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9 断罪のはじまりー1 (オクタビア視点)
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私の最初の感情は衝撃と戸惑いだ。その老人は腰が曲がり大きな鼻にはイボがあり、手には醜い火傷の傷があった。おまけに足が不自由なようで杖をつき、やっと歩いているのだが、服は光沢がありおそらくは最高級の生地と仕立てだ。
従者と侍女と護衛を多数引き連れた様子はどこからどう見ても大金持ちで、平民には見えない。嘘だろう? こんな大金持ちがエイヴリーを嫁にもらいに来たのか?
「貴方は、本当に平民ですか? なんというか・・・・・・想像していたのとまるで違いますね」
「初めまして。儂はコクオと申す、しがない平民の商人ですじゃ。宝石商をしております。それで、花嫁はどちらのお嬢さんかな?」
「あぁ、これです。ヴァネッサと言いまして、17歳になったばかりですが、なかなか美しく育ちました」
私はエイヴリーをその老人の前に押しやった。こんなことなら、もっとエイヴリーを着飾らせれば良かった。金髪に綺麗なブルーの瞳のエイヴリーは忌々しいほどに美しい顔立ちをしていた。あのアーソリンとそっくりな顔は見たくない。
アーソリンは才能豊かで天才的な絵画のセンスを持ち、領地経営や女伯爵の仕事を完璧にしていた。前当主の生前から右腕として働き、私の世話は二の次だ。私はオマリ伯爵家の婿養子とだけ呼ばれて、皆が『アーソリンの夫』と表現する。まるで、添え物でしかない自分の存在。私だって伯爵としての仕事ぐらいできるのに!
私は次第にアーソリンを憎み、その娘のエイヴリーも嫌いになった。私は不当に低く評価された『意図的に迫害された天才』だ。オマリ伯爵家の全部が私は蔑み、隅っこに追いやりやがる! おかしいだろう? 私のような天才を種馬扱いしやがって!
とにかく、このエイヴリーを売ってやろう。うんと辛い目にあって苦しめば良い。アーソリンと前オマリ伯爵があの世で悔しがるくらい不幸になれ。
「ほぉ、素晴らしく若く美しいお嬢さんだ。儂のような老人に嫁がせて可哀想とは思わないのか?」
「いいえ、全く思いません。このヴァネッサは我が儘で嘘つきで性悪です。なので、厳しく躾ける必要があるでしょう。例えば奴隷のように足かせなど付けたらどうでしょう?」
コクオは私に同意するように笑いかけた。この老人はやはり若い美女を買ってはそんなことを繰り返している変態じじぃだと確信した。
「契約書を用意しておりますからサインしてください。細かな記載は、これから説明しましょう。どうぞおくつろぎになってください」
私は老人にソファに座っていただくと、いそいそと契約書を持ってくる。
「さぁ、これです。まずは、こことそこにサインを」
「サインの前に、ここにいる従者達にも聞こえるように大声で口頭で説明してくれまいか? 老人ゆえ、こまかな字は読みづらい」
全く、じじぃすぎて字も読めないし耳も遠いとは! だが、腐るほど金を持っているなら歳がいくつだろうとかまわない。
「このヴァネッサは好きにしてかまいません。命の保証もいらない。なんでも好き勝手してください。これにサインすれば貴方のオモチャになりますよ? ただ、それなりの金はもらいたいです。援助といっていいのかな。コクオ様はわずかな金を私達に援助してくださるだけでヴァネッサの所有権が手に入る」
「所有権? ・・・・・・この娘は奴隷なのか? 私に奴隷を売るというのか? 私は花嫁を迎えに来たのだぞ?」
「あっははは。そんなにうわべを取り繕わなくても大丈夫ですって。どうせ、奴隷扱いして最後は娼館に売り飛ばすか殺すのでしょう。あの結婚斡旋所は闇でそんなことばかりしている老人が登録しているので有名ですよ」
「それを知ってて自分の娘を登録したのか?」
「これ、私の娘と思ったことは一度もありませんよ」
「なるほどな・・・・・・承知した。この娘を奴隷として買ってほしい、と。そういう意味で間違いないか?」
「えぇ、その通りです。貴方ほどの金持ちなら、そうだな、5,000万バギーでどうです?」
「5,000万だと? 」
「あ、それなら4,000万でもいいです」
「・・・・・・」
「あぁ、では3,000万で」
「奴隷は普通、100万もしないぞ」
「これは普通の奴隷ではありません。実は、このオマリ伯爵家の正当な跡継ぎです。純粋培養の伯爵家のご令嬢を奴隷にできるのですよ? たかが、100万で売るわけがないでしょう?」
「ふーーん、そういうことか・・・・・・ここの家督を継ぐ正当な後継者はこの娘なのだな?」
「はい、このヴァネッサです。本名はエイヴリーですがねぇ。好きな名前で呼んでやってください。名前なんかなくても構わないし」
「名前もなくていいとはどういう意味かな?」
「売られた女は長く生きていることはないので、名前すらつけないことがあると結婚斡旋所の男が言っていましたから」
それを聞いてコクオは深くうなづき、愉快な笑い声をあげた。
「なぜ、正当な跡継ぎを売るのですか? 貴方にそんな権利があるのですか?」
ベールをかけた侍女の言葉に、私は思いっきり強く舌打ちした。
「私の娘のエイヴリー(実際はヴァネッサ)が女伯爵になるのに邪魔だからですよ! いいですか? これは人間の名前を交換しただけだ。どちらも私の娘だから、女伯爵になれる! さて、そんな話はどうでもいいでしょう? 買うのですか? 買わないのですか?」
この一行は変わっている。女を買いに来るのにまさか身内の女性は連れてくるはずはないが・・・・・・侍女の服装をしたベールをかけた女性達の態度が侍女にしては尊大な気がした。
あぁ、きっとこの老人の愛人達だな。新しいオモチャの奴隷に嫉妬して見にきたのか。ここまで大金持ちだとなにがあっても不思議じゃない・・・・・・
「クククッ。一億バギーで買ってやろう。もっといろいろ楽しい話が聞きたい。儂は腹黒い男は大好きだ。」
上機嫌のコクオが、侍女達に高価な酒を次々と持って来させた。さらに私の前に一億バギーの大金が積み上げられていく。
「おぉーー素晴らしい! 話がわかる方ですねぇ。今日は酒盛りといきましょうか? 楽しい話ならたくさんしてあげましょう! 例えば毒の話とか? あっははは」
「是非とも聞きたいな。しかし、その前に儂がもらい受ける娘をこちらに渡してくだされ。おい、この娘を儂の屋敷にお連れしなさい」
コクオの言葉にどこかで見た覚えのある目の覚めるような美丈夫がさっと本物のエイヴリーを連れて行った。本物のエイヴリーは黙ってその若者の手を取り去っていった。
さよならだ。本物のエイヴリー。いつまで生かされるかは知らないがな。
☆彡★彡☆彡
料理が次々と運ばれて、それもこの老人が用意してきたものだと驚かされた。嘘のような気前の良さだ! くっそ! もっと金をふっかければ良かった。
大いに飲んで食べて、私の妻も偽物のエイヴリーも上機嫌だった。私はこの老人を喜ばせてもっと金を出させようと思った。なにがいいかな? 腹黒い男は大好き、と言うのなら私のあの犯罪の話はどうかな? きっと喜んでくれそうだ。
※1バギー=1円
従者と侍女と護衛を多数引き連れた様子はどこからどう見ても大金持ちで、平民には見えない。嘘だろう? こんな大金持ちがエイヴリーを嫁にもらいに来たのか?
「貴方は、本当に平民ですか? なんというか・・・・・・想像していたのとまるで違いますね」
「初めまして。儂はコクオと申す、しがない平民の商人ですじゃ。宝石商をしております。それで、花嫁はどちらのお嬢さんかな?」
「あぁ、これです。ヴァネッサと言いまして、17歳になったばかりですが、なかなか美しく育ちました」
私はエイヴリーをその老人の前に押しやった。こんなことなら、もっとエイヴリーを着飾らせれば良かった。金髪に綺麗なブルーの瞳のエイヴリーは忌々しいほどに美しい顔立ちをしていた。あのアーソリンとそっくりな顔は見たくない。
アーソリンは才能豊かで天才的な絵画のセンスを持ち、領地経営や女伯爵の仕事を完璧にしていた。前当主の生前から右腕として働き、私の世話は二の次だ。私はオマリ伯爵家の婿養子とだけ呼ばれて、皆が『アーソリンの夫』と表現する。まるで、添え物でしかない自分の存在。私だって伯爵としての仕事ぐらいできるのに!
私は次第にアーソリンを憎み、その娘のエイヴリーも嫌いになった。私は不当に低く評価された『意図的に迫害された天才』だ。オマリ伯爵家の全部が私は蔑み、隅っこに追いやりやがる! おかしいだろう? 私のような天才を種馬扱いしやがって!
とにかく、このエイヴリーを売ってやろう。うんと辛い目にあって苦しめば良い。アーソリンと前オマリ伯爵があの世で悔しがるくらい不幸になれ。
「ほぉ、素晴らしく若く美しいお嬢さんだ。儂のような老人に嫁がせて可哀想とは思わないのか?」
「いいえ、全く思いません。このヴァネッサは我が儘で嘘つきで性悪です。なので、厳しく躾ける必要があるでしょう。例えば奴隷のように足かせなど付けたらどうでしょう?」
コクオは私に同意するように笑いかけた。この老人はやはり若い美女を買ってはそんなことを繰り返している変態じじぃだと確信した。
「契約書を用意しておりますからサインしてください。細かな記載は、これから説明しましょう。どうぞおくつろぎになってください」
私は老人にソファに座っていただくと、いそいそと契約書を持ってくる。
「さぁ、これです。まずは、こことそこにサインを」
「サインの前に、ここにいる従者達にも聞こえるように大声で口頭で説明してくれまいか? 老人ゆえ、こまかな字は読みづらい」
全く、じじぃすぎて字も読めないし耳も遠いとは! だが、腐るほど金を持っているなら歳がいくつだろうとかまわない。
「このヴァネッサは好きにしてかまいません。命の保証もいらない。なんでも好き勝手してください。これにサインすれば貴方のオモチャになりますよ? ただ、それなりの金はもらいたいです。援助といっていいのかな。コクオ様はわずかな金を私達に援助してくださるだけでヴァネッサの所有権が手に入る」
「所有権? ・・・・・・この娘は奴隷なのか? 私に奴隷を売るというのか? 私は花嫁を迎えに来たのだぞ?」
「あっははは。そんなにうわべを取り繕わなくても大丈夫ですって。どうせ、奴隷扱いして最後は娼館に売り飛ばすか殺すのでしょう。あの結婚斡旋所は闇でそんなことばかりしている老人が登録しているので有名ですよ」
「それを知ってて自分の娘を登録したのか?」
「これ、私の娘と思ったことは一度もありませんよ」
「なるほどな・・・・・・承知した。この娘を奴隷として買ってほしい、と。そういう意味で間違いないか?」
「えぇ、その通りです。貴方ほどの金持ちなら、そうだな、5,000万バギーでどうです?」
「5,000万だと? 」
「あ、それなら4,000万でもいいです」
「・・・・・・」
「あぁ、では3,000万で」
「奴隷は普通、100万もしないぞ」
「これは普通の奴隷ではありません。実は、このオマリ伯爵家の正当な跡継ぎです。純粋培養の伯爵家のご令嬢を奴隷にできるのですよ? たかが、100万で売るわけがないでしょう?」
「ふーーん、そういうことか・・・・・・ここの家督を継ぐ正当な後継者はこの娘なのだな?」
「はい、このヴァネッサです。本名はエイヴリーですがねぇ。好きな名前で呼んでやってください。名前なんかなくても構わないし」
「名前もなくていいとはどういう意味かな?」
「売られた女は長く生きていることはないので、名前すらつけないことがあると結婚斡旋所の男が言っていましたから」
それを聞いてコクオは深くうなづき、愉快な笑い声をあげた。
「なぜ、正当な跡継ぎを売るのですか? 貴方にそんな権利があるのですか?」
ベールをかけた侍女の言葉に、私は思いっきり強く舌打ちした。
「私の娘のエイヴリー(実際はヴァネッサ)が女伯爵になるのに邪魔だからですよ! いいですか? これは人間の名前を交換しただけだ。どちらも私の娘だから、女伯爵になれる! さて、そんな話はどうでもいいでしょう? 買うのですか? 買わないのですか?」
この一行は変わっている。女を買いに来るのにまさか身内の女性は連れてくるはずはないが・・・・・・侍女の服装をしたベールをかけた女性達の態度が侍女にしては尊大な気がした。
あぁ、きっとこの老人の愛人達だな。新しいオモチャの奴隷に嫉妬して見にきたのか。ここまで大金持ちだとなにがあっても不思議じゃない・・・・・・
「クククッ。一億バギーで買ってやろう。もっといろいろ楽しい話が聞きたい。儂は腹黒い男は大好きだ。」
上機嫌のコクオが、侍女達に高価な酒を次々と持って来させた。さらに私の前に一億バギーの大金が積み上げられていく。
「おぉーー素晴らしい! 話がわかる方ですねぇ。今日は酒盛りといきましょうか? 楽しい話ならたくさんしてあげましょう! 例えば毒の話とか? あっははは」
「是非とも聞きたいな。しかし、その前に儂がもらい受ける娘をこちらに渡してくだされ。おい、この娘を儂の屋敷にお連れしなさい」
コクオの言葉にどこかで見た覚えのある目の覚めるような美丈夫がさっと本物のエイヴリーを連れて行った。本物のエイヴリーは黙ってその若者の手を取り去っていった。
さよならだ。本物のエイヴリー。いつまで生かされるかは知らないがな。
☆彡★彡☆彡
料理が次々と運ばれて、それもこの老人が用意してきたものだと驚かされた。嘘のような気前の良さだ! くっそ! もっと金をふっかければ良かった。
大いに飲んで食べて、私の妻も偽物のエイヴリーも上機嫌だった。私はこの老人を喜ばせてもっと金を出させようと思った。なにがいいかな? 腹黒い男は大好き、と言うのなら私のあの犯罪の話はどうかな? きっと喜んでくれそうだ。
※1バギー=1円
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