(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!

青空一夏

文字の大きさ
3 / 6

3 「お姉様、アール様とレントを交換して!」と言うセニア

しおりを挟む
 妹はそれからというもの、なにかにつけて私の部屋にやって来ます。今日も、ほら、私の貴重な読書の邪魔をしにやって来ました。

「ねぇ、お姉様、聞いてーー。アール様ったら、私以上に綺麗な女はこの世界にいないって言ってくれるのよ?でね、ほらぁーーこんなに大きなサファイアの指輪を贈ってくれたのぉ」


「もちろん、セニアは誰よりも綺麗よ。まぁ、ほんとに大きなサファイアねぇーー。とてもセニアに似合っているわ」

 私のその言葉に、セニアはつまらなそうな表情をしています。マリッジブルーかもしれませんね。

 そして私は読書に戻ります。今日は赤ちゃんのお世話の仕方の本を読んでいるのでした。こういう実生活に密接した知識って大事だと思います。 

「またお姉様はそんなくだらない本を読んでいるのね? 貴族の令嬢にそんなこと必要? 乳母にでもなるつもりなの? 赤ちゃんの世話なんて侍女や乳母にやらせればいいだけでしょう?」

「あら、知識として持っておくことは、決して無駄にはなりませんよ? それに自分の子供は侍女にまかせっきりでなく、私自身も関わって育てたいわ」

 私はセニアに、にこやかに微笑みます。この本はとても、勉強になりました。赤ちゃんのお世話の仕方だけでなく大変さも記されています……意味もなくぐずるし、ミルクの時間ごとに起きなくてはならないし、夜泣きはするし、成長する間には怪我や病気にもかかるし……この本の最後には赤ちゃんは安易に産まないこと、周囲のサポートと思いやりのある夫が不可欠、とも書いてありました。

「ばっかみたい! 安易に産むなって、子宝っていうんだから婚約してればいつ産んだっていいじゃない!」

 そう言い放ったセニアは、その三ヶ月後には妊娠していたのです。

「セニア! 良かったわねぇ!  おめでとう!」

 言葉ではそう言ったものの、まだ学園に入って一年も経たずに妊娠するなんて……卒業するまでなぜ待てなかったのかしら……と私はセニアが不憫でした。3年間の学園生活は貴重なのに、それを満喫できないなんて可哀想です。

「お姉様! 私の勝ちよ! これで私は確実にシュトン侯爵夫人だわ! おーほほほ」

 私はセニアと争っているつもりは全くないし、負けたつもりもありませんが……本人がこれほど喜んでいるのだからいいとしましょう。どうか、幸せになってほしいものです。

 そんなわけで、セニアは学園を中退しお嫁に行きシュトン侯爵夫人になりました。

 私に勝利宣言をして高笑いとともに、お嫁に行ったセニアですが……まさかそのわずか数日後に、こんな言葉を聞くなんて……

 その言葉は「お姉様、アール様とレントを交換して?」なのでした。





☆彡★彡☆彡





 セニアが嫁いですぐのことです。泣きわめきながら、私の部屋にやって来ました。

「お姉様! お願い! アール様とレントを交換して!」

 いきなりやって来て抱きつくセニアに『妊娠初期の妊婦の健康』の本が足の甲に落ちます。

「いたぁーーーい!! こんなもの読んでいないで、元に戻してよ! もともとお姉様がアール様に見初められたのですから!」

「あら、これはセニアの良い相談相手になれればいいな、と思い読んでいるものですよ? それにアール様はセニアと勘違いして、私に告白したのでしょう?」

 この妹はなにを言っているのでしょうか? 意味が不明ですわ。あぁ、身重の精神不安定というやつですわね?

「ねぇ、セニア? もう少しゆったりとした気持ちでいなければいけないわ。今、お白湯を持ってきてあげるわ。あぁ、ピアノでも弾いてあげましょうか? 優雅な素敵な曲を聴かせてあげるわ」

「違うってば! お姉様じゃないと務まらなかったのよ! だって、こんなつもりじゃなかったのだもの!」

 意味が不明なセニアの話をよく聞けば……『あぁ、そういうことでしたか』と納得なのでした。

「仕方がないのではなくて? 貴女が私のふりをしたのでしょう? そのままするしかないわよ? 子供もお腹にいるのですし……代われるわけがありませんわ」

 さすがの両親もセニアが『アール様とレントを交換して』と言うのには呆れました。

「お腹の子はアール様の子だろう? それを離婚してまたレント様と婚約したい? セニアよ、そんなことができると思うか? バカを言うのも大概にしなさい!」

 いくらセニアに甘いお父様でも、セニアのお願いには無理があります。私に泣きつかれても、それは同じ事でした。

「セニア、貴女は貴重な体験ができると思えば良いわ。私だったらそう思うわ。頑張りなさい!」

「……そんなぁーー」
しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

騎士の元に届いた最愛の貴族令嬢からの最後の手紙

刻芦葉
恋愛
ミュルンハルト王国騎士団長であるアルヴィスには忘れられない女性がいる。 それはまだ若い頃に付き合っていた貴族令嬢のことだ。 政略結婚で隣国へと嫁いでしまった彼女のことを忘れられなくて今も独り身でいる。 そんな中で彼女から最後に送られた手紙を読み返した。 その手紙の意味をアルヴィスは今も知らない。

(完)お姉様、婚約者を取り替えて?ーあんなガリガリの幽霊みたいな男は嫌です(全10話)

青空一夏
恋愛
妹は人のものが常に羨ましく盗りたいタイプ。今回は婚約者で理由は、 「私の婚約者は幽霊みたいに青ざめた顔のガリガリのゾンビみたい! あんな人は嫌よ! いくら領地経営の手腕があって大金持ちでも絶対にいや!」 だそうだ。 一方、私の婚約者は大金持ちではないが、なかなかの美男子だった。 「あのガリガリゾンビよりお姉様の婚約者のほうが私にぴったりよ! 美男美女は大昔から皆に祝福されるのよ?」と言う妹。 両親は妹に甘く私に、 「お姉ちゃんなのだから、交換してあげなさい」と言った。 私の婚約者は「可愛い妹のほうが嬉しい」と言った。妹は私より綺麗で可愛い。 私は言われるまま妹の婚約者に嫁いだ。彼には秘密があって…… 魔法ありの世界で魔女様が最初だけ出演します。 ⸜🌻⸝‍姉の夫を羨ましがり、悪巧みをしかけようとする妹の自業自得を描いた物語。とことん、性格の悪い妹に胸くそ注意です。ざまぁ要素ありですが、残酷ではありません。 タグはあとから追加するかもしれません。

婚約者が妹にフラついていたので相談してみた

crown
恋愛
本人に。

振られたあとに優しくされても困ります

菜花
恋愛
男爵令嬢ミリーは親の縁で公爵家のアルフォンスと婚約を結ぶ。一目惚れしたミリーは好かれようと猛アタックしたものの、彼の氷のような心は解けず半年で婚約解消となった。それから半年後、貴族の通う学園に入学したミリーを待っていたのはアルフォンスからの溺愛だった。ええとごめんなさい。普通に迷惑なんですけど……。カクヨムにも投稿しています。

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

(完結)妹の身代わりの私

青空一夏
恋愛
妹の身代わりで嫁いだ私の物語。 ゆるふわ設定のご都合主義。

婚約者の初恋を応援するために婚約解消を受け入れました

よーこ
恋愛
侯爵令嬢のアレクシアは婚約者の王太子から婚約の解消を頼まれてしまう。 理由は初恋の相手である男爵令嬢と添い遂げたいから。 それを聞いたアレクシアは、王太子の恋を応援することに。 さて、王太子の初恋は実るのかどうなのか。

処理中です...