(完)妹が全てを奪う時、私は声を失った。

青空一夏

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10 断罪のはじまりー2(エイヴリー視点)ー(ちょっと安心したエイヴリーちゃん)

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 私は信じられない思いでその男性の手を取りました。ずっと恋い焦がれていた方のお顔は忘れるはずはありません。もちろん、私はカーク様の婚約者ではありましたが、この辛い時期に思い出すのはクラーク様しかおりませんでした。

 私の手をそっと取ったクラーク様は私に小さな声でささやきました。

「私が来たからには、エイヴリーは安心していい」

 この声をどれだけ私は聞きたかったことでしょう。この顔をどれだけ夢にみたことか・・・・・・会わないでいる間にすっかりおとなびた様子になっているクラーク様の手をギュッと握りしめて、私は後について歩きます。

「さぁ、馬車に乗って王宮に行こう」

「・・・・・・」

「どうした? エイヴリー?」

 クラーク様は、その声にうなづくだけで、ひと言も発しない私に首を傾げました。

「エイヴリー様は絵画を盗まれたショックで声をなくしましたっ! ったく、遅いんですよ」

 ラベンダーさんが舌打ちしながらクラーク様を責めています。私はクラーク様の前に立ってラベンダーさんに首を振ります。

 こうして会えただけでも嬉しくて、助けに来てくれただけでも幸せに感じました。私にとっては決して遅くはありません。私はクラーク様の手をずっと握りしめておりました。これが夢でどこかに行ってしまったら困ります。

 クラーク様は、私の髪をそっと撫でると抱きかかえて馬車に乗ります。その間も、私は決して手は離しません。これを離したらこの方は消えてしまう・・・・・・

「大丈夫だよ・・・・・・ずっとエイヴリーの側にいるから」

 そう何度も言われましたが、それでも不安な私はクラーク様にしがみついています。我ながら情けないとは思いましたが、今まで悲しかったぶんこのぬくもりを手放したくないのです。

「あら、あら。まぁ、いいではありませんか。どうせお二人は結婚なさるのですし、このぶんだと早速私は赤ちゃんのお世話に明け暮れそうですねぇ。うん、子供は大好きですからね。何人でも任せてください」

 ラベンダーさんの言葉に全てがわかりました。これは、クラーク様の用意してくださった復讐劇なのだと。

「落ち着いたら声も絶対戻ってくるから心配しなくていい。大丈夫だ。私がついているから」

 優しく囁かれて抱きかかえていただくと、切り傷だらけの心がどんどん修復されていくのがわかりました。すこしづつ、温かい感情が戻ってきて大きな傷も小さな傷も塞がれていく感覚を、私は大好きな男性の膝のうえで味わっていました。




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字数が少ないので、もう1話、今日中に投稿します。

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