。
「狭くてすまない。子供が産まれたらスズランだけのために宮殿をもう一つ建てよう」
皇帝は、私の手を撫でながら顔に喜色を浮かべる。私も、そのような嬉しげな皇帝のお顔を見て微笑むのだった。
☆
チェン家から持ってきたくさんの衣装も色々な物も、すべて私の部屋のあるべき場所に、侍女達がテキパキと収めていく。侍女達の無駄のない動きが頼もしかった。私は、できるだけ侍女たちには話しかけるようにして、穏やかな時間が流れていった。
側室の位を賜る儀式は、翌日に行われた。(私はすでに皇妃様と呼ばれてはいるが、正式にはこの儀式で皇妃様となる。)
私はチェン家の家紋の入った礼服をまとう。見知った顔の側室たちを素知らぬ顔で一瞥すると、背筋を伸ばし堂々と儀式の間に進んでいく。
「スズランを皇妃とする。それと同時に側室筆頭の地位も与える。私を支え、助け、後宮の主として精進するように」
「かしこまりました」
私は臣下の礼で皇帝のお言葉に答えた。私が皇帝の横に立ち歓声に応えているともう一人の皇妃の牡丹様から、黒々としたじめっとした視線を感じた。
そして、その牡丹の傍らには忘れもしないあの女がいた。あの日、私を庭園に誘い出したあの下女だ。今は、牡丹付きの侍女として後ろに控えていた。
ーーあぁ、そうだったの‥‥あなたは、はじめから下女ではなかったのね‥‥嬉しいわ、早速、あなたを見つけられて‥‥
私は、その下女を目の端で追いながら口角をゆっくりと上げたのだった。
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