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3 「お姉様、アール様とレントを交換して!」と言うセニア
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妹はそれからというもの、なにかにつけて私の部屋にやって来ます。今日も、ほら、私の貴重な読書の邪魔をしにやって来ました。
「ねぇ、お姉様、聞いてーー。アール様ったら、私以上に綺麗な女はこの世界にいないって言ってくれるのよ?でね、ほらぁーーこんなに大きなサファイアの指輪を贈ってくれたのぉ」
「もちろん、セニアは誰よりも綺麗よ。まぁ、ほんとに大きなサファイアねぇーー。とてもセニアに似合っているわ」
私のその言葉に、セニアはつまらなそうな表情をしています。マリッジブルーかもしれませんね。
そして私は読書に戻ります。今日は赤ちゃんのお世話の仕方の本を読んでいるのでした。こういう実生活に密接した知識って大事だと思います。
「またお姉様はそんなくだらない本を読んでいるのね? 貴族の令嬢にそんなこと必要? 乳母にでもなるつもりなの? 赤ちゃんの世話なんて侍女や乳母にやらせればいいだけでしょう?」
「あら、知識として持っておくことは、決して無駄にはなりませんよ? それに自分の子供は侍女にまかせっきりでなく、私自身も関わって育てたいわ」
私はセニアに、にこやかに微笑みます。この本はとても、勉強になりました。赤ちゃんのお世話の仕方だけでなく大変さも記されています……意味もなくぐずるし、ミルクの時間ごとに起きなくてはならないし、夜泣きはするし、成長する間には怪我や病気にもかかるし……この本の最後には赤ちゃんは安易に産まないこと、周囲のサポートと思いやりのある夫が不可欠、とも書いてありました。
「ばっかみたい! 安易に産むなって、子宝っていうんだから婚約してればいつ産んだっていいじゃない!」
そう言い放ったセニアは、その三ヶ月後には妊娠していたのです。
「セニア! 良かったわねぇ! おめでとう!」
言葉ではそう言ったものの、まだ学園に入って一年も経たずに妊娠するなんて……卒業するまでなぜ待てなかったのかしら……と私はセニアが不憫でした。3年間の学園生活は貴重なのに、それを満喫できないなんて可哀想です。
「お姉様! 私の勝ちよ! これで私は確実にシュトン侯爵夫人だわ! おーほほほ」
私はセニアと争っているつもりは全くないし、負けたつもりもありませんが……本人がこれほど喜んでいるのだからいいとしましょう。どうか、幸せになってほしいものです。
そんなわけで、セニアは学園を中退しお嫁に行きシュトン侯爵夫人になりました。
私に勝利宣言をして高笑いとともに、お嫁に行ったセニアですが……まさかそのわずか数日後に、こんな言葉を聞くなんて……
その言葉は「お姉様、アール様とレントを交換して?」なのでした。
☆彡★彡☆彡
セニアが嫁いですぐのことです。泣きわめきながら、私の部屋にやって来ました。
「お姉様! お願い! アール様とレントを交換して!」
いきなりやって来て抱きつくセニアに『妊娠初期の妊婦の健康』の本が足の甲に落ちます。
「いたぁーーーい!! こんなもの読んでいないで、元に戻してよ! もともとお姉様がアール様に見初められたのですから!」
「あら、これはセニアの良い相談相手になれればいいな、と思い読んでいるものですよ? それにアール様はセニアと勘違いして、私に告白したのでしょう?」
この妹はなにを言っているのでしょうか? 意味が不明ですわ。あぁ、身重の精神不安定というやつですわね?
「ねぇ、セニア? もう少しゆったりとした気持ちでいなければいけないわ。今、お白湯を持ってきてあげるわ。あぁ、ピアノでも弾いてあげましょうか? 優雅な素敵な曲を聴かせてあげるわ」
「違うってば! お姉様じゃないと務まらなかったのよ! だって、こんなつもりじゃなかったのだもの!」
意味が不明なセニアの話をよく聞けば……『あぁ、そういうことでしたか』と納得なのでした。
「仕方がないのではなくて? 貴女が私のふりをしたのでしょう? そのままするしかないわよ? 子供もお腹にいるのですし……代われるわけがありませんわ」
さすがの両親もセニアが『アール様とレントを交換して』と言うのには呆れました。
「お腹の子はアール様の子だろう? それを離婚してまたレント様と婚約したい? セニアよ、そんなことができると思うか? バカを言うのも大概にしなさい!」
いくらセニアに甘いお父様でも、セニアのお願いには無理があります。私に泣きつかれても、それは同じ事でした。
「セニア、貴女は貴重な体験ができると思えば良いわ。私だったらそう思うわ。頑張りなさい!」
「……そんなぁーー」
「ねぇ、お姉様、聞いてーー。アール様ったら、私以上に綺麗な女はこの世界にいないって言ってくれるのよ?でね、ほらぁーーこんなに大きなサファイアの指輪を贈ってくれたのぉ」
「もちろん、セニアは誰よりも綺麗よ。まぁ、ほんとに大きなサファイアねぇーー。とてもセニアに似合っているわ」
私のその言葉に、セニアはつまらなそうな表情をしています。マリッジブルーかもしれませんね。
そして私は読書に戻ります。今日は赤ちゃんのお世話の仕方の本を読んでいるのでした。こういう実生活に密接した知識って大事だと思います。
「またお姉様はそんなくだらない本を読んでいるのね? 貴族の令嬢にそんなこと必要? 乳母にでもなるつもりなの? 赤ちゃんの世話なんて侍女や乳母にやらせればいいだけでしょう?」
「あら、知識として持っておくことは、決して無駄にはなりませんよ? それに自分の子供は侍女にまかせっきりでなく、私自身も関わって育てたいわ」
私はセニアに、にこやかに微笑みます。この本はとても、勉強になりました。赤ちゃんのお世話の仕方だけでなく大変さも記されています……意味もなくぐずるし、ミルクの時間ごとに起きなくてはならないし、夜泣きはするし、成長する間には怪我や病気にもかかるし……この本の最後には赤ちゃんは安易に産まないこと、周囲のサポートと思いやりのある夫が不可欠、とも書いてありました。
「ばっかみたい! 安易に産むなって、子宝っていうんだから婚約してればいつ産んだっていいじゃない!」
そう言い放ったセニアは、その三ヶ月後には妊娠していたのです。
「セニア! 良かったわねぇ! おめでとう!」
言葉ではそう言ったものの、まだ学園に入って一年も経たずに妊娠するなんて……卒業するまでなぜ待てなかったのかしら……と私はセニアが不憫でした。3年間の学園生活は貴重なのに、それを満喫できないなんて可哀想です。
「お姉様! 私の勝ちよ! これで私は確実にシュトン侯爵夫人だわ! おーほほほ」
私はセニアと争っているつもりは全くないし、負けたつもりもありませんが……本人がこれほど喜んでいるのだからいいとしましょう。どうか、幸せになってほしいものです。
そんなわけで、セニアは学園を中退しお嫁に行きシュトン侯爵夫人になりました。
私に勝利宣言をして高笑いとともに、お嫁に行ったセニアですが……まさかそのわずか数日後に、こんな言葉を聞くなんて……
その言葉は「お姉様、アール様とレントを交換して?」なのでした。
☆彡★彡☆彡
セニアが嫁いですぐのことです。泣きわめきながら、私の部屋にやって来ました。
「お姉様! お願い! アール様とレントを交換して!」
いきなりやって来て抱きつくセニアに『妊娠初期の妊婦の健康』の本が足の甲に落ちます。
「いたぁーーーい!! こんなもの読んでいないで、元に戻してよ! もともとお姉様がアール様に見初められたのですから!」
「あら、これはセニアの良い相談相手になれればいいな、と思い読んでいるものですよ? それにアール様はセニアと勘違いして、私に告白したのでしょう?」
この妹はなにを言っているのでしょうか? 意味が不明ですわ。あぁ、身重の精神不安定というやつですわね?
「ねぇ、セニア? もう少しゆったりとした気持ちでいなければいけないわ。今、お白湯を持ってきてあげるわ。あぁ、ピアノでも弾いてあげましょうか? 優雅な素敵な曲を聴かせてあげるわ」
「違うってば! お姉様じゃないと務まらなかったのよ! だって、こんなつもりじゃなかったのだもの!」
意味が不明なセニアの話をよく聞けば……『あぁ、そういうことでしたか』と納得なのでした。
「仕方がないのではなくて? 貴女が私のふりをしたのでしょう? そのままするしかないわよ? 子供もお腹にいるのですし……代われるわけがありませんわ」
さすがの両親もセニアが『アール様とレントを交換して』と言うのには呆れました。
「お腹の子はアール様の子だろう? それを離婚してまたレント様と婚約したい? セニアよ、そんなことができると思うか? バカを言うのも大概にしなさい!」
いくらセニアに甘いお父様でも、セニアのお願いには無理があります。私に泣きつかれても、それは同じ事でした。
「セニア、貴女は貴重な体験ができると思えば良いわ。私だったらそう思うわ。頑張りなさい!」
「……そんなぁーー」
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